カップリング
机にノートを開いて準備をしていると、レオナルドが覗き込んできて言った。
「もう勉強すんのか?」
「はい。毎朝、ランベール様に勉強を教えてもらっているんです。
ランベール様はとても成績優秀で、教え方もとっても上手なんですよ…!」
「そう?それなら良かったよ」
ランベールが横に来て、ニコリと微笑みながら言った。
レオナルドが私のノートを見て驚く。
「どれどれ………お前、今これを学んでるのか?
初等部のヤツらでも分かる問題だぞ…?」
「基礎からやり直してるんですっ!
さあランベール先生、よろしくお願いします」
「本気か…?お前、バカにも程があるぞ」
ランベールがフォローに入ってくれた。
「ロゼールは最近の事故で記憶喪失になってしまって、全て忘れてしまったんです。
それまでは、学年でも常にトップクラスの成績だったんですよ」
「ふーん…よく分からんが、そりゃ大変そうだな。
俺様にも、何でも聞いてもいいぞ!
常に隣にいることになるんだからな…!」
「あ、ありがとう…ございます……」
レオナルドはハハハと笑いながら言ったが、私はちっとも笑えなかった。
いつも登校してくる生徒が増えてきたら、私達は勉強会を終わらせ、各自の席に着く。
今日も、先程から教室へと入ってくる生徒が増えてきたので、勉強会はすでに終了したのだが…
入ってくる生徒が皆、一瞬ギョッとしたような顔になった後、かしこまりながら挨拶をする…を繰り返している。
原因はもちろん、隣にいるレオナルドのせいだ。
(1-Aクラスのみなさん…ゴメンなさいっ!!
でも、元はといえばシャルロット様を……シャルロット!!)
シナリオ解除出来たとはいえ、あんなに怯えた様子だったシャルロットに、どう影響が出ているのかは分からない。
(いきなり元凶がクラスにいたらビックリしちゃうよなぁ〜…)
あれこれと考えているうちに、シャルロットと取り巻き令嬢ABCが一緒に歩いてきてしまった。
驚きで一瞬固まるシャルロット御一行。
その後、全員で優雅に挨拶をして各自の席に着いた。
シャルロットも穏やかに微笑んでおり、怖がっている様子は見られなかった。
(やっぱり、出会う前のシナリオ解除は効果的…!?)
「おい、ロゼール。
あのピンクの髪をした女の名前は何だ?」
(効果的……だよね?)
私はドキドキしながら答えた。
「………彼女が、シャルロット・ダランベールです」
「やはりな…そこら辺の女とは何かが違う気がしたんだ。
あれが本物のシャルロットか。
聞いていた通り、いい女じゃねぇの…!」
レオナルドはそう言っただけで、同じクラスで一日を過ごしても、特に手を出しに行くことは無かった。
一応シャルロットにも聞いてみたが、
「何だったんだろうね〜?今はもう別に怖くないよー」と、あっさりした答えが返ってきただけだった。
放課後になり、エクトルは騎士団の訓練に向かったので、私は初めて学園内にある図書館へと行ってみることにした。
校舎とは別に存在するその巨大な建物には、国内で販売されている本は全て貯蔵されているとの噂だ。
どんな本があるのかワクワクした気持ちで本棚の間を歩いていると、見覚えのある人物を見つけた。
あれは…リディアーヌ様!!
「お久しぶ……」
意気揚々と話しかけようと近づくと、リディアーヌはすごく楽しそうな様子で、誰かと話しているようだった。
その話し相手は、先日出会ったばかりのアリスティド殿下だった。
(うわぁ〜…私の個人的な趣味としては、すごく好みのカップリング!なんてお似合いな二人…!!
何だかいい雰囲気じゃないの〜?
このままくっついちゃえばいいのにっ!
あ…リディアーヌ様には婚約者のフランソワ様がいるんだっけ。
アリスティド殿下にも既に婚約者がいるのかな?)
二人の様子を見ながら、ニヤニヤと勝手な妄想を楽しんでいると、背後から急に声がした。
「覗き見とは、随分趣味が悪いな」
ビックリして振り返ると、声の主は眉間にシワを寄せながら立っていた。
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