シャルロット・ダランベール
「え、えっと…あの…」
いきなり女の子に抱きつかれ、フワッと香るお花のような良い匂いと柔らかな感触に包まれた私は、その心地良さに思わず言葉が出てこなかった。
「あっ!エクトル様、ジェラール様、おはようございます。
もしかして、朝から私に会いにきてくださったのですか!?」
「おはよう、ダランベール嬢。
いや、ロゼを送りに来ただけだ」
エクトルのダランベール嬢という言葉を聞き、私は抱きついてきた女の子がシャルロットであることを確信した。
(飛びつかれた時から薄々予想はしていたけど…
やっぱりこの子がヒロイン、シャルロット・ダランベールか!)
エクトルはシャルロットに挨拶を返すと、淡い期待を打ち砕くかの様に淡々と事実を述べた。
残念そうに呟いたシャルロットが、ジェラールの方を見て言った。
「そうだったのですね…ジェラール様はどうしてこちらへ?」
ジェラールはニコやかに挨拶をすると、いきなり手を合わせて全力で謝罪をし始めた。
「シャルロットちゃん、おはよう〜♪
いきなりでほんっっとに悪いんだけど、今日のデートはキャンセルさせて!
生徒会の集まりがあるの忘れててさ〜…ホントごめん!」
(シャルロットとの約束だったんかい!
それを言うためにここまでついてきていたのか…)
その言葉を聞いたシャルロットは私から離れると、不機嫌そうにジェラールの正面へと向かった。
抱きしめられていて見えなかったシャルロットの全容が見える。
桜のような薄ピンク色の髪で、綺麗に切り揃えた長めのボブヘアーには左右に一つずつリボンが付いている。
小顔でクリッとした大きい目に、細身だが大事なところには柔らかさがしっかりとある女の子らしいボディ。
これぞ可愛い女の子…!という理想を詰め込んだかのような見た目は、さすがヒロインの特権なのだろう。
(やっぱりヒロインは飛び抜けて可愛いんだなぁ〜。
でもなんだろう、この既視感…)
私がシャルロットの姿をまじまじと見ていると、シャルロットはジェラールの胸を叩きながら怒り始めた。
「どうしてですか!?ジェラール様っ!
たとえ他の方との先約があったとしても、いつも必ず私を一番に優先してくれたじゃないですかぁ…
その集まりは、私よりも大事なことなんですか?」
ジェラールは不思議そうな表情で何やらボソボソと呟いた後、シャルロットに全力で謝罪した。
「確かに…いつもはシャルロットちゃんとの予定だけは、死んでも断れないと思っていたんだけど…何故だ?
……シャルロットちゃん、ホントごめんっ!
また今度、必ず埋め合わせするから!」
(シャルロットとジェラールって、デートを約束するような間柄だったんだな〜…って、そうじゃん!
この小説、一応恋愛小説なんだった!)
惚れた男たちが次々とシャルロットを振り向かせようと奮闘していたのを思い出した。
当時の私は、そんな強引な逆ハーレム状態のヒロインの存在も、あくまでフィクションの世界だしな〜とあまり深く考えずに読んでいた。
(そういえば、各キャラごとのストーリーなんてものもあったなぁ。
一体、シャルロットは何股かけているんだろうか…)
そんなことを黙々と考えていると、エクトルが心配そうに覗き込んできた。
「大丈夫か?ロゼ。
ダランベール嬢に会ってから、ずっと固まっているようだが…」
「えっ!?あ…いえ、大丈夫です。
何か思い出せることはないかと考え込んでしまっていました」
(思い出したことは色々あるけど、とても言えない…)
「なぁに?私に会って思い出すって」
先程まで、可愛い仕草でジェラールにプンスカと怒っていたシャルロットが会話に入ってきた。
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