『after:取材』②
窓の外から、心地良い風が吹いている。
「……窓、閉めますか?」
「いえ。大丈夫です。しかしそうですか。……バッカス准将の最期に、『彼』が関わっていたとは……」
私は記者。『あの戦争』の話を聞くために、『彼女』から話を伺っている。
彼女はその赤褐色の髪を少し弄りながら、目を細めている。
「懐かしいです。何もかもが懐かしくて……。あの頃の私は……」
突然、彼女は涙ぐみ始めた。
「だ、大丈夫ですか? 少し休みましょうか?」
「……いえ。続けます。さて……次は何をお話ししましょうか……」
「そういえば、記録によると確か……バッカス准将を処理したのは、あの〝連合の疾風〟だったという話でしたが……」
「ああ……。フフ……」
「? どうしました?」
彼女は何故か笑みをこぼし始める。
情緒不安定というわけではないだろうが、むしろ安堵したのだろうか?
だとすれば『何に?』となるが。
「……彼、その呼び方嫌いなんですよ。知ってましたか?」
「え……? お、お知り合いなんですか!? あの〝連合の疾風〟と……」
「ですから」
「あ……」
そんな話は初めて聞いた。
それではまるで、直接会話をしたことがあるかのようだ。
いや、実際にそうだとしか考えられない。
私の困惑を他所に、彼女は穏やかに微笑む。その後ろの窓の外から吹いてくる風は、温かさを孕んでいた。
「そうですね……彼は、表に出るのが苦手なタイプでしたから。でもまあ、勝手に話しちゃってもいいですよね? 彼、優しいから許してくれると思います」
「そ、そう……ですかね……?」
とは言いつつも、私も早く彼女から話を聞きたいと思っている。
そして──彼女は語り始める。
「……彼は……いえ、『彼ら』は……風。世界を戦がす、ただ一陣の風」
「……?」
「……なんてね」




