24.特別メッセージ2
現実に戻ると、ちゃんと新しい部屋にいた。
前の部屋よりも倍ほど広く、俺の寝ていたVR機器は部屋の中ほどにあった。部屋に備え付けてあるもので特に目新しいものはない。扉が3つあり、1つは出入り口のようで閉ざされている。自由に外へは出られないようだが、まあ今は構わない。もう1つはトイレやシャワー、風呂がある。風呂もあるのか、でも現実で風呂に入る人は少ないと思う。最後の1つを開けると、そこも広めの部屋でトレーニング施設になっていた。俺がいつもやっている水中ウォーキングやストレッチの器具がある。
「隣にトレーニングジムがあるのか、移動時間かからないな、すごい、これがセレブか」
思わずそう呟いたが、よく考えるとこの程度でセレブになるのも何か侘しい。この世界じゃ豪邸も美しい庭も要らないもんな。
トレーニングは最近ほぼ毎日やっているので使わせてもらう。そしてシャワーを浴び、食事も終えると、部屋に備え付けられていた新しいVR機器へと向かう。
新しいVR機器は、さっきまで使っていたものと比べると一回り大きい。前のは最低限の緊急医療機能があるだけだったが、これは色々な機能が付いているようだ。
例えば定期的に微弱な電流を流して、筋肉の衰えを抑える機能。これはちょっと興味あるな、今度使ってみよう。
点滴と同様に栄養を血管に注入する機能。食事を抜くよりはマシなのかな、でもちゃんと食べたほうが良いと思う。
自動的に排泄を処理する機能。……まじかよ、そこまでするのかよ。でも介護機能と考えればあって当然なのかもしれない。
体を洗浄する機能。まあそうなると、この機能は必要だよな。
一通り機能を確認したが、結局のところは健康を損なわず、いかに仮想世界に長時間居ることができるか、現実世界に居る時間を短くできるかを目的にしているのだと思う。
まあ仮に、上手くやりくりして現実で過ごす時間を1時間減らし、それを仮想世界で過ごすことに当てられたとする。それが現実時間で毎日80年積み重なると約3年ほどの長さになる。その約3年は仮想世界では約9年に伸びるのだ。そんな計算をしてしまったのなら、こういう発想になるのも分からなくもない。
何にしても相当な高待遇だ。どんな研究協力をさせられるのか不安だが、今考えてもしょうがない。
俺は新しいVR機器に横たわると、仮想世界へと赴く。
ホームには何も変化は無いようだ。特に新しいメッセージも来てない。なら寝てしまおう、また明日だな。




