表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/75

プロローグ

「美味しいです」


 もぐもくもぐ、と幸せ顔で俺の部屋でごはんを食べているこの後輩の女の子に俺、相馬遼太郎そうまりょうたろうは秘密を握られている。


「唐揚げはもちろんですが、このツナとピーマンのあえものもいいです」


 どうしてこんなことになったかって?


 そもそもの原因は俺にある。高校に入学し、好きになった女の子と話が出来た。気分が高まってしまった俺はついつい帰り道に遠回りし、立ち寄った高台にある公園で夕陽に向かって叫んでしまったのだ。

 

 なんて叫んだのかなんて思い出したくもない。時々立ち寄っていたのだが、そこがほぼ人気のない公園だったことと、好きな子と話が出来たという高揚感から完全に油断していた。


 まさか、その場所に人が、しかも同じ高校の生徒がいるとは思わなかった。


「あ! 今日のお味噌汁卵入りですか? ぜ、贅沢です! 嬉しいですー!」


 初恋の女の子と少しの時間だったが話をして、笑ってくれて。それがどれほど嬉しいことなのかは男子高校生ならまあ分かってくれるだろう。俺がついつい叫んでしまったのも仕方のないことだったのだ。


「はあぁ……やっぱりコンビニごはんばかりはダメですね。手作りに限ります!」


 叫んでスッキリした俺が家に帰ろうと振り返った時、背後に今この目の前で美味しそうにごはんを食べる後輩が立っていた時の俺の恐怖と動揺は想像を絶するものだった。


 ちょっと引き気味な彼女の顔と、やばい面白いもの見つけちゃったみたいな嬉しそうな顔。今でも脳裏に焼き付いて離れない。


 もう膝から崩れ落ちたね。殺してくれと何度願ったか分からない。


「……あの、せんぱい? さっきからなにぼうっとしてるんですか? 聞いてます?」

「……聞いてるよ」

「どうせまたあの人のこと考えてたんでしょう? あはは、せんぱいには釣り合わなさすぎますよ。あの潮凪葵しおなぎあおいですよ? そんなわかめごはんみたいな顔して」


 どんな顔だよ。


「まあ私もまさか先輩が隣の部屋に住んでるなんて思いませんでしたけどねー。はあ仕方ないなあ、意気地なしな先輩のために私が代わりに告白してきましょうか」

「…………」


 そう。叫んでいるのを見られるだけならまだ良かった。いやよくはないけど。


 あの日の帰り。こいつは何故かずっと俺の後ろをついてくるのだ。きっと俺の弱みを握ろうと、家を突き止めようとつけてきているのだとばかり思っていた。そうして遠回りしながら、半ば諦め気味に家に辿り着いた俺は驚愕した。


 こいつが俺の住むアパート、しかも俺の隣の部屋の鍵をガチャリと開けたからだ。あの時の彼女の嬉しそうな顔を、俺はきっと忘れない。


「怖い顔しないでくださいよ。ほら、美味しいごはん冷めちゃいますよ、せんぱい?」


 俺が弱みを握られたのは。この見た目だけは可愛らしい悪魔みたいな後輩、七瀬小春ななせこはるだった。


はじめまして、アジのフライと申します。

完結に向けて更新頑張って参りますので、皆様に応援いただけるとすごく嬉しいです。

気になった点などあれば感想もお待ちしております〜!

宜しくお願いいたします!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ