レアンドルの様子
「…ということなんだが、転落した際に居合わせていたダランベール嬢から、新たな証言を聞いてな…
そのことについて詳しく話を聞かせてもらうため、この場にも同席してもらうことにした。
ダランベール嬢、先程の話の続きを聞かせてもらえるか?」
ひと通り話し終えたエクトルに話を振られたシャルロットは、待ってましたとでも言わんばかりの表情で意気揚々と話し始めた。
「分かりましたわ、エクトル様。
私はあの場にいる時…見たんです。
ロゼールの隣に立っていたリディアーヌ様が、階段の方へと突き落とすのを…!
そうでなければ、あんなに勢いよく落ちていくはずがないですもの。
きっとリディアーヌ様は私のことが嫌いだから、いつも側にいるロゼールにまで危害を加えようとしたに違いないわ!
私にだって、酷いことばかりしてくるのですもの…」
そう言いながら俯いたシャルロットに、レアンドルが心配そうに問いかけた。
「日頃から嫌がらせされているのかい?」
シャルロットは俯いていた顔をパッと上げると、レアンドルへと訴えかけた。
「はいっ…!
いつもキツイ口調で冷たくされたり、睨みつけられたりして…嫌味なことを言われたりもするんです。
それに今回のロゼールのこと以外にも、リディアーヌ様はよく他の生徒を泣かせたり、嫌がらせをしたりしているそうで…
そんなことをしておきながら、私が問い詰めるといつも自分はやっていないと嘘をつくんですよ?」
「それは随分と傲慢で暴力的な子なんだね。
この学園の生徒にあるまじき行為だ。
君達や他の生徒にまで危害が加わっているとなれば、放っておくわけにはいかないよね。
今度、生徒会長の僕から直々に注意をしておくよ」
そう言ったレアンドルに、シャルロットは嬉しそうに笑みを浮かべながら感謝の言葉を述べた。
「ありがとうございます…!
レアンドル殿下からお話ししてくだされば、リディアーヌ様も少しは心を改めてくれるかもしれませんね」
「そうだといいんだけれどね。
ところで…殿下って呼ばれるのはあまり好きでは無いんだ。
なんだか距離を感じるだろう?
シャルロットになら、レアンドルと呼ばれても構わないよ」
「そんなっ…!
嬉しいお言葉ですが、私が呼び捨てにするなど…ぜひ"レアンドル様"と呼ばせていただきますわ」
シャルロットに笑顔で名前を呼ばれ、レアンドルは満足そうな表情をして言った。
「うん、いいね。
シャルロットにそう呼ばれると、何だかとても心地よい気持ちになるよ」
(ちょっと…なんだか二人だけの甘い世界みたいになってない…!?
リディアーヌのことも、シャルロットの話だけを鵜呑みにするのはどうかと思うんだけれど…)
部屋の隅の方では、リシェが怒りで身を震わせながらレアンドルとシャルロットを睨みつけていた。
リシェの隣にいるもう一人の女子生徒は、先程からずっと俯いたまま無言で立っている。
何とも言えない気まずい空気が流れる中、それを断ち切るかのようにエクトルが話をし始めた。
「ちょっといいか。
先程のレアンドルの発言は訂正すべきだ。
一部の生徒の話だけを取り入れるのは、生徒会長の判断として間違っている。
当事者や他の生徒の意見を幅広く聞き入れ、活動していくのが生徒会としての役目だと認識しているのだが…違ったのか?
なんだか今日のお前は様子がおかしいぞ、レアンドル」
「エクトルに同意だ」
黙って話を聞いていたジェラールも、初めて口を開いた。
「ですね、エクトルが正しいです。
先程からのあなたはどうかしていますよ、レアンドル」
そう話したのは、パーマがかった黒髪にメガネをかけ、いかにも知的そうな雰囲気の男子生徒だった。
(こっちの人の方が、いかにも生徒会長…!って感じだなぁ)
「う〜ん、そう言われてもねぇ。
所々、僕自身も良く分からないんだけどなぁ」
レアンドルが不思議そうに呟くと、みんながピリッとしたのが分かり、再び不穏な空気が流れ始めた。
私はリディアーヌから聞いた話もみんなに聞いておいてもらわねばと思い、場の空気を入れ替えるようにして話を始めた。
「あ、あの!私からも少しお話してもよろしいでしょうか?
実は先程、教室に戻る道が分からず迷っているところをリディアーヌ様に助けていただきました。
教室まで案内していただく最中に、私が転落した際に何が起こったのかを教えていただくことが出来ましたので、そちらも聞いていただけますでしょうか?」
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