光る空から…
ロゼールの側を離れた後、ノエルはレオナルドの元を訪れていた。
「ったくお前らは…揃いも揃って世話のかかる奴らだぜ。…んで?ノエルは一体何の用なんだ?」
「忙しくしていたのならすまない。
……一つだけ聞かせてくれ。今度の収穫祭のパートナーはもう決まったのか?」
「いや?まだ返事待ちをしているところだ。だが、俺様の想いはちゃんと伝えてあるからな…どういう答えが返ってきても後悔はない。そういうお前はもうロゼールを誘ったのか?」
「ああ、たった今話をしてきたところだ。
……僕も返事はしばらく待ってほしいと言われたがな」
「ふーん、返事待ち…ねぇ。それで不安になって俺様のところに確認に来たってわけか。
俺様からも一つ聞くが…お前はロゼールのことが本気で好きなのか?」
レオナルドの問いかけに、ノエルは即答した。
「好きだ。だが、僕のこの気持ちはロゼールにとって迷惑なものとなるかもしれないと思うと…僕一人の判断で伝えるわけにもいかないんだ」
それを聞いたレオナルドは、呆れた顔で話を続けた。
「はぁ〜…いいか?お前や俺様は背負っている立場が違うんだ。何の確証も無しにダンスのパートナーを申し込まれる方が、勝手な噂や妬みの標的になってよっぽど迷惑だろうが」
「お前にそれを言われるとは以外だったな…だが、レオナルドの言う通りだ。どちらにせよ、僕達がロゼールの側に居たいと思うことで、迷惑がかかることは間違いない」
「ああん?俺様は無責任に側に居ろとは言わねぇ。
"好きだ。俺様の婚約者として、堂々と隣に立て!"と伝えてある」
「っ…!?諦めたわけじゃなかったのか…」
「俺様は自分に嘘はつかねぇって決めてんだ。一番大事なのは、自分の気持ちに正直になって、それを相手にもしっかり伝えることだろ?いつまでもノロノロしてると、横から掻っ攫われるぞ」
「お前の単純さが羨ましいな…だが、自分の気持ちに正直に…か……ありがとう、レオナルド」
ノエルはスッキリした顔でそう言うと、レオナルドの部屋を去っていった。
◇◇◇◇◇
次の日の朝、ロゼールが毎日の日課である女神の泉の手入れをしていると、カリーヌがやってきて言った。
「ロゼちゃんっ…おはよう」
「おはよう、カリーヌ。ねぇ見て!もうそろそろサツマイモの収穫が出来そうよ」
「本当だ…楽しみだね。…あの、ロゼちゃんっ…ちょっといいかな?」
「……?大丈夫だよ」
カリーヌは一呼吸おいてから、何かを決意したかのように顔を上げて言った。
「私ね…実はレオナルド様に、婚約者にならないかって言われたの。
それでね、私…レオナルド様と一緒に…バラデュール王国へ行こうと思うの…!
本当はすごく怖いけど…私…レオナルド様が側に居てくれると…いつも安心できるから。
これって…私も好きって言っても…いいのかな?」
「カリーヌ…一人で悩んで決めたのね。すごいわ!
好きという気持ちが何なのか、正直私も分からないけれど…カリーヌのレオナルド様と一緒にいたいって気持ちを素直に伝えたらいいんじゃないかしら?
きっとすごく喜ぶと思うわ!」
「…うん、ロゼちゃんありがとう。
私…レオナルド様にちゃんと話してみる…!」
「うん!頑張っていってらっしゃい!
カリーヌの想いはちゃんと届くはずよ」
私は勇気を振り絞ってレオナルドの元へと向かうカリーヌを見送ると、ベンチに腰をかけて空を見上げた。
(カリーヌはすごいな。ちゃんと自分の気持ちに向き合って、一人で答えを出したんだ…私は一体、どうしたらいいんだろう。
正直、私はノエルのことが好きなんだと思う。
ノエルがパートナーに誘ってくれた時も、本当はすごく嬉しかった。
でも、その気持ちだけで簡単に想いを伝えられる相手ではないことも分かってる…何より私の存在がいつか消える時が来るかもしれないことが…怖い。
カリーヌは今頃、レオナルド様に想いを伝えられたのかな…)
ロゼールが一人で気持ちを整理していると、女神の像が持つ水晶玉がピカっと光ったと同時に、慌てたように現れたフェリオが空を指差しながら言った。
「おいっ、ロゼール!女神が…!」
「えっ…」
フェリオの指差す方向を見上げると、神々しい光に包まれた二つの人影が、こちらに向かって降りてくるのが見えた。
「あれが…女神様?
そしてもう一人は……"わたし"!?」
女神様らしき人物の隣にいたのが、生前の自分"ひかり"の姿だったことに動揺していると、フェリオが意地の悪い顔をしながら言った。
「お前の本来の姿…なんだかパッとしねぇな。それよりも、水晶玉が光っていることと女神が姿を現したこと…何か関係がありそうだな」
「っ失礼ね…!でも、おかけで戸惑っていた気持ちがどこかへ吹っ飛んだわ。女神様はどうして突然…」
現れた人影はロゼールの目の前まで降りてくると、温かく包み込むような笑みを浮かべながらゆっくりと話し始めた。
「ひかり様…こうしてお会いするのは初めてですね。
わたくしは、この世界で女神という存在として崇められてきました。
ですが、わたくしには人の行いや気持ちを動かす力などありません。終わりへと進みゆくこの世界を、わたくし一人の力でどうにかすることは出来ませんでした。
勝手ながら、残された可能性…この世界の外からやってくる人物なら未来を変える力があるのだと信じ、全てを託すことにしたのです。
突然の出来事に戸惑われたと思います。
ですが、この世界を救おうと必死に動いてくださったこと…ひかり様には感謝してもしきれないくらいです。
本当にありがとうございました」
状況が飲み込めないまま女神様の話を聞いていたひかりは、一番気になっていた率直な気持ちを投げかけた。
「それは…私の役目が終わったということでしょうか?この世界の人々の平穏な暮らしは、これから先もずっと続いていきますか?
元の身体に戻った私は……消えてなくなるのですか?」
「この先ずっと平穏が続くかどうかは、人々に委ねられています。ですが、レオナルド・バラデュールを発端としたこの世界が戦禍に巻き込まれる結末の世界線は、先程完全に消え去りました。
ひかり様には申し訳ないのですが…力を殆ど使い切ってしまった今のわたくしでは、元のお身体に戻すことは出来ません」
レオナルド自身の心情も置かれている状況も、既に小説の中とは全く別の展開になってはいたが、カリーヌと結ばれたことでシャルロットとの関わりが断たれたことが、世界線が完全に変わったタイミングだったのかもしれない。
元の身体には戻れないと言われ、ひかりは思わずホッとしてしまったことに罪悪感を覚えていた。
「じゃあ、私はこれから……」
「あの…女神様、私もひかり様とお話ししてもよろしいでしょうか…?」
「えっ…!?わ、私が喋った!?」
ひかりは女神の隣に立つ生前の自分の姿が話し始めたことに、思わず突っ込まずにはいられなかった。
「ふふっ…互いの姿が入れ替わりながらお話をするだなんて、何だかおかしな気分ですね。
ひかり様、お兄様達を救ってくださりありがとうございます」
「もしかして…ロゼール!?」
ひかりの問いかけにロゼールはニコリと微笑んで嬉しそうに言った。
「はい。本来ならば既に私はこの世から旅立っているはずでしたが、ひかり様の身体をお借りできたことで、女神様と共に皆様の様子を見守ることが叶ったのです。
ひかり様、お兄様達を救ってくださり本当にありがとうございます」
「そうだったんだ…それじゃあ、見えなくてもずっと側に居てくれたのね」
「ひかり様、ロゼール様…積もる話もおありでしょうが、残された時間はあと僅かとなってしまいました。
わたくしはフェリオと話をしてきますので、どうか悔いのない最後の時間をお過ごしください」
女神はそう言うと、その場を離れていった。
読んでくださりありがとうございます。
続きが気になる、面白そうだと思っていただけたら
ブックマーク、いいねをよろしくお願いします(^^)
評価、感想もいただけると嬉しいです…!




