19.学園3
いつの間にか戻ってきていたアマネが俺たちに声をかける。
「カンジさん、ヒミカさん、そろそろ時間なので移動してください」
俺たちはただ学園に遊びに来たわけじゃない。イベントに出演しに来たのだ。といっても大したことをするわけじゃない。ただヒミカと戦うだけのことだ。
俺とヒミカはイベント会場へと移動する。そこは石畳でできたステージで、ここで戦うらしい。別に石畳から場外に出ても負けにはならないが、まあ出ることはないだろう。
「カンジ、いよいよだよ、楽しみだね」
「そうだな、でも俺じゃヒミカとは勝負にならないと思うんだが、いいのか?」
「とにかくカンジは全力を出してくれればいいよ」
「わかった、そうするよ」
そうして、俺とヒミカの試合が始まった。
俺は思い出す。
そういえば前にもヒミカと戦ったことがあった。
あれは、宙藤莞爾たちが11歳の時だ。
さっきの少年たちのように、派手なスキルが使える試合だった。
でも宙藤莞爾は、頑なにスキルは使わずに、槍斧を振るい続けた。
かなり粘った試合だったが、ヒミカの放った派手なエフェクトを伴う攻撃を捌ききれず、宙藤莞爾は敗北した。
試合の後、ヒミカは宙藤莞爾にこう告げた。
『カンジ、次は絶対に負けない。必ずわたしが勝つからね』
宙藤莞爾は言葉を返さず、ただ去っていくヒミカを見ていた。
俺の意識が現在に戻る。
俺は、かつての宙藤莞爾に追いついただろうか。
いや、そんなことはどうでもいい、ただ槍斧を振るうだけだ。
ヒミカの攻撃は速い。俺の攻撃は全て弾き返される。だが、それに何を思うこともない。槍斧を振るえばいい。
どれだけの時間が経ったのかは分からないが、終わりは必ず来る。
攻撃の出鼻をくじかれ、俺は体勢を少し崩す。
気付けば、俺の胸元にヒミカの大剣が突きつけられていた。
「参った、ヒミカ、俺の負けだ」
そう俺が告げると、ヒミカは俺に微笑んだ。
よく見慣れているはずのヒミカの笑顔。そのはずなのに、俺はヒミカの笑顔に目を奪われていた。




