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16.友人3

タグには無いですが、ガールズラブやボーイズラブを仄めかす程度の表現があります。ご注意ください。

 今日もまたヒミカのホームに集まっていた。いつもの面子、ヒミカとユウトと俺だ。

 適当な雑談をしているさなか、思いついたようにヒミカが俺に向かって口を開く。


 「そういえばカンジさ」

 「ん?」

 「アマネちゃんと付き合ってるんだって?」


 俺は思わず口に含んでいたコーヒーを吹き出す。吹き出したコーヒーはテーブルやヒミカの方へと飛び散るが、すぐに汚れを残さずに消えてしまう。


 「カンジ、飲み物を口から吹き出すのは、あまり良くないよ?」

 「……ああ、悪かった。だがその前に、なぜアマネのことを知ってるんだ?」

 「聞いたからだよ」

 「誰に聞いたんだ?」

 「リナからだよ」

 「……なぜリナは知ってるんだ?」

 「他の友人から聞いたって言ってたよ」

 「……そうか。まあいい、確かにちょっと前からアマネと付き合っているよ」


 俺は少し落ち着きを取り戻す。俺とアマネが付き合い出したのは比較的最近だ。なんだか情報が早すぎる気もするが、隠すことではないので問題ない。

 俺は付き合っていることを肯定すると、ヒミカが少し悩むようにして聞いてくる。


 「ねえねえカンジ、付き合うってどんな感じ?」

 「そうだな、一緒に居てとても楽しいというか」

 「私はカンジやユウト一緒に居て、とても楽しいよ?」

 「うーん」


 どう説明すればいいのか。例えば前世だと、胸がドキドキするとか、相手から目が離せないとか、相手のことをいつも考えているとかだろうか。愛はもう少し複雑かもしれないが、恋であればそんな説明になるように思う。

 だがそんな前世の価値観である言葉で説明しても正しく通じるのか、俺はそんなことを考えてしまい、口籠ってしまう。

 するとヒミカがこんな告白をしてくる。


 「実はリナが私と付き合って欲しいって言ってきてるんだよねー」


 おお、リナよ、やはりお前はそういうことだったか。


 「でもね、私付き合うってよく分からなくて困っちゃって」


 なるほど。俺は少し考える。この世界の価値観であれば、付き合うということはそんなに畏まって考えるほどのものでは無いのではないか。もちろんお互いを想う心は大事だが、そんなことはヒミカだって分かっているはずだ。だから悩んでいる。

 それにリナには前に世話になったからな、少し応援するくらいいいだろう。


 「ヒミカ、付き合うと言っても、多分色々な形があるんだと思う。だから、まずは特別な親友ということで付き合ってみるのもいいんじゃないか? その関係の中で、新しい想いに気づいたり、新しい絆を作れたりするかもしれない」


 そんなことを俺は口にした。ちょっと適当なことを言ってしまったかな? そう少し不安になったが、ヒミカは俺の言葉を聞いてまた少し考え込む。


 「うん、ちょっと考えてみるよ、ありがとねカンジ」


 そうヒミカは返してくれた。まあ他人の恋路にあまり足を突っ込みすぎるべきではない。頑張れよリナ。


 この話題については一区切りかなと思い、一息ついてユウトの方に目をやる。ユウトはこの話題を穏やかな笑みを浮かべて聞いていた。

 俺の視線に気付くと、ユウトは笑みを浮かべたまま口を開く。


 「ふふ、興味深かったよ、僕はあまりそういう悩みはしないからね」


 ユウトのこの台詞は、僕は凄くモテるから相手に困らない、という意味ではない。

 ユウトはNPC党なのだ。

 NPC党とは、NPCを恋人にする人のことだ。この世界では珍しくなく、この党に属している人は多い。


 「でもまあ、子供を作ることについてはいつか悩むだろうね」


 ユウトはそう続ける。この世界でも人とNPCが子供を作る技術は無い。もちろん必ず子供を作る必要はないのだが、ユウトは上流階級に属することが問題になるのだろう。

 この世界は自然に任せていると、子供を作り育てる人が少ないため、必ず少子化に陥る。だから国などが子供を作り育てることを推奨したりするのだが、その中でも上流階級へは少し圧力が強いと聞く。当然、義務ではないし強制もされないはずだが。

 そしてユウトはヒミカの方を見て、冗談めかした口調で言う。


 「自力でどうにかするつもりだけど、どうにもならなくなったらヒミカにお願いするかもしれない」

 「うーん、子育てもピンと来ないんだよねー」


 ヒミカも特に何でもないようにそう返事をする。

 この世界にセクハラという言葉はない。いや、似た意味の言葉はあるかもしれないが、宙藤(そらふじ)莞爾(かんじ)はよく知らなかった。というか、性的なことに関する距離感が俺はまだ理解できていない。だからとても慎重になっている。

 ユウトは続けて、俺の方を見て優しく微笑みを浮かべて口を開く。


 「もしかすると、カンジにもね」

 「…………おう、まあでも、俺にはアマネがいるからな」


 思わず『おまえは何を言っているんだ』と心の中で呟いたが、口には出さずにこの世界の常識を思い返しながらそう返事をする。


 この世界ではもう、子供を作るためのパートナーとして性別を気にしない。男女間は基本として、女性同士で子供を作る技術はかなり昔からあったらしい。また数年前に男性同士でも子供を作る技術が確立されたことで、完全に壁は取り除かれた。



 そんな他愛もない雑談をしばし楽しんでいると、またヒミカが突然思い出したかのようにこんなことを言いだした。


 「そうだ、昨日アマネちゃんと話したんだけどね」

 「ちょっと待て」

 「カンジどうしたの?」

 「アマネと、会ったことがあるのか?」

 「うん、昨日会ってフレンド登録したよ」

 「……そうか、話を続けてくれ」


 俺が最近アマネに会ったのは一昨日だ。だから俺がアマネがヒミカと会ったことを知らないのはおかしくない。相変わらずヒミカの行動力はおかしい。


 「それでね、今度アマネちゃんとカンジと私で、学園に行くことなったから、そのうちアマネちゃんから連絡が来ると思うよ」


 うん、何を言っているんだおまえは。ちょっと情報が多くて整理しきれない。後でアマネによく聞いておかないと理解しきれそうにないな。俺はその場は「わかった」とだけ答えた。

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