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5.出会い

 それから何日か経った。


 「新緑の森」エリアにも慣れ、道が無いところも木々をかき分け進んでいると、小さな池がある少し開けた場所に行き着いた。

 池の水は澄んでおり、日差しが柔らかく降り注いでいる。


 「このエリアにこんな場所があったのか」


 少し休憩するかと、池の近くにあった小さめの岩に腰掛ける。

 そして何気なく池の端を眺めると、うねうねしている水色の物体が居た。


 「モンスターか!? ……いや、なんだこれ」


 武器を構え近づいてみるが襲っては来ない。どうもノンアクティブモンスター、つまりこちらから攻撃しない限りは襲ってこないモンスターのようだ。

 近づくと水色の物体の情報を載せたウインドウが見えるようになった。


   名称:イソギンスライム

   状態:ノンアクティブ

      テイム可能


 ふむ、確かによく見るとイソギンチャクの形をしている。体は透明な水色をしている。上部にイソギンチャクのような触手をうねうねさせながら、下部の胴体はぷるぷる震えている。


 「こんなモンスター、このエリアには居なかったと思うんだけどなあ」


 不思議に思いながらも、モンスター情報のテイム可能という部分に着目する。

 これはモンスターや動物をテイム、つまり捕まえて仲間として連れ歩くことができるシステムだ。可愛らしい、または格好良いモンスターを仲間にして一緒に冒険することができる。このテイムシステムはとても人気があり、多くのゲームで採用されている。

 この「ルインズクエストオンライン」でも当然のように採用されている。だが全てのモンスターをテイムすることはできず、テイム可能とされた一部のモンスターに限定される。このあたり、このゲームはテイムにそこまで力を入れていないことが分かる。


 「どうするかなあ」


 透き通るような水色の体は美しいといっても良いが、形や動きはなんというか、キモい。


 「でもまあレアっぽいし、テイムしてみるか」


 このゲームでのテイム方法は、「何かアイテムを与えてから手で撫でる」である。スライム系統は何でも食べるので、与えるアイテムも何でも良いといわれている。


 「回復薬で良いかな」


 少し質の良い中級の回復薬を取り出して、イソギンスライムの前に置く。イソギンスライムは器用に触手を動かして回復薬を掴み、体内に取り込んだ。俺はそっと手を伸ばして触手の一本を撫でる。


 ピロン


 何かシステム音がした。

ウインドウを開くと仲間モンスターの項目ができており、イソギンスライムが登録されている。成功したようだ。テイムしやすいモンスターだったのだろう。

 モンスターに名前を付ける必要があるようだ。少し考えて、「チャックン」と名付けた。


 「お前の名前はチャックンだ、今後ともよろしくな」


 チャックンは触手と胴体をぷるぷると震わせて喜んでいる。うん、何か可愛らしい、かもしれない。

 そうしてしばらくチャックンと一緒に遊んでいると、森の方から音が聞こえた。武器を手にし、音のした方へ注意を向ける。



 少しして、そこから一人の少女が現れた。



 その少女は黒いローブに帽子、それに杖という魔法使い系統の装備をしていた。身長は130cm前後だろうか。髪は美しい銀色をしており、その前髪の揺れる顔は非常に整った作りをしている。身長の低さも相まって、その表情は少し幼く見える。

 頭の上部に表示されているマーカーからプレイヤーであることが分かったので、こちらから声をかけることにした。


 「こんにちは」


 挨拶は基本である。


 「あ、はい、こんにちは、はじめまして!」


 その少女は少し慌てたふうに挨拶を返してくれる。


 「あの、それって、イソギンスライムですか?」

 「ああ、そうだよ、ついさっきテイムしたんだ」

 「テイム!?」


 少女は少し驚いたような声を出したあと、チャックンをじっと見つめた。


 「その、少し撫でてもいいですか?」

 「ああ、俺は構わないよ、チャックン、一緒に遊びたいそうだ、良いかな?」


 チャックンはぷるぷる震えながら少女の方へ移動していく。少女はチャックンの胴体部をそっと両手で抱えるようにする。


 「ぷるぷるでひんやり」


 少女の顔が上部の触手に埋もれるような形になり、触手に頬ずりをしている。チャックンも嬉しそうに触手を動かし、少女の頬や髪、首筋などの上でうねうねしている。


 「触手くすぐったいよ、かわいい、かわいい」


 少女は気持ちよさそうな顔をしながら、チャックンの胴体部や触手を撫で続けている。

 ……なんだろうか、この絵面は……。

 ……いや、ちょっとキモかわいい系の生物と少女が戯れているだけか。

 何も問題はなかった。


 俺はその微笑ましいその光景を、しばらく見守ることにした。

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