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既視感の正体

私がリディアーヌから聞いた内容を話し終えると、まず最初に口を開いたのはシャルロットだった。



「ロゼールってば…リディアーヌ様には気をつけた方がいいよって言っておいたのに!

何かされたりしなかった!?」



「ええ、とても親切に道案内をしてくれましたわ」



「でも、リディアーヌ様はロゼールを突き落としたんだよ!?

それなのに自分じゃないと言っているだなんて…またいつものように嘘をついているのねっ!」



「私には、そんな感じには思えませんでしたが…」



私が率直に意見を述べると、シャルロットは涙を流しながら訴えかけてきた。



「ロゼールは、私よりもリディアーヌ様のことを信じるっていうの!?

ひどいっ…!こんなにロゼールのためを思って、言ってあげているのにぃ……グスッ」



(そんなこと言われても…

実際に話をしたリディアーヌは、嘘がつけそうもないくらい真っ直ぐな人って感じだったからなぁ)



私がどう返事をすべきか考えていると、シャルロットの涙を見かねたレアンドルが会話に入ってきて言った。



「泣かないで…シャルロット。

僕は君の話を信じるよ」



そう言ってレアンドルはシャルロットの隣に立つと、ハンカチを差し出しながら優しく肩を抱いた。



「うぅ…っ、グスッ、ありがとうございます。

レアンドルさまっ…」



シャルロットは差し出されたハンカチを受け取ると、そのままレアンドルの胸へと飛び込んだ。


すると同時に、先程まで無言で俯いていた女子生徒が、美しいホワイトブロンドの髪をなびかせながら生徒会室の外へと走り去っていった。



「……!!レティシア様っ…!

レアンドル様、先程から一体どういうおつもりなのですか!?

この件は、後でしっかり説明してもらいますからね!」



リシェはそう言うと、慌てて後を追いかけるように走っていった。



(あの女の子がレティシアだったのね。

婚約者の目の前でシャルロットへのこの態度…そりゃ怒るのも無理はない。

とにかく、あんなに綺麗な人が身を投げてしまう悲しい事態を起こさないように全力で阻止しないと!)



状況を見かねたジェラールが、レアンドルにつかみかかりながら言う。



「おい、レアンドル…お前っ!

追いかけなくていいのかよ」



しかし、レアンドルはジェラールの言葉を気にも留めていないような態度で言った。



「ん〜…だって、泣いているシャルロットを放っておく訳にはいかないでしょ?」



その言葉を聞いた途端、メガネの男子生徒も怒りを堪えるようにしてレアンドルを問い詰めた。



「レティシアも泣いていると思いますが?

直ぐにでも追いかけ、謝罪をするのが賢明な判断だとあなたも分かっているはずでしょう。

大体あなたは、先程からダランベール嬢に肩入れしすきです。

初めて会ったはずの彼女をなぜそこまで構う必要が?」



「う〜ん…僕もよく分からないんだけれど、何故だかシャルロットの側から離れられないんだ。

でも、レティシアも放っておくわけにはいかないし…そうだ、僕の代わりにレジスが様子を見てきてよ」



「……っ!あなたには失望しました。

この間の話は、少し考えさせてもらいます」



レジスと呼ばれたメガネの男子生徒は心底呆れた顔でそう言い放つと、生徒会室から出て行った。



(信頼を置く仲間達が本気で怒る程のレアンドルの変化は、やはりシナリオ通りに進めるための何かしらの力が働いているのだろうか…)



ピリピリとした嫌な空気感に包まれているにも関わらず、追い討ちをかけるかのようにシャルロットが喋り始めた。



「皆さん…なんだか怖いです〜。

レアンドル様は、ただ私に優しく接してくれただけじゃないですかぁ。

こんなことで怒るだなんて、やめてあげてください…!」



(……ん?

まるで怒っている側が悪いかのようなこの言い方……そうか!以前感じた既視感の正体はこれだったのか!

媚びたい時にだけ使う纏わりつくような喋り方、困った時の泣き落とし、最終的には責めた方が悪者扱いされる理不尽さ……ヤツだ!春野あかり!!)



前世の経験とよく似た不快感が頭をよぎった瞬間、私の中でシャルロットと春野あかりの姿が重なった。


私の経験上、先程のような発言を受けた者達はそれ以上怒りを露わにしづらくなり、彼女達の思惑通り牙を抜かれてしまう場合がほとんどだ。


しかし、エクトルはシャルロットに対して冷静に厳しく返答した。



「俺達にとっては、"こんなこと"で済ませられる程簡単なことじゃない。

レティシアのためにも、レアンドル自身のためにも、怒って当然のことだ」



(……!!さすがエクトル!

こんな人が前世にも居てくれていたらなぁ…)



ジェラールもエクトルに賛同するようにして言った。



「エクトルのいう通りだな。

信頼のおける仲間なら、尚更怒って当然だ。

とりあえず、今日はもうお開きにしようぜ。

レアンドルも、一人でちょっと頭を冷やしてから帰れよ」



シャルロットはレアンドルの側を離れたくなさそうにしていたが、エクトルとジェラールに促され私達はレアンドルを一人生徒会室に残したまま各自帰路に着いた。



読んでくださりありがとうございます。


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