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8.十字路の草原2

 モンスターとの戦闘を何度か挟み、俺たちは最初のゲートがある場所へと辿り着く。そこは街道の脇に広葉樹が何本か立っており、その中で一番大きな樹の根本に半透明な扉が佇んでいた。


 「思ったよりすぐにゲートがあるんですね」

 「まだ序盤エリアだし、ゲートは多めに設置されているんだと思う」

 「確かエリア中央の十字路にあるゲートを開放すると、街道沿いのゲートが全て開放されるんでしたっけ」

 「そう、でも念の為にこのゲートも開放しておこうか」

 「はい、わかりました」


 「ルインズクエストオンライン」のエリアは基本的に約50キロメートル四方の広さを持つ正方形をしていて、その東西南北の四辺中央には必ずゲートがある。その辺にあるゲートを開放すれば、隣接するエリアの同じ辺を接するゲートも開放されて移動が可能となる。

 通常、ゲートは一つ一つ開放する必要があるが、中には中央のゲートを開放すると他の幾つかのゲートが連動して開放されるエリアがある。この「十字路の草原」もその一つで、移動可能エリアを増やしやすくするために序盤はこういったエリアが多く配置されている。

 探索者であるプレイヤーは、たとえ非力な魔法使いのようなジョブであってもそれなりの速度で歩けるようにできている。それでも辺にあるゲートから中央まで辿り着くには半日程度はかかる。


 アマネがここのゲートを開放した後、また俺たちは街道を進む。

 しばらく進むと街道沿いに先程と同じような広葉樹が立ち並び始め、とても疎らな林のような景色へと変わっていった。そしてさらに進み続けると、ようやく目的地であるエリア中央の十字路へ辿り着いた。

 十字路はちょっとした広場のようになっており、その中央にモニュメントのように大きめの岩が置かれている。その岩の北側にゲートがあったので早速アマネが開放する。

 これでこのエリアに来た目的はひとまず達成した。


 「アマネさん、いい区切りだし少し休憩しようか」

 「はい」

 「場所は、折角だからここにする?」

 「はい、向こうの木陰とかどうでしょう」

 「うん、そうするか」


 俺たちは街道から見えにくい位置にある少し大きめの樹の木陰に入ると、ウインドウを操作してセーフティゾーンを作り出した。これは戦闘中ではなく、かつダンジョンなど一部のエリア以外であればどこでも使える機能で、安全で透明な小部屋を一定時間作り出せる。

 俺は続けてウインドウを操作して木陰にテーブルと椅子を用意する。ここではホームの機能を一部使うことができ、ゲームの風景をそのまま利用してくつろぐことができる。

 俺たちは椅子に腰掛けると一息ついた。


 「えーと、まずは食事にしようか」

 「はい、わたしお腹ペコペコですよ」


 俺はハンバーガーとコーヒーにしておくか。ウインドウを操作すると出来たてのハンバーガーとコーヒーがテーブルの上に現れ、ハンバーガーを手にしてかぶり付く。うん、美味い。

 チャックンも食べられるのか試したが興味を示さない。おそらくゲーム内のアイテムでないと受け付けないのだろう。何か適当なドロップ品でもあげておこう。

 アマネの方を見ると、チーズケーキを美味しそうに食べていた。

 ここは仮想世界なので栄養など気にすることなく好きなものを食べられる。そもそも栄養の話をするならば食べる必要が無いのだが、食生活を失わないために定期的に食事することが推奨されている。

 食事はホームの機能によって提供されており、どのゲームもホームの機能と連携することで食事ができる。前世にあった一般的な食事はほぼ網羅されていて種類は豊富だ。あくまでデータなので対価も必要ない。食が趣味の人には手軽に楽しめるいい機能だと思うが、珍味を求める場合は少し大変らしい。

 さてお互い食事が済んだようなので少し打ち合わせておこうか。


 「このエリアは四辺のゲートが開放できたから、次のエリアに行こうと思う。しばらくはこうして一緒に行けるエリアを増やす方針で行くつもりだけど、アマネさんはそれでいいかな?」

 「はい、わたしもそうしたいです!」

 「少し作業っぽくなるけど、それもゲームらしいかな。じゃあ早速出発するか」

 「はい。……あのカンジさん、ちょっといいですか?」

 「ん、どうしたの?」

 「良ければ、わたしのことは『アマネ』と呼んで欲しいなと思って……」

 「なるほど、わかった。じゃあ俺のことも『カンジ』と呼んでくれればいいよ」

 「いえ、わたしは『カンジさん』と呼びたいです!」

 「え、そう? うん、まあそれでいいならそれで……じゃあアマネ、出発しようか」

 「はい!」



 そうして俺たちはゲームを楽しみ、無事に次のエリアのゲートも開放することが出来た。そろそろ日が暮れるし解散する時間だ。


 「アマネ、今日はありがとう、楽しかったよ」

 「いえ、こちらこそありがとうございました、とても楽しかったです! チェインもかなり成功するようになりましたし」

 「最後の方は全く外してなかったな、かなり筋がいい」

 「カンジさんも全然外しませんよね」

 「うん、俺も昔から反射神経は良かった方だと思う。この調子なら二人だけでも結構先まで行けるかもしれないな」

 「はい!」


 実はチェインには他にも仕掛けがある。プレイヤーの感情を読み取り、楽しさや嬉しさといった感情がプラスの方向に振れていないと発動しないのだ。だからチェインが発動しているということは、アマネはちゃんと楽しんでくれている証拠といえる。それがとても嬉しい。


 「次はいつになるかなあ」

 「そうですね、わたしもちょっと予定があるのですぐには決められないです……」

 「構わないよ、俺も多少は野暮用があるしな、とはいえ俺の方が暇が多いだろうし、大丈夫そうな日を後で連絡するよ」

 「はい、できるだけ合わせますね」

 「うん、でも無理はしないようにね、他の事も大事だと思うし」

 「はい、大丈夫です!」

 「うん、ならいいけど」


 そんな感じで俺たちは解散し、互いのホームへと戻った。


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