『after:取材』③
だいぶ面白い話を聞くことが出来た。
これだけで十分な記事にはなる。が、私は欲深い記者。
連載可能なほどにトピックを収集しておきたくなる性を、この立場に就いた時から持っている。
「……あの戦いの全貌が、朧げに見えてきた気がします。しかし……一つだけ……いや、一人だけ、きっかけの見えない者がいます」
「? 誰ですか?」
「……〝顎鋏〟、サザン・ハーンズですよ」
彼女は私がその名を出すと、突然フッと吹き出した。
何故だろう。まさか、この男もこの呼び名が嫌いだったのか?
「……フフ。つい思い出しちゃいました。あの人たちの絡み」
「? どういうことです?」
「とにかく面白い人だったという話ですよ。少なくとも……私目線では」
「!? こ、これは驚きました……。まさかとは思いましたが……〝顎鋏〟ともお知り合いなんですか?」
「まあ……一応は」
本当に驚くべきことだ。
私は本来、『反戦軍』について聞きに来ただけのつもりだった。
彼女には悪いが、また少し……いや、だいぶ脱線させてもらおう。
「お聞きしてもよろしいですか? あの男のことも」
「え。あ……そう……ですね……」
彼女は少し口ごもり始めた。
てっきり楽しい思い出でもあるのかと思ったが、違うのだろうか。
「どうしました?」
「……私から見たら、面白い人でした。でも……それはきっと、あの人が本心をひた隠しにしていたから……。もちろん、あの人が戦っていた理由は知っています。でも……それを、私が話していいものか……」
「……お話して頂けませんか? アウラ・エイドレスと鉄・ソニックの話もしてくださったことですし」
「……それを言われちゃ、仕方ないですね……」
少し狡い言い方をしてしまった。何故かは分からないが、私はどうしても彼のことを知りたくなっているようだ。
いずれにしろ、彼女が罪悪感を持つ必要はない。
記事にするかどうかを決めるのは私で、彼女の名を出すつもりもなく、責任を背負うのは私だけだ。
存分に話して頂こう。彼についての話を──
「……キィー……」
「? どうしました?」
「いや……何となく」




