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幼馴染はヤンデレにもツンデレにもなれない。

作者: 遥彼方

ーーー最近、幼馴染の視線が怖い。

俺が別の女の子と話していると滅多刺しにしそうなくらいの殺気を醸し出してくるし、俺との会話中何故か思考が(俺に対する)マイナス方面へ飛んでいくし、ふと幼馴染の家で居眠りすると必ず両手両足縛られているし…

 

「あれが、ヤンデレってやつなのかなぁ…」

 

正直デレられた記憶は無い。

彼女が俺に惚れてるなんてイメージつかないし、そもそも彼女は陰キャの俺とは違い陽の類の人間だ。俺と生きる世界が違うし、幼馴染がヤンデレだって言われても何処か違うだろって言ってる自分がいる

少し病んでる人って言われれば「確かに…」と答えるだろうがね。

このおかしい感じはなんなのだろうか…

 

「ちょっと、拓也…邪魔なんだけど…」

 

ふと、横から声が聞こえてくる。みると例の幼馴染"沢田響子"が何か重い荷物をもって立っていた。ここは学校の倉庫に通じる唯一の一本道、この時間帯は基本誰も来ないから俺のマイベストプレイスとしていたが、しかしこの道かなり狭い、人一人分入るのがやっとだ。

 

「あ、ああ、すまん。」

「まったく、こんな邪魔な場所で…

拓也は少し周りに気を使った方が良いわね。」

 

なんてほくそ笑みながら俺が開けた道を悠々と歩いていく。その姿はまるで百合の花の様で俺がその横に立てる人間とは全く思えなかった。

 

「ねぇ、拓也…」

 

ふと、響子は足を止める。

 

「…ん、なんだ?」

「拓也は…さ、好きな人とか居るの…?」

「へ?なんでそんな事…」

「いるかいないか聞いてるの」

「んな、横暴な…」

 

好きな人…?

なんなんだろうか…、まぁ、居るかどうかと言ったら…

 

「…居るなぁ、」

「………っ、ど、どんな子?」

 

響子が少し息を詰まらせたのに気づいた。

少しからかってやろうか、

 

「例えば…………お前とか?」

 

直球も直球、ド直球でそう言う。

確かに好きな人ではある。恋愛的にも好きかと言われれば好きだ。だが今の意味合いは友人としての好きである。うん自己解釈素晴らしいね。

さて、幼馴染くん、俺の渾身のボケに対してどう反応するのか…!!

 

「そう」

 

俺の渾身のボケにそれだけですか…自信無くすわぁ、

 

「…まぁ当たり前よね。こんな美少女捕まえて置いて他の女に"浮気"とかしないわよね、普通。」

 

アーハイソウデスネ、

自信満々とそう言う彼女に俺は棒読みでそう返す。まぁ、心の中でだけど、ちなみに浮気って言う言葉は聞き流す事にした。

 

「そういえばさ、拓也…今日の午前10時51分57秒…私以外の女の消しゴム拾ったよね…?」

「え…?あ〜、時間覚えてないが…たしかに拾ったかもなぁ、」

「それ…、私知らなかったよ、」

「まぁ、言ってないからなぁ、」

 

すると彼女は俺を睨みつける。

 

「…それ、浮気じゃない?」

 

眼光強いって…

 

「ウワキジャナイ、ウワキジャナイ」

 

そもそも俺たち付き合ってない。

 

「だって、私の了承も得ずに拾ったんだよ?浮気じゃん…」

「えぇ〜、拾っただけだよ、お前そんなに"俺の事好きなのかよ"」

 

俺がそう言った瞬間、「ボンっ!」と音が鳴り、彼女の顔が真っ赤になった。

 

「すすすすすすす、好きな訳じゃない!!」

 

「え…嫌いなの!?」

 

「き、嫌いなわけないじゃない!!」

 

「じゃあ!どっちなの!!」

 

「そりゃあ!!sっ………」

 

そこで彼女は止めた。

 

 

「な、何言わせんのよ!!!!」

 

 

 

「ぶふぇっ!!??」

 

 

平手打ちされました、まる

 

 

☆ーー☆ーー☆ーー☆ーー☆ーー☆ーー☆ーー☆ーー☆ーー☆

 

 

私の幼馴染は少し卑怯だ。

 

夕暮れ時、顔を隠しながらそう思う。多分私は彼…和泉拓也の事を誰よりも知っている。だけどそれと同時に彼は私の事を誰よりも知っているのだろう。私のして欲しい事をなんでもわかってしまうのだ。なんかズルいなぁ…って思ってしまう。困ってたら誰より先に気付いてくれるし、誰より私を一番に考えてくれる。そんな彼を私は…

 

「どーしたの?響子…?」

「え、いや、なんかズルいなぁって…」

「何よずるいって」

 

笑いながら友達の"シズク"はそう聞く。

 

「もしかしてまた、例の彼の話?」

「…うん、まぁそうなんだけどね…」

「いい加減教えてよぉ、私も応援したいんだからさ…」

「うん…ごめん、」

 

まだ周りには拓也の話はしていない。私だって今の立場くらいはわかっている。私は美少女だ。これだけは胸を張って言える。美少女でヒロインなのだ。クラスにとって注目の的であり、目標の女の子…

だけど私とて美貌に胡座をかいてこんな自己評価をしている訳じゃない。私が今まで拓也を見返す為にやってきた事は無駄じゃないって信じてるからこその自己評価なのだ。だから胸を張って私は美少女だと言えるのだ。私は美少女…それだけは変えられない。

しかし、彼…拓也の自己評価は低い…だから自分の身嗜みにも自信が入っていないし、陰気な雰囲気が彼の周りを漂っている。

そんな子が私の好きな人だなんて知られたら「あんな不細工が…」なんて言われるのは目に見えてる。それでもし拓也がいなくなったりなんかしたら…

 

…そんなの嫌だ。

 

彼が居ない人生なんていらない、

 

「まぁ、いいけどね…だけど早く好きな人公開しないと大変だよぉ、」

「え?なんで?」

「だってあんた、好きな人が居るってだけ言って告白断ってるじゃん、その好きな人は俺だ、って勘違いしてる輩が増えてきてるの知ってる?」

「…知らない。むしろ知りたくなかった。」

「そりゃあそうよ。例えばあの席…」

 

シズクは私の後ろビシッと指を指す。

指の方を向くと眼鏡をかけた背の小さそうな子がいる。たしか消しゴムを拾ってあげた事があったっけ…名前は…田中くんだっけな、

 

「…田中くん?」

「山田だよ。あいつ、あんたと付き合ってるって自慢してるらしいよ。」

「…何それ…?一度しか喋ったことないよ?」

「それでも付き合ってるらしいよ。」

「なんでさ…」

「知らないよ。」

 

そう言いつつ、シズクは指を片付ける。

 

「あんた、まじで気を付けなよ。自分の身は自分で守んなきゃ、いざと言う時に助けにきてくれる白馬の王子様なんざいないんだからさ…」

「…うん、わかった。」

 

そう言い終わるとシズクはニタァと笑う

 

「な、何よ?」

「いいやぁ、別にぃ?よく考えたら響子には白馬の王子様がいるんだもんねぇ、」

「べ、そんな訳ないっ、あ、あいつは白馬なんかよりユニコーンの方が似合う…」

「ユニコーンとはファンタジーですな」

「…そうじゃなくて…角割れの方…」

「あ、ファンタジーじゃなくてSFでしたか」


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