3話
私は今……50匹のワンちゃんに囲まれている真っ最中です。そう、私はさっき火球で頭を消し飛ばした、魔物と同じ魔物に取り囲まれています。なんとあの犬は群れで活動しているようで。
今にも飛びかかって来そうな雰囲気の魔物達が殺到してこないのは、コイツらの仲間を殺った火球を警戒しての事でしょう。しかし、この状態は私とってかなり……と言うか、絶体絶命のピンチです。
火球の威力は確かに高いし魔力はそんなに使わないのでいいのですが、そんな火球にも欠点がある。それは対単体用の攻撃手段だと言う事。敵が一体のみの場合には絶大な効果を発揮するだろう。
しかし今回のように一対多の場合には大きな戦果を挙げることは叶わない。
数匹を殺したところで、魔物を全滅させるよりも私が食い殺される方が確実に早いのですから。
先の戦いでレベルもかなり上がりましたが、現状のステータスで魔物達に敵うかは判らない……
おっと、こんな事を悠長に考えている場合ではありませんでした。
私は今のステータスで、この危機的状況を打破するのは難しいですが……どうにかしなければ死ぬだけです。
「グヴォォヴ」
そんな唸り声と共に群れの中の1匹が、尻尾を鞭の様にしならせ私を叩きつける動きを見せる。考え事をしていた私 その対応に一瞬遅れた。
その直径50センチ程度の太さを誇る尻尾が直撃する前に、腕を差し込んでガードするのが精一杯。
その衝撃で片腕がバキュリとイヤな音がし、100メートルくらい吹き飛ばされ、背後にあった岩に叩きつけられてやっと止まった。私の両腕が折れた。
「かはっ!」
一気に肺の空気が押し出されて、思わず咽せ返る。さっきのレベルアップがなければ確実に死んでいただろう威力の一撃。
点滅する視界でどうにか、敵を睨む。
絶望的な事に尻尾をぶつけてきたのは、ただの様子見のようですね。奴らの全力はこんなものでは無いという事です。
今の私では、手も足も出ない様なステータスをあの犬1匹1匹が持っているのは確実ですね。
そして、その様子見の攻撃を受けて満身創痍になっている私を見て犬どもの目に余裕が宿る。
今までは仲間を殺されたところを目撃し、警戒していた。
しかし、様子見の攻撃で死にそうな俺を見て先程のは偶然だった、とでも思ったのだろう。魔物の思考なんて分かりませんが。
(くっ両腕と片方の肺が機能してない少しやばいかも)
「くっくっく」
こんな絶望的な状態にありながら私は何故か笑っていた。
私はこんな状況を望んでいたのかも知れません。
突然嗤い出した俺に対し、特に警戒した様子も無く。
群れでその輪を小さくし近づいてくる。
そして犬たちは私に牙を剥き出し襲ってきた。
「グルルル」
「うっ」
(あー私ここで死ぬのかなー笑って死ぬのってかっこいいけど.........嫌だ死ぬのは嫌だ嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌)
私は死ぬのは嫌だこの世界で自由を謳歌するんだ!
⠀
【個体名:沙川彩月の強い怒りと生えの執着を確認しました。これよりステータスの改変をします。】
(え?ステータスの改変?)
名前:沙川彩月
種族:人間?
称号:人を超えた存在
魔法:〈血液魔法〉〈���〉
権能:�����
常用スキル…『万能感知』『万能変形』
戦闘スキル…『法則支配』『武神』
耐性:痛覚無効 物理攻撃無効 魔法攻撃無効 自然影響無効 状態異常無効 精神攻撃無効
(これが本当の力ふふっ)
「死ね」
私は一瞬で自分の能力を理解し魔法を発動させた。
血液魔法で自分の周りに浮かせそれを放つとさっきまで私の事を取り囲んでいた犬型魔物の群れも。私の背後にあった岩も、何もかもが消滅していた。
そして、凄まじい疲労感が襲ってくる。
さすがに疲れました。
「はぁ、早く地上に戻ってベットで寝たいです……」
あの後、襲いかかって来た魔物を何匹か始末して遂に辿り着いた下階層への道。
そこは、異世界ダンジョンでお馴染みの階段では無く傾斜の低い坂道になっています。
その坂も大した距離はなく、下の階層が見えていました。
下の階は廃城みたいな感じですかね?石レンガの廊下です。
出てくる魔物達にも大した差はなく。
最初に殺した犬型魔物体長2メートル程度のとにかくキモい鳥これまた2メートル程の猿みたいなのと動く骨の4体のみ。異世界定番のゴブリンやオークはまた見てません。
私も姫騎士みたいに襲われてしまうのでしょうか。
まぁ初日に見た、あのドラゴンが何処かにいるはずなので他の奴が居ないとも限りませんけど。
私が確認したのはこの4種のみと言う訳です。
閑話休題。
話を戻しましょう。
階層を下ること1階層目、2階層から3階層目への道に真っ黒な巨大な扉がありました。
こんな、あからさまな扉はダンジョン定番のボス部屋でしょう。
しかし、この扉に辿り着いてふと思った事があります。
ここに来るまでの間自分の能力を確認しながら戦った強りです。まだ文字化けている部分がありますが早く見れるようになりたいです。
初日に見たあのドラゴン、アイツの強さは直近10階層の強さを逸脱しています。明らかに、こんな低層にいる存在じゃありません。にも関わらず、初日に遭遇してしまった。
この事から、ここ以外にも下階層への道はあるのではないかと、思い至った訳です。尤も、散々探し回ったけど結局見つからなかったんですけどね、これが。
と言うわけで、あのドラゴンの事は気にせずにボス部屋行くとしましょう。
これまたファンタジーな事に、真っ黒の扉に手を当てると、力を込めた訳でもなく独りでに〝ゴゴゴォォ〟と重厚な音を響かせながら開いて行く。
中はまさに真っ暗。
何も無い50メートル四方程度の広さの部屋が見えるだけです。
扉を開けた瞬間に攻撃されると言う事もありませんし。
ボス部屋の中に入ると、これまた独りでに扉が閉じていき、バタンと音を立てながら扉が閉まった瞬間、部屋の中が光に満たされ。
何処から現れたのか漆黒のマントを羽織った骸骨が、赤く光る瞳孔を虚空に向けながら宙に浮いています。
名前:ゲーティ
種族:ファングオーグ
称号:牙王
魔法:〈暗黒魔法〉〈闇魔法〉
権能:
常用スキル...『威圧』
戦闘スキル...『魔道』『牙狼銃』
耐性:魔法攻撃耐性
強い、それも圧倒的に……
戦闘経験の少ない私にはこれは厄介な相手になる事、間違い無しでしょう。
取り敢えず先制攻撃をさせてもらいましょう。
血液魔法で私の血を使い槍をつくり発射させる。
チュン、と言う音を成して放たれた血槍はゲーティの周囲に現れた透明な壁を一瞬で貫通し、ゲーティに直撃した。
そして血はそのままエルダーさんを貫き滅する……事は無かった。確かにゲーティの身体が赤くなり僅かばかり溶けているのは見て取れ、ダメージが入っている事は確実。しかし、それだけです。致命傷には程遠い。
それでも、勝機が限り無く遠ざかったと言うのに口角がつり上がったのは、それだけ私戦いを楽しみにしていたと言う事でしょう。戦闘を楽しみたいのでいいです。
お返しと言わんばかりにゲーティが、闇魔法で作られた真っ黒な球体を自身の周りに幾つも浮かべて一斉に放つ。
そして放ったところからまた球体が現れると言う中々の鬼畜ループ。しかし、その程度なら対抗手段は幾らでもあります。私は避けながら血を使いシールドを作る。そして、さらに私は刀を作りエルダーリッチに攻撃を仕掛ける。
ゲーティは素早い動きで私の攻撃を躱す。
「はぁああ!」
私は足に力を今使えるいれ自分の力を収束して一気にゲーティに詰めよる。
ゲーティは私の攻撃に反応出来なく私は体を真っ二つにした。
「ガッ」
「勝った……」
その静寂を破る勝者の声。その声に気力がない事が闘いの全容を物語っていた。
「何とか勝てましたが、課題はいっぱいですね……」
今回はあまり強くない敵でしたが最初に威圧をしてきたあの魔物が相手ならいくらこのステータスでも勝てるか分かりませんもっと強くなりましょう。
この世界を自由にできるように!