カリーヌ・コベール
初めての投稿に、恐る恐るだったのですが…
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所々に設置されていた学園の案内図を頼りに進んでいくと、女神の泉は校舎から15分程歩いた人通りの少ない静かな場所にあった。
ロゼールが転落したであろう階段をゆっくりと数えながら降りてみると、一つずつの段差が低く造られたその階段はたったの5段しかなかった。
この程度の段差から落ちたくらいでは、3日間も意識を失う程の事態にはならないのが普通だろう。
階段を降りた先には芝生が一面に生い茂っており、女神の像が真ん中に立つ小さな泉の周りを、レンガが敷き詰められた遊歩道がぐるっと囲んでいた。
泉を取り囲む庭園には数々の植物が自生しており、ありのままの自然が広がっていると言えば聞こえはいいが、貴族の学園には似つかわしくないような手入れの行き届いていないその姿は、ここだけが別世界の空間であるかのように錯覚する程だった。
せっかくなので泉の周りをぐるっと歩いてみようと一歩を踏み出すと、今まで女神の像で隠れていて見えなかったのか、一人の女子生徒がしゃがみ込んでいるのに気が付いた。
(こんなに朝早い時間なのに…誰かいる!?)
この静かな空間に黙って二人きりでいるのも何だか気まずく感じたので、私はとりあえず声をかけてみることにした。
「あの…おはようございます。
ここへはよく来られるのですか?」
突然聞こえた声に驚いたのか、女子生徒はビクッ!っと身体を強張らせ、恐る恐る私の方を向いた。
ふわふわっとパーマがかった赤茶色の髪を左右で三つ編みにし、丸いメガネが優しい雰囲気によく似合っている内気そうな女の子だった。
「…………!!?!?」
女子生徒は私を見るなり目をまん丸くさせると、慌てふためいた様子で反応に困っていた。
(極度の人見知りなのかな?
それとも、ロゼールと何かあった…とか?)
「いきなり驚かせてしまってすみません。
もしかして、私のことをご存知ですか?」
コクコクコク…女子生徒は激しく頷く。
「そうだったのですね。
失礼だとは思うのですが、実は先日から記憶喪失になってしまいまして…
もしよろしければ、あなたのことを改めて教えていただけますでしょうか?」
女子生徒は少し悲しそうな目でこちらを見つめると、ボソボソと呟くようにして喋り始めた。
「ロゼールちゃんと…同じクラスの…カリーヌ・コベール…です」
「同じクラスの方だったのですね!?
それは失礼しました。まだクラスメイトの方々の大半を覚え直せていなくて…
カリーヌ様、改めましてこれからどうぞよろしくお願いします」
「よろ…しく…」
互いにどこか気まずそうに挨拶を交わした後、私は気になっていたことを聞いてみることにした。
「カリーヌ様はどうしてこんなに朝早くからこの場所にいらっしゃるのですか?」
「ここは…人が来なくて…落ち着くから。
それに…この子達が…元気を…くれるの。
早朝は…空気が澄んでいて…特にいっぱい…会えるから」
そう言いながらカリーヌは、まるで小さな花の上に何かが存在しているかのように、優しい手つきで空間を撫でた。
不思議そうに見つめていた私の視線に気づいたのか、カリーヌは慌てて手を引っ込めて言った。
「私に…あんまり…近づかない方が…いいよ」
「どうしてですか?」
「今みたいに…気味悪がられること…しちゃうから。
クラスでも…みんなから…変人だって…言われてるし」
「そんな…!気味悪がってなどいませんわ。
ただ、私には見えない"何か"がその花の上にあるのかと不思議に思いまして…」
「うん…いるよ」
「いる…とは?」
「精霊とか…妖精って呼ばれている…子たち。
よく…花の上に座っていたり…そこら中を…飛び回っていたり…するの。
この場所には…特にたくさん…住んでるよ」
カリーヌはそう説明すると、穏やかな顔で辺りを見回した。
「えっ!?
妖精が見えるだなんて……羨ましすぎる〜!
もしかして、妖精とお話も出来るの!?」
カリーヌには普通の人には見えない不思議な世界が見えているようで、それが私にはとても羨ましく、うっかり"ひかり"が出てきてしまっていた。
十分すぎるくらい不思議な世界に転生してしまったにも関わらず、昔からファンタジー系の漫画や小説が大好きだった私は、妖精や精霊を見たり話が出来ることへの憧れを強く持っていた。
「うん…たまにだけど…話が出来る子も…いるよ。
でも…ほとんどの子たちは…喋らない…の。
あっ…今ここに…座ったよ」
どうやら妖精が私とカリーヌの間に来て座っているらしい。
「………!!見えないけど、きっと可愛いっ!」
「ふふっ…この子…喜んでいる…みたい。
あなた…良い人…なんだね。
名前は…なんて…言うの?」
「………?ロゼール・ディディエ…って、ご存知だったのでは?」
言葉の意味が分からず戸惑いながら答えると、カリーヌはそうじゃないとでも言うかのように首を振って言った。
「私が…知りたいのは…"あなた"の…名前」
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