謎の声と光の先に
「…………!!!?」
初めは聞き間違いかと思っていたが、次第に女の子らしいか細い声がハッキリと聞こえてきた。
『み、て……つ…くえ…見て。机…を…見て』
(机を…見て?)
謎の声が言う通りに机の方へと目を向けると、引き出し部分が光っていた。
(………!?なんか光ってる!?
引き出しの中を見てって言いたいのかな…?)
目の前で起きている不思議な現象に驚きつつも、つくえの側に行って引き出しの中を見ると、そこには一冊の日記が置かれていた。
『よん…で……おね…がい』
私がその日記を手に取った瞬間、先程までの光は消え謎の声も聞こえなくなった。
少しだけ緊張しながら日記を開いてみると、その日記の一番後ろにロゼールから私へのメッセージが綴られていた。
『ひかり様へ
私はロゼール・ディディエと申します。
きっとこの日記が手に取られる頃には、私はもうこの世界には居ないのでしょう。
突然私の身代わりとなってしまったことに、さぞ驚かれたことだろうと思います。
この様な事態に勝手に巻き込んでしまい、申し訳ございません。
ですがどうか…お願いしたいことがあるのです。
お父様とお兄様とナディ達を…
この世界の人々を、お助けください。
皆の平穏な日々をお守りいただきたいのです。
この世界の外からやってくる、ひかり様ならそれが出来ると女神様はおっしゃっていました。
一ヶ月ほど前、謎の光に導かれた私は、学園内にある女神の泉で美しい女神様と出会い、泉の中に沈んでいた不思議な水晶玉を託されました。
その水晶玉に見せられたのは、この世界が小説の中の世界であるということ、そして小説が完結した後の世界に何が起こるのかという内容でした。
完結後の世界では、バラデュール王国の第二王子であるレオナルド・バラデュールが、自身の父である国王と兄の第一王子を殺害して王位に就きます。
国王になった彼は、友好の証としてセントブリューヌ学園に留学していた際に出会ったシャルロット様への想いが忘れられず、無理やりにでも王妃にしようと我が国に侵略を仕掛けてきます。
突然の大軍に攻め込まれたリヴィエ王国では、王族の方々を含めた多くの人々が戦いの犠牲となって命を落としてしまいます。
このお屋敷も戦禍に巻き込まれ、お父様も、ナディ達使用人の多くも命を落とし、戦場へと向かったお兄様も闘いに敗れて亡くなってしまいます。
連れ去ったシャルロット様を王妃とした後も、バラデュール王国は他国への侵略を繰り返し、この世界は戦場と化していきました。
そしてこの結末を変える唯一の方法は、シナリオに左右されずに動くことが出来る人物をこの世界へと迎え入れ、小説とは異なる新たな物語を作っていくこと…
その救世主となるひかり様を、この世界に迎え入れることが出来るチャンスは一度きりだと…女神様は言いました。
大好きな家族と、この国の方々を救うために私に出来ることは、この身をひかり様に託すことだけでした。
身勝手に役目を押し付けてしまい申し訳ありません。
ですが、ひかり様にしか出来ないことなのです。
どうか…どうか私の大切な人達の命を救ってください。
そして、この国の未来をお守りください。
ひかり様を信じています…この世界をよろしくお願い致します。
最後に、女神様に教えていただいたことをここに書き記しておきます。
きっとお役に立てる情報なのだろうと思います。
ロゼール・ディディエ』
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