勢揃い
生徒会が主体で進める生徒総会とは違い、学園側が取り仕切って行う全校集会が、急遽開かれることになった。
基本的には、何か大きな行事や出来事がある時にしか開かれることはないらしい。
私達一般生徒は何も知らされることのないまま集められ、クラスごとに整列して待っていた。
学園長らしき年配の男性が登壇して開会の挨拶を終えると同時に、舞台袖からオレンジ色の短髪をした男子生徒がズカズカと歩いてきてマイクを奪い取り、大声で自己紹介を始めた。
「俺様はレオナルド・バラデュール。
友好とやらの為にはるばるバラデュール王国から、留学してきてやったんだ。
せいぜい1年間楽しんでやるよ。
お前ら……よろしくな?」
レオナルドは不敵な笑みを浮かべてマイクを置き、壇上に用意されていた椅子へと座った。
レオナルドの挨拶という名の宣戦布告が終わった後、見慣れた姿のレアンドルの他に男子生徒二人が登壇し、同じく壇上の椅子へと着席した。
一人目は、レアンドルよりも背が低く同じ色の金髪をした男子生徒で、いつも笑顔を振りまくレアンドルとは対照的に、その綺麗な顔は冷たい表情を保っていた。
(……あの時の美少年だ)
初めて校舎を見上げた時にふと目が合った、とても印象的な金髪の美少年は彼だったのだと分かった。
あの場にいるということは、一般生徒とは少し違うのだろう。
二人目は、ダークブラウンの髪に金色の眼をした高身長の男子生徒で、気品溢れる立ち振る舞いとその容姿には思わず見惚れてしまいそうになった。
(いや〜かっこいいなぁ…乙女ゲームのキャラみたい)
令嬢達が小さな声でザワザワとし始める。
『キャー、王子が勢揃いですわ!』
『なんという目の保養…!幸せだわっ!』
『退屈な話かと思っていたら、こんなご褒美が待っていただなんて…!』
(王子が勢揃い…?
じゃあ、今登壇している人達は全員どこかの国の王子ってこと?)
小説内の知識では、このリヴィエ王国と隣国のバラデュール王国くらいしか国名は出てこなかった。
次第に、令嬢達の喜びの声は一段と広がっていった。
『ノエル殿下は今日も氷の王子ね!』
『あの冷たい表情で名前を呼ばれてみたいわ〜!』
『アリスティド殿下の凛々しいお姿を見れただけで、今日は一日中幸せですわ』
『キャー!レアンドル殿下が微笑んでいらっしゃるわ〜!』
レオナルドのお出迎えのために、各国の王子が集結させられたということだろうか…?
いや、でも全員この学園の制服を着ているということは…既に留学している王子達?
私は隣に並んでいるシャルロットに聞いてみようと思い、振り向きながら話しかけた。
「あの…シャルロット様、ちょっと聞いても……どうしたんですか!!?お腹でも痛いんですか!?」
「……い…や……嫌…っ…」
シャルロットはボソボソと呟きながら肩を抱き、何かに怯えているかのように真っ青な顔で震えていた。
私は落ち着かせるように一旦座らせ、背中をさすりながら話しかけた。
「大丈夫です……大丈夫ですよ。
私も側にいますから。何かあったんですか…?」
「…よく…分からない、けど…あの人が……すごく怖いのっ…!」
「あの人って…レオナルド殿下のこと?」
シャルロットはコクコクと強く頷いた。
おそらくレオナルドのストーリーの影響かもしれない。
シャルロットは溺愛されていたというよりは、むしろお気に入りのおもちゃかのように、いつも振り回されていた。
ただ、小説の本編でのレオナルドは、シャルロットを留学中に振り回して楽しんだ後、祖国へと帰っていくだけのキャラクターだった。
ストーリー自体も、王子という身分を利用してシャルロットを強引に連れ去り、デートのように食事や買い物に付き合わせたり…と、強引な俺様キャラとしての範疇で収まる程度で、シャルロットも怯えてなどいなかった。
できる限り、ストーリー展開を起こさずに問題は解決しておきたい。
始まってしまったストーリーを終わらせる大変さは、レアンドルの件でもう懲り懲りだった。
同じく主要人物であるジェラールの時は、偶然にもシャルロットに会う前に私に触れていたことでシナリオ解除された状態となり、ストーリー展開が起きなかったのかもしれない…という仮説がある。
主要人物とシャルロットを迂闊に出会わせてはいけないと思っていても、どの人物がどのキャラクターなのかは名前を知るまで分からず難しかった。
だが、今は最悪の展開を迎える予定の主要人物レオナルドの姿が明確に分かっている。
(もしかしたら、二人が出会う前にレオナルドのシナリオ解除を終えていれば、ストーリー展開を阻止出来るかもしれない…!)
実際にやってみなければ分からないが、とにかくシャルロットと出会わせる前にシナリオ解除はしておくべきだろう。
レアンドルに頼んで引き合わせてもらおうか…などと考えていると、壇上に立つレオナルドが突然恐ろしいことを言った。
「この学園で一番いい女だと噂のシャルロットはどこにいる?」
その言葉を聞き、生徒たちが一斉に1-Aクラスの方を向き始めた。
(嘘でしょ!?ヤ、ヤバい…っ!!)
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