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ブラックリスト勇者を殺してくれ  作者: 七條こよみ
10章 スムース・クリミナル

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10-26話 約束は約束


 事件解決からしばらく経った後、プラティヌム商会に挑戦状を送ってきたテンザス、ナイブル、エイドンの三商会の連合チームによるサッカーの試合が行われようとしていた。


 雪も溶け、すっかり春の陽気な空になった運動日和。試合をするにはこの上ないグラウンドコンディションである。


「よお、会長さん方ァッ!」


「…………」


 シルバの元気な挨拶に対して、テンザスたちの顔色は悪く苦々しい表情をするのみで返事はない。


「あれぇ、どうしたんや? そっちがやろうって言い出した話やんなこれ。ウチの奴らはいっぱい練習してるから結構強い……いや、この街なら最強やと思うがそれに勝てる何か秘策があるんやろ!? いやあ、楽しみやなあ、面白い試合が見れたら良いなあ!?」


「あ、ああ……こちらも精鋭を集めたのでな。勝てる見込みはある。やってみないと分からないからな」


 やってみないと分からない。それは自分にそう言い聞かせてるようにも思える言い方だった。本当に勝てるとは思っていないだろう。


 現在試合前の練習を見ていても実力差があるのは明らかだからだ。


「まあ、試合が見れたら、の話だがな」


「「「ッ!?」」」


 アウルムの一言が彼らを凍りつかせる。その一言は試合が行われないことを暗示する言葉だった。


「……おい、俺らが留守中にくだらん小細工仕掛けて来たの知らんと思ってんのか? 舐めやがって。覚悟はいいな?」


「いかなる理由があろうと試合は行われる。選手の数さえ揃えられなければ不戦敗ということになる。それでも負けは負け。約束は果たしてもらう」


 明確な怒気。全てバレている。そして勝利を確信している。


 それを理解した時、三人の会長は青ざめる。


「テンザス、ナイブル、エイドン商会の会長ですな。私は兵士長のロベルト。あなた方を殺人、治安紊乱の容疑で逮捕します。商会に所属する者は全て聴取をこれより受けていただくので、ご同行をお願いします」


 その時、大量の兵士を引き連れたロベルト兵士長が運動場に現れた。


「な、なんだと!?」


「テンザス殿これはどういうことですか!?」


「我々を逮捕だと!? ただの兵士の分際でそんなことが許されると思っているのかッ!?」


「許されます。怪人シャイン・ドゥ騒ぎに便乗した殺人に関する証拠、実行犯は揃っておりますので。こちら、この街の代官であるアラスター・クローツ伯爵より、逮捕に関する許可証も発行されており、拒否権はありませぬ」


 ロベルト兵士長は声を荒げる彼らに臆することなく、むしろ慌てる様子が痛快であると言いたげな表情で懐から書状を見せる。


「ば、馬鹿な……何故代官様が出てくる……」


「何故? これは奇妙な質問ですな。心当たりがないとは言わせませんよ。街が大変な時に私欲で混乱を招いた罪、軽いはずがないでしょう」


「代官様に直接話をさせていただきたい! 私たちはこの街に少なくない額の金を収め、貢献しているッ! たかが娼婦が死んだくらいで逮捕はどう考えても不当だ!」


「そうだ! 話をする権利があるッ!」


「……ありません。むしろ代官様はこのことを相当重く受け止めておりますので。あなた方は良くて一生ダンジョンで魔石採掘、悪くて処刑。店舗は良くて営業停止、悪くて解体でしょうからね。動かぬ証拠、証言、既に全て揃っているのですよ。抵抗すればこの場で処刑しても良いと仰っているお方が話など聞くはずがありせまん。むしろ、貴重な時間を割いてしまえば我々が処刑されてしまいますな」


 終わりである。この目の前にいる兵士に何を言おうが意味がないと知る。買収を持ちかけたところで聞かないだろう。


 自分たちの目論見は全て暴かれ、一切の反論を許されずに裁かれる。


 少し先の自分たちを想像し、ある者は嘔吐し、ある者は泣き、ある者は走り出して逃げようとする。


 その者たち全て捕えられ、連行される。


「あ〜兵士長殿? ちょっと待ってもらえますかな? こいつらと約束してるので」


「これは、プラティヌム商会の会長、シルバ殿。先日はありがとうございました。とても美味しい料理と酒を楽しませてもらいましたよ……そうですな、少しなら良いでしょう」


「いやいや、こちらこそ。これからもよろしくお願いします。おい、こら、テンザス、これじゃあ試合は無理そうやな? 逮捕されるんか知らんがそれはそっちの都合やから関係ないぞ、契約は守ってもらう」


「そんな無茶なッ!?」


「いや、約束は約束。言うたよな? お前らのもの、全部奪わせてもらう」


「ウチに手を出したらどうなるか、少し考えてから行動した方が良かったな」


「……ッ!? は、計ったのか貴様らッ! 卑しい身分の分際でッ! ビーストなんぞとつるんで……! 我々を陥れるかッ!?」


「あ? 自業自得やろ? 悪いことしたら責任取らんと……んじゃ、お疲れさん」


 シルバは勝ち誇った顔で、挑発的にテンザスの肩をポンと叩く。


 アウルムはそのシルバの奥で凶悪な笑みを浮かべているのがテンザスの目に映った。


「あ、あああああああっ……! クッソオオオオオッ!」


「違うんだ! 私はテンザスに唆され……いや、騙されたただけだ!」


「私も知らんぞッ! テンザスが悪いのだッ!」


「ロベルト兵士長、少し手伝おう。罪人の割にうるさ過ぎるからな」


 アウルムは三人の口を凍らせた。皮膚がひっつき、無理に剥がそうとすれば激痛が走る。


 もはや何も出来ることはない。全てを諦めた三人の会長は目の光を失い、項垂れて引きずられるように連れて行かれた。


「おや、試合があると聞いて遊びに来たのですがこれは?」


 そこへ、ウノ・ワンドランがアニーを連れてやってくる。


「ウノ殿、良いところへ、いや悪いところかな」


 アウルムはウノに近付き挨拶をする。


「試合を見れるの楽しみにしていたんですけどね。ウチは選手を鍛えてないから、今後の参考にしようかと……普通に見て楽しむことも出来るんで残念ですよ」


「そうですか。ウチは人数が多いから練習試合なら見せられますよ。せっかく集まったことだし、このまま解散というのも味気ない」


「おお、それはそれは、嬉しい誤算ですね。プラティヌム商会の選手たちの試合の方が迫力がありそうですから」


 シルバが審判をして、急遽練習試合が行われることとなった。


 指笛で、合図を出してキックオフとなる。


「うーん、やはり興行としてこれは流行るでしょうね。ルールも分かりやすいし、闘技場で行われるようなものより安全だ。死ぬこともほとんどないから、選手が育つ。育つと長い目で見ればもっと質の高いものが今後見れるということ。ダンジョンに入ったりするよりは真似もしやすい。種族や性別で分けて試合をするのもアリだ」


「魔王との戦争の後、世界は戻りつつある。勇者の知恵もあって豊かになりつつあるこの世界では、生きる喜びが重要だろう。その為には娯楽が必要だ。今は娯楽が少ない。娯楽とは貴族や金持ちの商人だけが楽しめるもの。こうやって平民が参加出来るものが求められると我々は考えています」


「そうですね。やはり、あなた方と我々ワンドランは近い思想を持っているようだ。こうやって見ながら酒や食べ物をつまむとより、娯楽として良いものかと思えますね……試合結果に賭けるのも盛り上がるでしょう」


 試合を見ながら、アウルムの隣に座るウノ・ワンドラン。雑談をしに来たのではない。これは非公式な商談だ。


 アウルム及びプラティヌム商会の感触を掴む為にわざわざやってきたのだ。


「プラティヌム商会で出す新しい飲み物について、少し相談したいこともありますが興味は?」


「もちろんありますよ。パルムーンは製造と流通を担当していると小耳に挟みましたが、卸先はまだ少ないのでは?」


「流石ですね。ウチの小さな店に押し掛けられたら店が回りませんから、捌ける規模と信用のある所を探していたのですよ。なかなか見つかるもんじゃありませんからね。まさか、この国で一番のワンドラン商会さんから興味を抱かれるとは思ってませんでしたが」


「小さな店、ねえ……私の予想では5年後にはこの国でワンドラン、パルムーンに次ぐ大きな商会になっていると思いますけどね」


「それは過分な評価ですね……我々はやれることをやっているだけですよ」


 良くもまあ、そんな卑下を抜け抜けと出来るものだとウノはアウルムに呆れる。むしろ感心すらする。戦略的に商会の規模と権威を高めようとしているというのに、ワンドラン商会の息子から褒められたというのに、まるで嬉しそうにしない。


 浮足立たない余裕が何故かプラティヌムにはある。ウノの興味はますます強くなる。


「いや、やるべきことをやる。やるべきでないことをやらない。この選択を正しく出来る商人は案外いないものです。先ほど逮捕された愚か者たちのようにね」


「その件に関してはお礼をさせていただきたい。留守中にプラティヌム商会の名誉を守っていただいたとか」


「愚かな連中に潰されるにはあなた方はあまりにも惜しいですからね。単なる投資ですよ。その投資に見返えりとしては……そうですねえ、では5年間、ワンドラン商会が例の飲み物……そうそう、商品名は噂になってないですよね、アレをパルムーンとワンドランで独占と言うのはどうです? 損はさせませんよ」


 やはり、目的があったかと、アウルムは安心する。見返りを要求された方が思惑が読めてやりやすい。今言ったことが全てだと信じるほど甘くはないが、ウノが有利と思っている分には問題がない。


 こちらにはアニーの身分に関する証拠を握っているという隠されたアドバンテージもある。


「いやまずは1年で様子見をさせて欲しい。現状の独占は構わんがそれは商人に対してのみの契約。国に属する取引先はまた別の扱いとしたい」


「……なるほど、将来的には軍に売りたいのですね。確かにウチとパルムーンで独占したら余計な怒りを買うかも知れませんね。お貴族様……いや、軍を支配するあの王子のお怒りは買うべきではありませんから、納得しますよ。しかし、でしたら尚のこと、ワンドランが認めた商品という触れ込みは信用度を上げると思いますよ」


 アウルムの思惑も僅かな情報から正確に引き出す。余計な言葉を介さずともお互いを理解出来ているスムーズな会話にアウルムとウノは心地良さを感じていた。


 ウノは久しぶりに同じ次元、同じ速度で商人として会話が出来ている。今、まさにやりがいのある仕事をしていると、その幸せを噛み締める。


 このプラティヌム商会に勝とうとしていたテンザスたちが如何に愚かか。勝てるはずもないというのに。欲張った商人の寓話は山ほどあるが、まさにその典型だと笑みが溢れた。


「でしょうね。まあ、この話は追々、じっくりと詰めていくのでも良いのでは? 今日のところは試合を楽しみましょう」


「それもそうですね。見てくださいよ、この騒ぎに誘われて足を止めて試合を見る人々を。声まで出して応援している。これですよ、今我々にはこれが必要なんです」


「全く、同感ですね……ああ、それと何故うちの商会が襲われることになったのか。調べさせてもらいましたよ、後ろにいる彼女の過去のことは黙っておきましょう。今のところは」


「やはり、あなた方を軽んじるべきではなかったですね」


 試合終盤には、運動場を囲む大勢のギャラリーが集まり、祭りのような騒ぎとなるほどの盛り上がりを見せた。


 ***


 サッカーの試合が行われる数日前、カンベル兄弟は与えられた仕事を確実にこなした。


「軽く尋問したが、すぐに吐きやがった。大した忠誠心はないみたいだな」


「前からプラティヌム商会を陥れる準備はしてたみたいだね。裏の仕事も引き受けるビーストの冒険者を雇ってプラティヌム商会の護衛になりすます作戦だったらしい」


「格好さえ、似せちまえば大抵の奴らはビーストの顔の違いなんか分からねえからな。怪人シャイン・ドゥ騒ぎに便乗して計画を早めたみたいだ。やるなら今だってな」


「でも、予定外の行動をしたからボロが出た。プラティヌム商会から逮捕者が出なかったから、次の作戦の為に周辺をウロウロしていたところを見つけて後を追えばテンザスの従業員のところに行ったよ。尾行に注意しなさ過ぎだ」


 隠れ家となった拠点で、調査の結果を報告する。詳しい情報は書類にまとめられ、それを兵士に渡すだけでテンザスたちを逮捕するには十分のものだった。


 違う人種の顔を見分けることは難しいとされるデータがある。

 犯罪の目撃証言が逮捕の大きな理由となるケースにおいても、本人が間違いないと断言しようが、犯人ではない人間に、犯人が着ていた服を着せただけで、別人を犯人だと思い込んでしまう程度には、異人種の見分けは難しい。


 ヒューマンと顔立ちが明らかに異なるビーストを良く知りもしない人間が判別するのは不可能に近く、周辺情報の操作、この場合はプラティヌム商会の護衛が着ている装備を装う程度で認識を誤らせることは可能だ。


 ラナエルたちエルフの顔を覚えるのも難しかったのだ。エルフの中にも美醜の概念はあり、それはヒューマンではほとんど分からない。


 テンザスたちはそれを上手く利用したが、アドリブが多く綻びがあった。


「流石追跡と逃亡のプロと言ったところか」


 シルバはその書類を眺めながら土産にと、高級なワインとハムをジーンに渡す。


「プロとか関係ねえよ。奴ら三流の仕事だ、犯罪には慣れてない。精々が賄賂をよこす程度だろうよ」


「そうか、だが助かったのは事実。礼を言う」


「ところで、2日前そのプラティヌム商会の会長が呑気に帰ってきてな。ダンジョンに潜ってたんだとよ」


 ジーンが話す間にザロはワインの栓を抜き、グラスになみなみと注ぐ。瓶のふちに垂れたワインを綺麗に拭い取り、コルクをギュッと押し込む音がする。


「それが何か? 冒険者出身の商人ならそこまでおかしくないが」


「いや、奇妙だと思ってなあ。実力も知恵もある二人組のどっちかは姿が見えないんだからよお……都合、タイミングが良すぎるんじゃねえかってなあ、俺はそこでピンと来た」


「ほう?」


「お前……シルバ・プラティヌムだろ?」


「自分で持ってきた酒だ。お前が飲め」


 殺意までは込めてないにしろ、下手な誤魔化しが通じると思うなよ? そんな念が込められたグラス。


 シルバはそれを何も言わずに受け取る。


「そのマスク姿じゃ飲めないな? 良いさ、マスク、僕が預かってやろう」


「この間、見せてもらった顔、どうにも怪しい。正直、意表を突かれた。あの時は気が付かなかったが、何らかの方法で偽装してたって可能性だってある……ところで相棒はどうした? 商会のあれこれで忙しくてこれねえってか?」


「相棒は仕事だ。どこにいるかは一々お前らに説明する義務はないがな」


「ああ、そうかも知れねえ……だが、テメェが持ってきたワインを弟がわざわざ入れてやったんだぜ? 飲む義理くらいはあるよなぁ?」


 確信している。この兄弟は目の前にいる調査官がシルバ・プラティヌムであると。


 そして、断れない状況を作りマスクを脱がせようとしている。


「違うってんなら証明してもらうぜ? 俺たちと協力するのは良いが、この街の有名な商人の正体が調査官ってなら、色々と足がつきそうなんで話は変わってくるんだよなあ……」


「僕たちに都合よく仕事と言いながら、自分の商会を守る為に使いっ走りをさせたんだとしたら、気に食わないしな。神兵に見つかるリスクが全然違うから騙していることになる」


 ジーンの言い分には一理ある。単なる表の仕事が商人である調査官と、犯罪に巻き込まれた商人が調査官とでは、話が違う。


 警戒しながら逃亡を続ける彼らにとって、自分たちの足取りに関する情報を持つ者を信用するのは容易ではない。


 そこに不安となる材料があれば排除しなくてはならない。


 調査官の表の顔について、知らぬ方がいっそ良かった。調査官と商人の活動をしっかりと切り離しているのではあれば問題はなかった。


 だが、公私混同をする連中であれば、組むのは危うい。


 限りなく確実に調査官の正体がシルバ・プラティヌムであると思ってはいるが、そこが不確実では困る。


 今、ここで答えを確認しなくてはならない。


 それが言い分である。


「俺の顔について他言するなよ?」


「それは当然だ。こっちに何の得もねえからな。俺たちは安心が欲しいだけなんだよ。違うなら違うって言ってくれ」


「はあ……シルバ・プラティヌムと思われたまま活動するのも困るからな……確かに、あの時は顔を偽るマジックアイテムを使用していた。よく見抜いたな」


 シルバは仕方ないと言いながら、渋々マスクを取った。


「何っ!?」


「ち、違うぞ兄貴ッ! この顔はシルバ・プラティヌムじゃあないッ!」


 兄弟が目にしたのは、赤髪で、ギョロリと大きな金の目をした男。


 銀髪で、赤い垂れ目、つり眉のシルバ・プラティヌムとは顔立ちがまるで違う。


「いや、マスクに更にマスクをしてるとも考えられる……カツラじゃないのかッ!?」


「違うッ! この手触りは『本物の皮膚』だ……! マジックアイテムでもない」


「じゃあ……こいつ、マジでシルバ・プラティヌムじゃねえのかよッ!?」


 シルバの顔と髪を触り報告するザロにジーンはとてつもないショックを覚えているようだ。絶対に間違いない、勘なんて曖昧なものではない確信があったにも関わらず違った。


「満足したか? まあ、そう思っても仕方がない状況なのは分かるがな。全く、一応規則違反なんだからな、俺の顔を晒すのは」


 シルバはすぐにマスクを被り直す。


 これにはトリックがある。


 シャインから得たスキルによる変装能力──『変面相』である。


 1日、1時間だけ、首から上のみを変身させることが出来るスキル。


 アウルムは首から下、つまり身体のみを自在に変身させることが出来る『変身体』を得た。


(こうなることまで想定済みで、アリバイ作って俺だけ行かせた訳か……まあ、あいつは顔が同じやからマスクして剥がされたら終わり。マスクつけたまま、女に変身したらアウルム・プラティヌムとは結びつけられることは無いとか言ってたが、流石に相棒を女に変身させてこいつらに裸見せるのは俺がキツいからな……)


 相棒の切れ味のある予測と無茶苦茶な提案に感心と呆れを覚えながら、シルバと調査官の同一人物疑惑は払拭が出来ただろう。


 少し頭が回れば、あの依頼を兄弟にした時点で関係性に疑問を覚えてもおかしくはない。


 疑り深い奴は自分の答えが見つかるまでやめない。


 であれば、納得のいく答えを与えれば良い。


 シャインのユニーク・スキルがこのような状況に都合の良いものでなかったのなら、アウルムの『現実となる幻影』で幻の顔を見せても良かった。


 このプランに穴はない。しかも、シルバは嘘をついていない。他言するな、シルバと思われるのは困る、満足したか? そう言っただけ。


 全て、頭が下手に回る兄弟に都合良く解釈、納得出来るような言い方であり、逃げ道は残している。この件に関して嘘をつくと自分の能力に縛られてしまうからだ。


「じゃあ、しばらくは大人しくしてろ」


 ジーンとザロの背中を叩いてシルバは隠れ家を後にした。

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