はじまり
俺は人の心が読める。生まれながら、人の心が読めてしまうんだ。だが、それを知ってる奴は姉だけだ。皆、心が読めたらいいことばかりだと思っているだろうが、それは違う。人間というものは欲望にまみれていて、自分の事しか考えていない。だから、俺は人間不信となってしまった。自分から拒絶するので誰も近づこうとしない。そのため、高2である今に至るまで(そして、未来も)友達が出来たことがない。そんな俺だが新しいクラスになって1ヶ月、気になる子が出来た。学校1の美女、石山さんだ。誤解を招かぬように言っておくが好きという意味では全くない。俺が唯一、心が読めない人だからだ。相手が何を考えてるか分からないこの状況が生まれて初めてである俺はアイツが気になる。そういう気になるだ。
「武内君、おはよっ!」
「あ、ああ‥‥」
もう、石山さんが来る時間か。ちなみに俺はクラスで誰よりも先に学校につく。そして、学校内で唯一かわす会話がクラスで2番目に来る石山さんとの挨拶だ。何故か彼女だけは挨拶してくるのだ。どれだけ、無愛想でも。しかし、彼女に関しては悪い気はしないのが本音だ。何故なら、気になるから。俺は人を好きになった事がない。それも、この能力のせいだろう。しかし、彼女は例外なんだろう。心が読めないんだから。この話の流れだと、どうしても俺が石山さんの事が好きなように聞こえるだろうが、断じて違う。分からないものがあったら知りたくなる。それが人間だろ?