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元アルビノ少女の冒険紀  作者: アパ
1/12

1話

「うっわ、何あれ」


「何で、あんな奴来たのかな?来なければいいのに」


「いるよね行事だけくるやつ。きもいわ。」


 ひそひそと私ことを遠巻きで語っているのは同じ学校に通うクラスメイトの3人。


「はぁ……」


 高校3年。

大多数の人からすれば、人生で待ちどうしい時間の1つであるはずの修学旅行の空港の飛行機に乗る前。


 そんな楽しい光景の中にあって一際異彩を放つ私、沙川彩月です。

 夏場の南国とあって皆んなが薄手の服に各々のファッションを着こなしているのに対し、真っ黒なフード付きのロングコートにサングラス。


 自分で言うのも何ですが、不審者一歩手前のような……

服装ですね。


「おい、そこどけよ白貧弱」


何がイケメンなのか分からないクラスメイト君がいきなり罵ってきたように。前も言いましたが私はアルビノです。


 まぁそんな訳で、こんな服装をしているのですが……高校生と言えど、所詮は子供。

 子供の集団の中に周囲と違う存在が1つあればどんな事になるのかは明白!


 そうイジメにあう!

そして、この体質と境遇のせいで小、中、高と特に仲の良い友達も出来ず。日光の下にも出られない。悲しいですね


  そんな私がニートになったのは、至極当然の成り行きでしょう。と言うか、中学卒業までまともに学校に通っていたのだから、私のメンタルは最強だと思います。

そして私の両親は金持ちのため妬まれます。


「何であんな中二病が金持ちなんだよ」


「ホント、人生って不平等だよな」


 だからこそ、こうなる訳です。

コイツらは私はに絡んで来たヤツの取り巻きで、確か名前は……忘れましたが私からしたらモブなのでどうでもいいでしょう。


 それに、こんな格好をしているのも、別に好きでしている訳ではありません。紫外線の下に素肌を晒せないので物理的に仕方ないですし。そもそも! 私はこんな修学旅行になんか来たく無かったんです。


「何をしているの!」


 話に割って入って来たのは、クラス担任の池田先生。

若く、優しく、そして美人。生徒からの人気も非常に高い池田先生が介入してくれた事で、彼らも慌てて立ち去って行きましたか。


「大丈夫、彩月さん?」


「ありがとうございます、助かりました」


 さて、ここまでのやり取りからもわかるように、私はクラスメイト達からよく思われていません。

 そりゃまぁ、学校に登校するのは必要最低限だけで、たとえ登校してもすぐに早退。


 それなのにニート生活で培われた私の知識を持ってすれば成績は常にトップクラス。毎日学校に行かないためとにかく暇なのです。なので、勉強しているため自然に頭は良くなります。

 私の家が運営している学校と言うこともあり、不正を疑われる始末。まぁ無事に進級出来たから別にいいんですけどね。


 引きこもっていても将来は家を継ぐか、それが無理でも子会社を貰って勝ち組人生。極め付けにはこの格好などの要素が加わり、私はクラス、ひいては学内中で嫌われています。


 まぁその気持ちも分からないでもないですが。

高校生なのだから、もう少し大人になってくれても良いと思うんですけど……


「きゃぁぁぁぁ!?」


 唐突に上がる悲鳴と激しい揺れに眩い発光。

 

「え?」


私はなにも分からずただ唖然としていることしか出来ませんでした。


「ようこそお越しくださいました、勇者の皆様」


 白い部屋に金色の髪をした一人の女が微笑みを浮かべて佇む。


「ここはどこ!?」


「何がどうなった?」


 全員が唖然とする中、いち早く声を発したのはこのクラスの2人の中心人物。

 高身長のモデル体型がトレードマークであり、クラスのアイドル的存在の佳奈森 紗枝と、整った顔立ちをしていて文武両道とである石崎 海斗。


 そんな2人に触発されたのか皆んなが次々に疑問を口にする「ここはどこだ」「何がどうなってるんだ」とか

「ゴスリロ美少女きたー!」とか変なものも混ざっているが。


「皆んな落ち着いて!」


「一旦落ち着こう」


「まずは全員いるか確認をとります!」


 そう言って皆んなを落ち着かせようとする、学級委員長の伊藤 謙太と、山口 歩夢そして担任の池田先生。


「はじめまして、勇者の皆様。

 私は、ビザンツ帝国第一王女のエリス・フォン・ビザンツと申します。

 色々と疑問があると思いますが後程、皇帝陛下であらせられる父上がお答えしますのでまずはこちらに」


 そう言うだけ言って背を向けて歩き出す王女様。

それについて行くかどうかクラスメイト達が呟き声で周囲と相談を始めるが……


「行くしかないだろう」


 という学級委員長の一言で重い足取りで王女の後をついて行く。


 行き着いた先は、まさに謁見の間と呼ばれる部屋だった。

中央に数段の階段があり、その上にある王座に腰掛ける1人の男。


「よくぞ参られた勇者達よ。余はビザンツ帝国 皇帝であるビザンツ・フォン・ビザンツだ。君達の質問に答えよう」


 皇帝を名乗った男は少し老いているように見えながらも不思議な存在感を放っている。


「私達はどうなったのですか?」


 はじめにそう質問したのは担任である池田先生だ。


「私達が勇者諸君を召喚したのには1つの理由がある。魔王を復活させようと画策する者達の存在だ」


「魔王とは?」


 そう質問を投げかけたのは伊藤だ。一国の王相手に堂々と質問するとは、恐れ入ります。ヒキニートの私にはとてもじゃないが出来そうにないですね。


「魔王とは今から約10万年前。魔物の中から生まれ多数の神を喰らい世界の神々を次々に屠った存在だ」


「その魔王を復活させようとしている奴らがいると?」


「その通りだ。かの魔王は古の大戦で敗れ去り、創世神様が命をかけ封印して下さたった。

 封印されていてもなお魔王の力は絶大だった、奴らはその封印を解き放ち魔王の復活を願っている。

 そして、奴らは魔教団と名乗り決して表舞台には立たず、影の世界に暗躍している。

 私達はその存在を偶然にも知ることができたが、本来は知る者など殆ど存在しない巨大な組織だ」


「その組織を俺たちが潰して魔王の復活を阻止するって事ですか?」


 初対面の人物にここまで堂々と会話ができる伊藤のコミュ力がとても羨ましいです。


「その通りだ」


 そんな間にも会話は続き皇帝は伊藤の言葉を肯定した。


「でもそれって俺達には関係無い事ですよね。

 勝手に召喚されてそんな事言われても困るんですよ」


 おっと、一国の王相手に嫌味を言いはじめた。

流石にそんな事をするのは時期尚早だと思うが、君のコミュ力には敬意を表すよ。


「確かにその通りだ」


 国王が稲垣の言葉を肯定し、言い勝ったと思ったのか伊藤の口に笑みが浮かぶ。


「しかし、君達はもう無関係では無いのだよ」


 その言葉で一瞬浮かべた笑みが消え失せ、他の皆にも同様に不安げな表情が浮かぶ。


「君はもう予測できているようだが、君達を元の世界に返す事は不可能なのだ。

 つまりは君達は、これからこの世界で生きていかなければならない。もし仮に魔王が復活したならば、神々がいない今、今度こそ魔王はこの世界を支配するだろう。

そうなっては君達もただでは済まないだろう。そして魔王達は色んな世界を渡り歩く力をもっているもしかしたら諸君達のいる世界にも行けるだけの力があるかもしれん」


 伊藤は無理やり召喚され、自分たちが頼りにされている立場であることに気付き何らかの対価を求めようとしたのだろう。


 しかし、皇帝が言った通りこの世界からの脱出方法が無いのなら、私達はもう既に無関係ではいられない。

 その事に思い至ったのか伊藤の表情が多少歪み、皆の不安もより一層深まって行く。


「だが、君達をこの世界の事情に巻き込んでしまったのも事実。君達が力をつける為の協力は惜しまないし、衣食住も保証しよう。魔王の危機が去った際には、その手柄に応じて貴族位を与える事も検討しよう」


 と、なんと皇帝の方から妥協点を提案してきた。

いい提案だろう。この世界では多分立場は重要なんだろうし。


「さて、異論のある者はいないか?では早速だが君達には今からステータスの確認をしてもらう」


 皇帝がそう言うと、部屋の扉からカートに乗せられた板状の物体と共に一人の男が入って来た。


「皆様、この金属板はステータスプレートと呼ばれていて神代から残るアーティファクトの一つです。まず皆様にはこのステータスプレートに血を一滴垂らしていただきます。そうするとあなたのステータスが表示されるはずです」


 言われた通りにするとステータスが表示され皆から、おぉっと感嘆の声が上がる。私達からしてみれば、まさにゲームがリアルになったように感じて妙な感動がある光景だった。やった事ない人でも思いつくだろう。


名前:沙川彩月

種族:人間

称号:もじばけ

魔法: 〈豁サ鬲疲ウ〉〈血醳彎吥〉

権能: 【豁サ鬲疲ウ】

【豁サ鬲疲ウ】

常用スキル...

戦闘スキル...

耐性:


(なにこれ読めない。文字化け?)


私は文字化けをしていて悩んでいると話が進んでいく。


「そのステータスはレベルの上昇と共に上がります。そして収納と念じるとステータスプレートは体内に保存され、収納状態でステータスオープンと念じると自分にだけステータスが表示されます」


 言われた通りに念じるとスルリと板が身体に吸い込まれ、ステータスが表示される。

その事にまた感動を受けていると唐突に皇帝が声を発した。


「ん? そう言えばそこの君はなぜそんな服を着ているんだ?」


 と、その言葉を受けて周りのみんなの視線が私に集中する。非常にやめて頂きたいです。


「皇帝様、彼女は太陽の光に弱いのです」


 そう答えたのは学級委員長の鈴木だ。

咄嗟に言葉が出てこなかった私の代わりに答えてくれたのはいいのだが……彼が返答した瞬間この部屋の中にいたクラスメイト以外の人がピシリと動きを止めた。


「それは、一体どう言うことかな?君、その服を一旦脱いでくれないか?」


 そこには、さっきまで部屋を包んでいた穏和な雰囲気は無く、ピリピリとした空気が流れ始める。


 しかし、この空気の中、逆らえるはずもなく羽織っていた黒のロングコートを脱ぐ。


 そして、露わになる病的なほどに白い肌に紫に近いような白い瞳。そして場を満たしていた緊張度が爆発的に増す。


「これは一体どう言うことだ!?」


いきなり大声をあげた皇帝に皆がビクッと反応する。


「な、何故ここに!?」


「これは一体!」


 などと皇帝の周りにいた貴族や文官、武官などが慌ただしく動き出す。


「奴を捉えよ! 抵抗するなら殺しても構わん!!」


 一際目立つ甲冑をまとった男の一言で部屋の外から武装した兵士が雪崩れ込んで来て唖然とする私を取り囲む。


「この世界でもか。はぁ」


私は何となく状況がわかった。この世界には地球で言う吸血鬼みたいなのがいてそいつらは肌が白く日によわから私が疑われているのか。


 そしていよいよ兵士たちの持つ槍が私に届きそうになった時、同じく困惑していた池田先生が声をあげた。


「待って下さい! これは一体どういう事ですか!?」


「あの白い肌あれはどこから見ても吸血鬼の特徴と一致している」


「吸血鬼!? そんな、彼女はアルビノなだけで断じて吸血鬼などではありません!」


 そう、池田先生が否定するが、国王はそれを認めない。


「アルビノとは何か知らないが、太陽の光に弱く、白い肌は吸血鬼の特徴と一致する。

 吸血鬼は太陽の光に弱いからか殆ど人の前に姿を表すことはないが、人類に害を為す危険な存在なのだ。

 そこでだ、君達は彼女が普段どのように過ごしているのか知っているのか?」


 そう言われては、池田先生は押し黙るしかない。

それもそうだろう、私は学校に殆ど行っていないし、誰かと遊ぶことも無いのだから。


「返答がないという事は身に覚えがあるという事だろう? つまりはそういう事だ」


「し、しかし、私たちの世界には吸血鬼なんて存在していません」


 私のことを守ろうと、教師の、担任としての責務を守ろうと必死に食って掛かる池田先生と国王のやり取りを周りの皆は理解が追いついていないのか、唖然と見ていることしかできていなかった。


「それは君達が知らなかっただけで、君達の世界にも吸血鬼は存在していたのではないか?」


「それでもです。百歩譲って例え彼女が吸血鬼だとしても彼は私の生徒です。彼女に手を出す事は許容できません!!」


「……しかし、吸血鬼を野放しにする訳にはいかないのだ。

 だが、貴女がそこまで言うのなら命だけは取らないと約束しよう」


「それはつまり、彼女を私達と同様に勇者として認めてくれると言う事ですか?」


 池田先生がホッとした様子でそう尋ねるが帰ってきたのは否定の言葉だった。


「残念ながらそれは出来ない。彼女が称号に勇者を持っているならば兎も角、先程の結果はそうでは無いのだから。

 それに吸血鬼をこの国に置いておくこともできない、よって彼女は処刑場に追放する」


「……その処刑場とはどのような場所なのですか?」


「遥か昔に魔王の欠片や配下の残党を封印する為に神々によって造られたと言われている場所だ。

 何処にあるかも判明していないし、全容を把握できているわけでも無い。

 これまでに許されない罪を犯した幾人もの罪人たちを送り込んできたが、帰ったものは誰も居ない、つまりは処刑場だ。

 だがそれはあくまでも人間の話だ、戻ってくる事は不可能だろうが、吸血鬼ならばあるいは魔物達と共存し生きて行く事も可能だろう」


 その言葉に池田先生はが「そんな」と崩れ落ちそうになる一方で、皇帝の周囲の貴族や文官達からは別の声が上がる。


 曰く「それでいいのですか!?」「吸血鬼に恩情をかけるのですか!?」と。


 武官や兵士などは今にでも飛び掛かってきそうな雰囲気だ。しかし、皇帝はそんな者たちを諌めて私に冷たい目を向けながら言った。


「勇者である彼女がここまで言うのだから仕方あるまい。

 生き残る確率など無いに等しいのだ、せめてもの恩情としてそのぐらいは構わない。それに勇者の皆の前で奴を始末し、彼らの士気を下げるわけにもいかない」


 それに死ぬ事はないって言ってたのに、生き残る確率は無いに等しいって既に矛盾してるし。


 などと思っていると、次は私に吐きかけるように言葉を述べる。


「幸いお前は力が強くなさそうとはいえ、人の脅威となる吸血鬼が即座に殺されない事を彼女に感謝するんだな」


 そして兵士たちに拘束されている私に宮廷魔法士達が数名で転移魔法と思われる魔法を唱え始める。



「彩月さんごめんなさい、先生じゃ君を守れそうに無いわ」


 と失意の中に声を掛けてくる池田先生。

そして私の中では、この不条理の憎悪感情が湧き上がる。


 つまりは、またかと。

 何故アルビノってだけで、ここまでされなきゃならない?

私は巻き込まれただけなのに、異世界に来てまでアルビノのせいで……


 と、私の人生はこれまでもアルビノのせいで狂わされて来た。


「仕方ありませんよ。

 先生のせいじゃありません、全てはアルビノの所為ですから」


 そして、はぁと溜息をつき国王に向けて言い放つ。

 長年のアルビノによって培われて来た不満とともに……


「私を追放した事、後悔しないようにして下さい」


 吹っ切れた様に嗤う。

その瞬間俺の足元にいつのまにか出来ていた魔法陣の光が俺を包み込み再度視界が切り替わった。洞窟のような視界に。


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