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28.異邦の未来

 あれから現実で1年が経った。俺は18歳になり、アマネは13歳になった。

 俺とアマネは婚約した。この世界では結婚しなくても子供を作ったりできるが、まあ一種の儀式、誓いのようなものだ。



 特別研究所には結局あれからも行っている。イーストエテルニタス社とは雇用契約を結んだので、労働していることになる。といっても好きな時に行けばいいし、好きなことをしていい。求められたのは、できれば月に10時間程度は活動して欲しいこと、そしてその成果物の提出だけだ。成果物は様々なゲーム世界の構築に利用されるらしい。



 この現実で1年が過ぎる間、俺の深層仮想世界での活動時間は200年を超えた。前世や宙藤(そらふじ)莞爾(かんじ)の経験を含めれば、俺の脳には250年分以上の記憶があることになり、それは今後もどんどん積み重なっていく。脳がそれほどの記憶を保持することが物理的に可能なのかは分からない。

 そもそも俺は転生者だ。転生なんてものがなぜどうやって起きたのかさっぱり分からない。

 そしてなぜこの世界が……いや、これはよそう。

 結局、俺という存在も世界そのものも分からないことだらけだ。だから考えてもしょうがないと思うことにしている。



 セイルは、深層仮想世界でさらに思考加速機能を利用できるように設定をしてくれた。俺が深層仮想世界で作った世界を、さらに1万倍に加速することができるのだ。さらに1万倍に加速した世界は、俺も観測することができない。そんな処理をするエネルギーがどこから来ているのかも分からない。そもそもとして、何の思考を加速したから世界全てが加速されているのかも分からない。だが、加速を止めると信じられないほどに世界が発展している。あらゆることが理解を超えているが、もうそれを受け入れることにしている。

 俺が作った世界にはAIを積んだ知的生物も配置していた。そんな知的生物が何万年と経過することで、もはや人と区別がつかないほどの知性を得ている。そんな世界の一瞬のデータをイーストエテルニタス社に提出するのだが、元の仮想世界だとなぜか機能縮小するらしく、その知的生物たちは高性能だがAIの範疇を出ない知性しか発揮しない。観測できないものを、観測できるところへ持っていった時の現象なのだろうと、俺は勝手に思っている。



 今回、深層仮想世界に来てから、そろそろ1年が経つ。3倍速の世界では3時間ほど経っているはずだ。そろそろ戻ろう。ここは楽しいが、アマネが居ないことだけはとても辛い。



 俺の作った世界もいつか途轍もない超文明へと発展し、そこで思考加速技術が発見されるのかもしれない。

 そして俺のようなイレギュラーな存在が現れ、そいつもまた新たな世界を作り出すのかもしれない。

 そして。



 だとするならば、俺が瞬きをする僅かな時間に、きっと多くの世界が生み出され、滅んでいる。



 俺は少し瞑目し、深層仮想世界を離れた。

 さあ、アマネが居る世界へ帰ろう。


 完


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