15.アマネ2
アマネの台詞が脳に到達して、俺を一瞬フリーズさせたが、すぐさま俺の脳は凄まじい速さで回転を始める。
どんな思考の飛躍があってこの質問が出てきたのかは今は問題ではない。これは「はい」と答えても「いいえ」と答えてもダメなやつだ。では何と答えるのか。おそらく否定的な返事はダメだ。どちらかというと肯定的だが、婉曲で無難なものがいい。それしかない、はずだ。
俺は少し溜めを作りながら、先程の思考に合った言葉を捻り出す。
「そうだな、まあでも、まだ子供を作るのは早いと思うんだよな」
……あれ? これで返事合ってた? 否定はしてないはずだが、うん?
アマネはきょとんとした表情で俺の返事を聞き、少しして口を開く。
「そうですね、わたしもちょっと早いと思います」
よし、会話は繋がってるな、多分大丈夫なはずだ、よな?
ええと、何か言わないと。
「それに俺たちはまだ付き合ったりとかしてるわけじゃないしな」
「! そ、そうですね、まだ、付き合うとかじゃないですね……」
アマネは少し目を開くと、急に照れたように顔を赤らめ、困ったような表情をする。
……あれ? またおかしくなったぞ。というか、子作りの話は平然としてたのに付き合うという話は照れるのか。ちょっとよく分からない。
だがこの流れはあれだな、ちょっと気を引き締める場面か。この世界では男だからどう、女だからどうという考え方は非常に薄くなっている。だからこれは、俺の我がままな感情なのだろう。
俺はアマネの肩にそっと手を置く。「カンジさん?」とアマネは俺の顔を見上げる。
「ちょっと唐突かもしれないが、俺はアマネと一緒にいるととても楽しい。アマネのことが好きだ。付き合って恋人になってほしい」
「……は、はい、ぜひ、お願いします!」
アマネは少し呆然としてから、すぐにそう返事をしてくれた。そして「えへへ」と嬉しそうに照れ笑いをする。そして照れで赤らめた顔のまま、俺の方を見つめて言う。
「……わたしも、カンジさんがとても好きです」
そしてふやっと微笑んだ後、恥ずかしくなったのか俯いてしまう。
……あれ? なんだかアマネが凄く可愛い。いや、もちろん前からとても可愛かった。だがそんな尋常なものではなく、とてつもなく可愛い。可愛い。可愛い。
えっと、キスとかして良かったっけ? 確か互いの同意があればキスはできたはず。だがいきなりしても良いものだろうか。くっ、どうすればいいんだ。
いや、ただ素直になればいいか。できる範囲でこの想いをアマネに伝えよう。俺はアマネの背に両手を回し、そっと抱きしめる。強すぎないように、でもしっかりと。アマネもそんな俺の体に手を回し、体重を預けるように寄りかかってくる。
しばらくそうしてから、俺は膝を曲げて顔をアマネと同じくらいの高さまで近づける。ゆっくりと顔を近づけて、口付けをする。
こうして、俺とアマネは恋人となった。




