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絶対にあの王太子殿下の婚約者になりたくありません! 3人のお姉さまがたによる婚約者押し付け騒動の顛末はどうなったのか? よろしければ一番末の4人目の妹の私がお話ししましょう。

作者: かのん

「絶対にあの女好きのバカの婚約者になんかなりたくないです!」


「私もよ、エメリーお姉さま、絶対に嫌よ!」


「私もいやですわ。エメリーお姉さま、ルシルお姉さま!」


 私はお姉さま方の戦いを今お茶を飲みながら見守っています。

 手にはお気に入りの熊、ローリーがいます。モフモフでかわいいんですわ。


「お姉さまたち、押し付けあっていてもだれか一人を出さないとだめってお父様が言ってましたわ」


「「「黙りなさい、ミレーユ、あんた自分が10歳だからって余裕ぶって! 私たちの気持ちがわからないの!」」」


 お姉さま方が同じタイミングで私に怒鳴りつけましたわ。

 ローリー、怖いですわあ。婚約破棄された王太子殿下の婚約者選びって大変です。


「だって、私まだ10歳ですもの、婚約年齢は14歳からですわ。お姉さまたち」


「「「あんたねえ、あのバカの女好きの婚約者なんていやだってみんな逃げて、こんな子爵の家まで話がやってきたのよ!」」」


 ああ、とてもよく似てます。はもってますわ。私はずずっとお茶を飲み干しながら、そこまでえんがちょされる王太子殿下って相当なものだと思っていました。


 あ、一番上はエメリーお姉さま、16歳、次はルシルお姉さま、15歳、そして次はマデリーお姉さま。14歳でした。


 三姉妹といわれることが多いですが、私を入れて四姉妹。


 お父様はもう私で諦めたらしく、男の子が産まれないと悩むのをやめて、私に婿をとって跡を継がせる! と宣言したのですわ。なので婚姻年齢であったとしても私は今回は論外でした。


「お姉さま方、話は簡単ですわよ。あのバカの婚約者になるのが嫌なら……」


 取っ組み合いの大喧嘩をしているお姉さまたちに、簡単な話なのになあと思いながら言ってみます。

 私がなんとなく言ったことを、そういえばその手があったか! と三人同時に頷きましたわ。


「もしくはそうですわね。あと……」


 良い方法がこれだけ考えてもあるかなとたとえを出すとうんうんと皆がうなずいてメモを取り始めました。


「ローリー、もふもふです。うふふ、かわいいですわ。僕もミレーユちゃんのこと好きだよってそんな」


「ローリーもふもふですと、ちょっとミレーユ、メモをしているときに変なことを言わないで!」


 ルシルお姉さまに怒られました……。でもこれくらい普通に覚えてくださいです。

 私は繰り返し思いついたことを話し、お姉さま方はこれならできるかな~と三人で話しあっていましたわ。


「ミレーユ、あの子たちに何を言ったんだ! 一番上のエメリーが修道院に入ると言い出したぞ!」


「みゅう、お姉さまはその手に行きましたか……」


「神なんぞ信じていないといっておったのに!」


 私はお父様に今怒られていました。だって、お父様だってお姉さまたちの誰が婚約者になっても胃が痛いって言ってましたわよ! 私はそれを言うと、まあなあと頭を掻きます。


「だって、一度出家しても、お金を出せば還俗できますわ。その手で婚約を逃れた人が昔いたのを本で読んだって言っただけですわ」


「しかし王家に対しての対面が悪い。いきなり出家しました。だから婚約できませんとは……」


 まあ、出家をしても、数年たてば出てこれますし、それくらいの献金はうちでもできますわ。と私は笑います。だってねえ、お姉さまがあれほど嫌がっているのに無理やり婚約させても多分うまくいきませんわ。


「まあそうだなあ……しかしルシルはうだつの上がらぬエシャル家の次男坊と婚約をすると言って……」


「次男か三男あたり、爵位を継げない貴族の男性がねらい目って言っただけですわよ。お姉さま、あの人の見掛けは割と好きだから妥協しようって言ってましたわ。言い寄られた中で一番ましだったとかなんとか」


 ルシルお姉さまは一番の器量よしでもてます。だからこの手があったか! と言って婚約者を急いで探していたようです。

 でもねえ、この手が使えるのはもてる人で、あまり見た目がよく……いえでも普段はとてもやさしいマデリーお姉さまには無理かなと思い最後の策を言ったのです。


「マデリーは薬草師になるといって家を出ていくし……」


「お姉さま、薬草学は人一倍お好きでしたし。それで身を立てるならそれはそれでいいのでは、うちはしがない子爵の家ですし、持参金もあまりありませんし」


「……お前な」


 私はしかし、えんがちょされた王太子殿下ですが、どうしてここまで嫌がられて押し付け合いになるのかななんて思ってました。ああ、22年前の婚約破棄騒動のせいですか。


「私、10歳でよかったですわ! だってあの怖い王妃様にいじめられなくて済んだのですから、首をちょんされるのはいやですわあ」


「おいミレーユ、それは外では言うな!」


「わかってますわ」


 私は女好きでどうしようもない王太子殿下でもここまで嫌がられるのはあれがあるからかと納得します。

 だってねえ、庶民の王妃様が、その当時、王太子殿下だった陛下の婚約者の公爵令嬢を陥れて、婚約者の座を奪い取り、公爵令嬢を断罪しギロチンにかけたって有名ですわ。


 お姉さまたち、それをされるのを恐れたのですわね。

 女性のほうが防衛本能が強いですし。


 私、バカといわれる王太子殿下の婚約者なんて決まらないだろうなあって思います。

 末席の子爵家のお姉さまたちだって嫌がってますし。


「これをざまあっていうのですかね、因果応報?」


「これミレーユ!」


 私はそろそろ婚約者のローリーとのデートの時間だと思いつつ、熊のローリーを椅子に座らせ、では行ってきますわねとお父様に笑顔を向けました。

 うふ、私は婚約者のローリーのことを好きですわ。でもねえ、浮気をしたら……うふふ、これは言わないでおきましょう。

お読みいただきありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
[一言] これ、ざっくりとでもいいからこの後の顛末とか読んでみたいですね。 結婚相手の決まらない王太子と焦る王家、逃げる周囲の貴族令嬢という図式は今までも色々と呼んできましたがそれぞれ味があって面白…
[一言] 末っ子には婚約者がいたのですね〜(笑)
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