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ラプトル種

「行くぞ……『召喚』!」


 俺は、縄張りを作るにあたって新たな使い魔を召喚しようとしていた。理由はシンプル。戦闘の全てをティレスに任せきりではいけないと考えたからだ。


 疲労、怪我、どれだけ強力でも数の利で負ける可能性……様々な要因はあったが、何よりレベルアップしたとあっては試してみたいのが人情というもの。


 俺は『召喚士』であって『テイマー』じゃない。既にこの世界に生まれていたティレスと契約したのは召喚士のやることじゃない。だから、本当の意味での召喚はこれが初めてなのだ。


 すると、また青い光が右手の紋章から放たれて……十匹ほどの小型の恐竜が生まれた。


 ティラノサウルスよりはずっと小さくて細く、しかし獰猛そうな気配だけは同じ。茶色の肌をした背丈で言えば俺とそう変わらないが……鋭い鉤爪や牙を見れば決して敵わないだろう事を思い知る。


「固体名ヴェロラプトル。ラプトル族ですね。俊敏な動きをして群れでの狩りを得意とする、厄介な恐竜です」

「確かにこの脚の大きな爪はどんな土地でも滑らないだろうな……いいじゃないか、今最も必要とされる戦力だ」


 ティレスは恐竜について詳しいようで、俺が召喚した恐竜……ラプトルについてもすぐに解説してくれた。


 機動力。それは大型のティレスや所詮人間でしかない俺には持ち得ない力。


「ラプトルの皆、俺達は今拠点となる縄張りを作ろうとしている。君達や俺が十分に生活できるだけの土地が必要なんだ。どうか、力を貸してくれ」


 ――キュル……!


 返事は甲高い鳴き声。十匹の恐竜が一様に俺を見る様は、圧倒されてしまうな……。


 すると、そのうち一匹だけ赤い肌をしたラプトルが歩み出て……ティレスのように姿を人型に変えた。


 長く伸ばされウェーブのかかった赤髪、強気そうな整った顔立ち、そして身長は俺の胸辺りまでだった。


「ヴェロラプトルの代表として挨拶させてもらうわ……あたしの名前も決めてくれる?」

「あ、ああ……そうだね。それじゃあ、君はラピスだ。しかし、恐竜ってものは皆美少女化するものなのか?」

「あんたがそう望んだんでしょ。あたし達は主のためになるなら、持てる力を尽くして何でもやる。縄張り作りっていうけど……あたし達は野ざらしでも構わないわよ。言葉は正確に伝えなさい、あんたの住む家が欲しいってことでしょ?」


 ううん、それはそうなんだけど……ティレスとは大分タイプが違うな。


 そう思っていると、ふと隣から以上な圧力を感じた。見てみれば、ティレスが僅かに微笑んだまま諭すようにラピスに語りかけていた。


「ラピス? 私達のご主人様に、その口の利き方はないのではないのですか?」

「ひっ……! ティ、ティラノサウルス……。だ、だけどっ! してほしい事は言われなきゃ分からないじゃない。その……力になりたいと思ってるのは、本当なのよ?」

「それは結構な事です。ご主人様が構わないなら良いですが……もし貶めるような真似をすれば、容赦はしませんよ?」

「わ、分かってるわよぅ……だから、ね? 仲良くしてちょうだい……?」


 どうやら、明確な力関係はここで決まったようだ。話を戻して……と俺は続ける。


「俺の家はもちろん欲しい。だけど、君達にも住処を与えたいんだ。ちなみに、君以外のラプトルは人型を取れないのかい?」

「ううん、あんたが望めば出来るわ。だけど、急に十人もの顔と名前は覚えられないでしょ。それに、あたし達はあくまで群れが強みなの。なら、いっそ全員をラプトルという一勢力として考えてもらった方が都合がいいのよ」


 なるほど、一理あるな。それに、確かにこれからもどんどん増え続けるであろう使い魔全員を覚えるのは時間をかけなきゃいけない。


「なら、やっぱり全員分の家は欲しいな。せっかく人間としても活動できるんだ。ふかふかのベッドで眠る喜びも知って欲しい。『使い魔保管室』に戻してもいいんだけど……それは今じゃない。ただでさえ人手が足りないからね」

「……それは助かるわ。召喚される前って、寝てるのか起きてるのか分からない状態であんまり居心地が良いとは言えないのよね」


 そうなのか。いや、まあ確かに……体の活動も止まってただ召喚を待つだけの空間らしいし、長く居たい場所じゃないだろう。


「でも、人の住処の作り方なんて知らないわよ?」

「そこは俺が教える。人型を取れるんだったら、繊細な大工仕事もできるだろ。それも、恐竜のパワーを以てしてね……幸い、ここは人の立ち入らない山だ。素材だけは一杯あるだろう」


 こうして、俺は新たな仲間を迎え入れていよいよ縄張り作りに取りかかるのだった。そのための力も手に入れてある。


 そう……『支援の初歩』だ。ただでさえ強力な恐竜達に、主たる俺が力を貸したらどうなるか……今から楽しみで仕方ない。


 ここまで読んでいただきありがとうございます!


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