アイラブユーベイビー!
「好きです!」
今日も今日とて映画のプロポーズさながら、大きな花束を差し出す…………くらいの熱量で、真正面から突撃した。
「はいどうもありがとう」
「つ、付き合ってください!」
「……」
意中の彼は、本から目を離さない。長い足を組んだまま、黙々とページをめくっている。
「無視ですか先輩」
「俺はいつ、何の先輩になったんだ」
「……人生の?」
「確かに。敬いたまえ」
「敬ってるよ!すごく敬ってるよ!それも超えて愛してる!」
「それは知ってる」
表情一つ変えず、引き続き本を読み進める彼に感心する。私という騒音を受け流しながら本も読めるなんて、聖徳太子の生まれ変わりか何かなのかな。
「今日は何のご本ですか」
「哲学の本」
「お仕事?」
「趣味」
「素敵なご趣味ですね!」
「……」
また応答がなくなった。もう。次はどこを褒めちぎろうかしら。そんなことを考えながら、ずるずると彼の掛けるソファーの足元に移動して、組まれた膝に頭を寄っかけた。
「おみ足が長くて素敵でいらっしゃる」
「単に身長があるからね」
「濃い色の目もとても素敵です!」
「あなたと同じごく一般的な色ですよ」
「その、落ち着いた声も最高!毎日聞きたい!」
「……」
とにかくすっごく好き――そう口を開きかけたとき、ようやく彼がこちらを見た。
ぱち、と目が合って、その視線に射抜かれる。ダメなんだって。好きなんだって。本当に。
彼は動けなくなった私の腕を引いて、自分の膝の上に引っ張り上げた。
「何の遊びか知らないけど、もうとっくに付き合ってるでしょうが」
「いやぁ……変わらぬ愛を伝えたくて?」
「伝わってるよ」
「言い足りない」
「毎日毎日アホみたいに俺の事褒め殺して」
「だって」
好きなんだもん、と彼の胸に顔をうずめた。
「伝えたいから」
そう。伝えたいの。だって、
「伝えられるって、幸せな事だと思うから」
「誰が?」
「私が」
「そういうとこだよ」
文句かと思って真顔で見上げると、彼はとても優しい目で私を見ていた。そのままゆっくり、私の髪を梳く。
「そういうとこ。付き合おうと思ったとこ」
途端に自分の頬が緩むのがわかった。嬉しくて嬉しくて、口が閉じられない。
「これからも毎日、伝えるね」
「よくもまぁ手を替え品を替え」
「すごいでしょ」
「うん。…………ありがとう」
私を抱きしめる腕から、何かが流れ込んでくるようだった。
ありがとう、は、私。
大好きな気持ち、受け取ってくれて、ありがとう。