第10話:男の戦場に涙
コックピットに警報が鳴った。
レーダーに反応。敵襲。
数と距離を確認し、俺は愛機を駆る。
広大な草原の向こう。向かう先にいるのは、赤い肌を持った一つ目の巨人だ。
そこそこの大型か。この手のタイプは馬鹿そうに見えて魔力障壁を備えていたりして、遠距離からの攻撃がさほど有効ではない。
レーザーブレードを構える。吶喊。
大きく棍棒を振り上げる巨人。
そこだっ!
俺は間合いに入る直前、機体を反転、ターンピックを決める。
タイミングが合わず、大振りを地面に打ち下ろした巨人。その無防備な背中にレーザーブレードを振り下ろす。
血しぶきが舞う。まずは、一体。
そのまま止まることなく、俺は次の獲物へと向かう。
頭部からバルカン砲を浴びせる。が、予想通り思ったほどの効果は無いようだ。矢躱しの魔法のようなもので加護を与えられているのか、弾道が逸れてかすり傷にしかならない。
吠えながら突進してくる二体目の巨人。
だが、かすり傷だろうと痛いことは痛いのだろう。その脚はこちらに近付くにつれて、鈍くなる。また、矢躱しの効果にも限界があるのか、巨人から舞う血しぶきが増えていく。
「もらったっ!」
逸らしきれなかった弾丸が目にでも当たったのか、巨人が大きく顔を逸らす。俺はその隙を見逃さない。
一気に距離を詰め、レーザーブレードで腹を薙いだ。続いて、返す刀で首も切り落としておく。
残りは巨人が10に火龍が5ってところか。
いいぜ? かかってきなよ。俺のこの乾きを少しでもお前らの血で癒やさせて貰おうじゃねえか。
ああうん。マジでもうさ、俺本当に嫌になってんだよ?
何なのこの世界? あんのクソボケ死神どもめ。なぁにが「女性型の魔物もいますよ」だ。
確かにさ? いたよ? いましたよ? ええ、そりゃもう美人でおっぱいぷる~んぷるんな魔物をあっちこっちで見掛けましたともさ。
決して、そんなのを追い求めて魔物退治していた訳じゃないけどさ。戦い続けていると、色々と昂ぶってきたりもするわけですよ。仕方ないだろ? 男ってそういう一面あるんだから。
んで、仕方ないからっ! 本当の本当に緊急手段として、やむなくサキュバス捕獲して、服従魔法と衣服消滅魔法使って、ついでに絶倫魔法も使ってナニしちゃおうかなとか試したこともあるんだよっ!
でも、ダメだよ。こいつら全然ダメ。あのさ? 何なの? 生えてるってどういうことだよ? そりゃ、あの見せて貰った写真は上半身だけだったから、そんなこと分かんなかったけどさ。
無理無理。全然無理。俺、そっちの性癖は持ってないから。いくら挿入する箇所があっても、生えていたらマジで無理。
じゃあもげばいいじゃないかって? そんな訳にもいかねぇんだよ。もぐとかしたら、こっちが玉ヒュンしちゃって、それどころじゃなくなるって。
そういう、生えているのがサキュバスには半数ほど。
でもって、残りの半数は生えずにまんま女の子っていう感じだったんだけど。
こっちはさ。お前らマジでやり過ぎだろ。そりゃ、食事なんだろうから、そうなるのかもだけど。
何つーかさ? 清潔にしろよ? 魔物だから、そういう習慣あまり無いのかもだけど。凄い臭いしてんだけど? 絶対に変な病気持っているだろ? 恐くて無理。マジで無理っ! いくらこの転生用の体が病気に強いとか言われても、生理的に無理っ!
サキュバスだけじゃなく、全身が人間の女に近い感じの魔物は悉くそんな感じだし。
じゃあ、せめて上半身だけでも期待出来そうな魔物ならどうかと思ったけど。人魚とかセイレーンとかラミアとか、せめて、顔が美人の女の子で、おっぱいがあれば妥協は出来ると思ったんだけどっ!
でも、それもダメでした。
何かさ? 連中の頭の中身ってそのまんま魚とか鳥とか蛇なんだよ。発情魔法使って、えっちなことをしようとしても、期待しているような反応じゃないのよ。ひたすら、猿みたいな喚き方したり、マグロだったり、性的興奮をどう処理すればいいのか分からないのか、狂った暴れ方したり。ちなみにこれ、服従魔法を使ってもせいぜいが身動きさせないようにするのが限界だった。そんな無反応なの相手におっぱい揉んでも、すげえのに虚しかった。特に変温動物の連中なんか、死体か人形かって気分になるし。
とまあ、こんな感じのことを100体くらいの魔物相手に確認してみたのだが。どれもこれも無理だと判明し、俺は諦めた。
帰るっ! こんなところにいられるか! 俺は日本に戻らせてもらうっ!
俺にはな、夢があるんだよ。いつか、小説を当ててもうこれ以上働かなくていい程度の印税生活をしながら、可愛いメイドロボを大量購入して、まったりと日々を過ごす夢が。
その夢のためには、こんなところで立ち止まっていられるかっ!
俺、この戦いが終わったら小説を書くんだ。もう、プロットも考えてあったりして。
絶え間なく続く爆音と血しぶき。
俺は次から次へと敵を屠っていく。ふははははははは。圧倒的ではないか、我が愛機は。勿論、戦いになれた俺の腕もあるけど。
こんな連中、俺一人で倒してやるぜ。
死亡フラグっぽいこと考えているなあとセルフツッコミを入れつつ、俺は戦いの締めに入っていった。