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第19話:そして、現実へ…

 機体に、ぼたぼたと青緑色の液体が降り注ぐ。

 俺が乗るスーパーロボットと同じぐらいに巨大な魔王。その胸から吹き出した血だ。


「が……が……かっ、はっ?」

 全身を震わせ、禍々しい姿の魔王から力が抜け。その場に膝から崩れ落ちる。

 巨大な魔王城が揺れた。


 その魔王の姿を見下ろしながら、俺もまた肩で息をする。

 強敵だった。知りうる限りのスーパーロボットの武装を展開し、駆使してもなおなかなか有効打を与えられないような。そんな奴だった。

 俺が持つチートスキルも、ダーククロスとかいう魔王のチート装備のおかげでほぼ無効化されてしまっていたし。


 おかげで、ガチのシリアスバトルになってしまった。これを真面目に小説化し、文章として書けばそれだけで何話か、下手すれば何十話と続くことになったに違いない。

 警報はずっと鳴り止まない。機体ダメージを示すモニターは、文字通り真っ赤だった。頭部は損壊し、片腕が吹き飛んでいた。どちらが死んでも、おかしくはなかった。

 対魔法用のシールドもヒビだらけだ。いつバリアのお約束よろしくパリンと割れても不思議ではない。


「勇者よ。よくぞ、この私を倒した」

 ごぼごぼと血の泡を吹きながらも、そいつは言ってくる。

 ただの末期の言葉だというのなら。聞いてやろう。これが、呪いに繋がるようなものだったら、すぐにその首を切り落とすが。

 俺は、レーザーブレードを魔王の首筋に当てた。


「だが、光ある限り、闇もまた尽きぬ」

 お前はどこの名作RPGのラスボスだよ?

 なんか、あまり聞かない方がいい気がしてきた。ちょっとヤバい気がする。版権的な意味で。


「私には見えるのだ。闇に包まれる世界がある限り、貴様に安寧は訪れることはない。再び、何者かがお前を闇の世界へと誘うであろう」

「止めてくれマジでっ!?」


 俺は半眼を浮かべ、魔王の首をちょんぱした。苦しそうだったし、ひと思いにということで、いいだろうと。

 ああもう、心当たりがガッツリとあるから質が悪い。


 首無しになった魔王の死体は、首もろともに焼却処分することにする。こういう類いの魔王って、死体を残すとしぶとく生き返ったり、何者かに怨念が取り憑いたりとかいうケースもあるっぽいしなあ。念のため。

 こうして、四度目の異世界転生、そして救済は無事に完遂出来たのであった。


◆ ◇ ◆ ◇ ◆


 魔王を討伐して、クソ死神達に報告した後、俺はしばらくこの世界で骨休みと洒落込むことにした。

 期間は、一ヶ月くらいを考えている。最低でもそれくらいは休みたいというのと、それ以上休むと、今度は仕事の状況どうだったかとかすっぱりと忘れて、現実に戻ったときに困りそうだし。

 王女様の寿命についても、死神どもは話を付けてくれた。


 今度こそ最初から最後まで、彼女が元気な姿のビデオレターを見ることが出来て、俺は安堵した。俺からの返信は、こういうときにどう言えばいいのか、気の利いたことが思い浮かばなくて「元気でいて欲しい」とか「愛している」とか、そんなことを言うのが精一杯だったけれど。

 魔王城にあったお宝だとか、そういうのはほとんどこの世界の国々にばらまいている。どうせ、俺には持って帰ることもできないし。それなら復興予算にでも使ってもらった方が有意義だろう。

 ただ、そのほんの一部だけは、俺が頂いている。山奥の鄙びた温泉郷。ここでの滞在費用として。


「はあ~」

 俺は自分以外に誰もいない温泉に浸かりながら、まったりと息を吐いた。雲一つ無い青空を見上げる。

 こういう、ゆっくり、のんびりと過ごす時間って無かったよなあって。

 死神達には、今回の案件から幾つか条件を飲んで貰えた。こうして、魔王討伐から生き返りまでの間に休養期間を用意させてもらったのもその一つだ。


 前回のときに白花那姫神が「残っていてもよかったんですよ?」なんて言っていたあたり、それは特に、何か大きく差っ引かれるようなものでもないらしい。

 こうやって、精神的に癒せる時間があるなら、まだ異世界を救ってもいいかなと思える。あくまでも、数ヶ月で異世界を救済出来るというチートスキルを持っているからこそ、出来る考え方かもだけど。


 英雄願望なんてものは持ち合わせていないつもりだが、困っている人がいるのを放っておけるかというと、性格的にそれも無理なのは自覚している。つくづく、厄介で面倒な話に巻き込まれたものだと思うが。

 あと、俺を呼ぶ頻度はなるべく善処するという話にはなった。どこまで期待できるかというと。あまり期待していないけど。


 でもって、死因についてはどうあってもテクノブレイクは避けられないということだった。どう考えても、全部あのくそ死神の仕業なのだが「U沢さんの性欲ばっかりは、私達の干渉出来る話ではないので」とか言ってきて。

 どっから出てくるんだろうな? 連中のテクノブレイクに対するこだわりって? まあ、それについては、生き返ってしまえばいいわけだと、俺も慣れたというか諦めつつあるが。


 まあいいさ、今だけはこうして、何もかも考えずに休もう。

 僅かながらでも勝ち取った待遇改善を俺は謳歌することにした。

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