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第3話:チートスキル

 唸り声を上げる俺を白花那姫神は必死に宥めてきた。

「まったく。人の命を何だと思って」

「ですから、それは誤解ですってば」


 嘘吐け!

 だが、もうこうなったら仕方ない。いつまでもこんなお子様に怒りをぶつけるのも、大人げないというものだ。

 大きく溜息を吐いて、俺は無理矢理怒りを抑えた。


「分かった。じゃあ、そういうことにしておいてやる。んで? どういう異世界に送られるのか知らないけれど。そこで魔王なりなんなりを倒して、世界を救ったら、生き返らせてくれるんだな?」

「はい、その通りです」


「ちなみに、時間とかどうなるんだ? 生き返ろうにも、もう葬式も終わって死体が焼かれでもしていたら、生き返りようもないと思うんだが?」

「あ、そこは大丈夫です。ここは現世と隔絶された世界。時間の概念も別になっていますから。ちゃんと、亡くなられた時間と場所の通りに生き返ります」


「そうか。それなら、まあいいか」

 本音では全然よくないのだが。

 でもこうなったら、とっととやることやって生き返るのを目指すしか無い。


「じゃあ、さっさと行って帰ってくるから、どんなところに送られて、何をしてくればいいのか教えてくれ」

「はい。よろしくお願いします。U沢T也さんに行って貰いたい世界ですが、まさに剣と魔法の世界。地球上での中世ヨーロッパ風味で、色々な魔物が生息している世界です。ゲームや小説の舞台になっているような、あんな感じです」

「随分と大雑把だなおい」


「でも、イメージはしやすいと思いますけど?」

「あくまでも、物凄く大雑把にはな?」

 とはいえ、そういう世界もピンキリだと思うので、何とも言えない。詳細は現地に行って確認するしか無いか。


「それで、その世界に魔王が現れて世界のピンチになってしまったので、魔王を倒してきて下さい。無事、倒せたらこちらに召喚して、そのまま元の世界に生き返って貰います」

 本気で魔王を倒せと来たか。ああもう、無茶を言うなあ本当に。俺はガリガリと頭を掻いた。

「分かった。でも、そうなると、生活インフラとか心配だなあ。特に病気になったときとか」


「ああ、そこはそんなに心配しなくても大丈夫です。お貸しする仮初めの肉体は、病気や怪我にも強いですから。それに、それでも死んでしまった場合は、こちらに戻って来て、再出発という形になりますので」

「その場合、ペナルティとかあるの?」

 訊くと、白花那姫神はまた目を逸らした。


「おいこら? ちゃんと正直に言いなさいっ! おじさん怒るよ?」

「あ、はい。分かってます」

 半笑いを浮かべて、白花那姫神は説明を続けてきた。


「色々と、これも選べるんですが。寿命を減らすとか、生き返った後に大金を失うことになるとか。そうやって、現世の利益から幾らか天引きすることになります」

「それ、失敗し過ぎて大損している人とかいたりしない?」


「いますね。でも、異世界を救ったりすれば、そのマイナスを埋めたりも出来るので。それで、あちこちの世界を渡り歩いている人もいます」

「とんでもねえ借金地獄じゃねえかっ!」


 異世界転生でチート能力を授かってウハウハな生活を夢見ている連中、もうちょっとこの世知辛い現実を知った方がいいと思う。

 生きているうちは、知りようがないと思うが。


「あと、困ったときは転生後にこちらの『異世界生活のススメ』をご確認下さい。先輩達によって獲得されたノウハウとか、私達への連絡方法とか書いてありますので。報告や相談は、そちらから受け付けます。たまに、進捗報告を聞きに伺いますので、そのときはよろしくお願いします。U沢T也さんには、引き続き私が担当となりますので」

「ああ、はい。よろしくお願いします」

 俺は、白花那姫神から「異世界生活のススメ」と書かれた小冊子を受け取った。

 本当、派遣会社のノリだなこれ。いや、客先常駐やってきたことからの想像でしかないけど。


「さて、いよいよお待ちかねのワクワクタイムですっ!」

「別に、待ってないけどな? というか、なんで急にそんなテンション高いの? 何やるのかも分からんけど」

「いやいや? 異世界転生って言ったらチート能力じゃないですか? そういうのを授けるって、言いましたよね?」

「あー、そういや何かそんな感じの事言っていたなあ」


 完全に忘れていたという訳でもないけど。だって、そういうのが無いととてもじゃないが異世界に行って魔王を倒すとか、とても無理だし。

「その、能力を今まさに決めようというのですっ! あと、ここは異世界転生希望者が最も期待するポイントなので、テンション上げていきましょうって研修で習いました」


「ああ、そうなんだ。研修で言われたこときちんと守っているんだ。偉いね。ひょっとして、新人なの? 見た目相当若いけれど」

「はい、U沢T也さんが『私の初めての人』っていうことになります。ふふん、こういう言い方すると、ちょっとドキッとしちゃったりしました?」

「いや、全然?」


 いくら見た目が可愛くてもなあ。お子様じゃなあ。むしろ、頑張っている痛々しさの方を感じるし。おじさん、こういうノリについて行けるほど若くないのよ。いや、性格的に若い頃から苦手だったけど。おかげで、可愛げの無い新人って、睨まれまくっていたと思うけど。無理なもんは無理。

 というか、これ児童労働だったりしない? まあ、死神だって言うんだから、見た目通りの年齢と知識じゃ無い可能性も結構あると思うが。

 あと俺、別に異世界に行くの希望していた訳じゃないし?


「もう、ノリが悪いですね。でも、それじゃあパパッと進めますね。よっと」

 そう言って、白花那姫神が虚空に手を伸ばすと、木で出来た六角柱の物体が現れた。

「え~っと? それ、おみくじ?」


「はい、この中からU沢T也さんに向いた能力がランダムで選ばれます。今はキャンペーン中で、何と5つも能力を授けることが出来ちゃうんですよ?」

「わー。そりゃあお得だねー」

 キャンペーン中だとか、お得だとか言われても本当のことか判断出来ない。


 いつまでも閉店セールを続ける店があるように、そう言っているだけの可能性だってあるのだ。

「何が出るかはお楽しみ~♪ はいっ!」

 白花那姫神が六角柱を振ると、その中から光り輝く文字が、俺達の目の前に飛び出した。


【服従させる魔法】

【発情させる魔法】

【絶倫になる魔法】

【衣服消滅魔法】

【衣服変更魔法】


 それらを眺め、俺は半眼を浮かべる。

「おいこら? ちょっと待て?」

 視線を白花那姫神に戻す。

 そこには、恐怖で顔を青くし、自らの体を抱いて後ずさる少女の姿があった。

何故こんなネタを書いたかって?

「あなたがゲームの世界に入った時に使える魔法を5つ調べます」のサイトで遊んでみたら、


【服従させる魔法】

【発情させる魔法】

【絶倫になる魔法】

【衣服消滅魔法】

【衣服変更魔法】


って出てきたからです(実話)。

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