表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

ぐるぐると、ぐるぐる動く、観覧車

『第6回「下野紘・巽悠衣子の小説家になろうラジオ」大賞』投稿作品です。


指定キーワードは『観覧車』

 ふと思い立って地元の公園へと遊びに行ってみた。

 駐車場に入るとお盆の連休中にも関わらず、直前まで雨が降っていたせいもあってかまるで人がおらず、どこか廃墟のような雰囲気を感じてしまい、経営状況は大丈夫なのだろうかと心配になってしまう。

 雨上がりの湿った空気の中、ほんのりと差し始めた陽光を感じながらのんびりと園内を歩いていれば、とこどどころに彫刻が置いてあり、これは一体なんだろうか、と思うようなものがたくさんあった。


「そう言えば長く続いてる屋外彫刻展でギネス認定されたって言ってたっけ」


 それを知った時は子供の頃から自然と公園にも町中にも彫刻が置いてあるせいか、ギネス認定されるほどのことだったということにびっくりだった。

 彫刻を眺めながら歩いていると、公園の中の遊園地コーナーに辿り着いたがやはり人がいない。


「誰もいない、か。まぁ、さっきまで雨が降ってたから仕方ないか。とはいえ、スタッフすらいないってどうなんだ?」


 来園者が誰もいないからスタッフも待機しないで何処かで雨宿りしていて、そのまま休憩でもしているのだろうか。

 そう思いながらゆっくりと懐かしさと寂しさを感じさせる園内を歩いていると、観覧車の前を通りかかった。

 色々な遊具が入れ替わっていたが、この観覧車だけは色を塗り替えられたりゴンドラのデザインが変わっていたりするが、ずっとここにあってこの遊園地の代表的な遊具になっている。

 ただ、今は客がいないせいか動いていないので、遊園地のもの寂しさを増してしまっているのだが。


「某声優とか、この町出身のお笑い芸人が故郷に錦を飾りに戻って来てた時に、これに乗ってたなぁ」


 自分もまだ子供の頃には何度か乗ったことがあるものの、もう何十年も乗っていない。

 久しぶりに乗ってみようかという誘惑に駆られるが、動いていないものをわざわざ自分の為だけに動かさせるのは申し訳ない気がする。

 それにいい歳をした男が一人で乗るというのも恥ずかしい。

 やはり観覧車に乗るのは辞めて、そろそろ帰ろうと駐車場に向かい歩いていけば何組かの子供連れの家族とすれ違う。

 そして駐車場に到着し、ふと振り返るとあの観覧車が動き始めていた。

 錆ついてしまい、動かないのではないかと心配していたがちゃんと動いていることに安心する。


 時間が止まってしまっているかのような公園の中で、観覧車は回り続けている。

 ぐるぐると、同じところを、ぐるぐると。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
色んな感情が混じる読後感が残る作品 ちょっとしたもの悲しさと、懐かしさと、ほっとした感情と… 家族連れの子供が大きくなった時も観覧車がありますように
じんわり心に沁みます〜(*´艸`*)素敵です。
純文学のような素敵な語り。 どこかもの悲しさを感じながらも心が温まる。 郷愁って感じが好きです♪
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ