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神様の予言書  作者: 語部マサユキ
最悪を盗んだ盗賊
378/389

盗まれた相棒《たからもの》

私事ですが5月1日より書籍発売中です!!

『魔法×科学の最強マシンで、姫も異世界も俺が救う!』

 宇宙戦争の最終局面で愛機ごと爆死したハズのエースの主人公が、愛機と共に異世界に飛ばされて戦うメカ、異世界、そして美少女の物語です!

 感想はご指摘、酷評でも大歓迎です!! 宜しければご一読よろしくお願いいたします!!

 カチーナが対面した『予言書』の自分とは随分とかけ離れた、何とも後味の悪い葬送になっちまったもんだ。

 しかし何というかコイツ、野盗ギラルは俺への嫌がらせとしては最上級に効果的ではあったが、幾ら膨大な邪気を俺への憎悪で扱えたとしても……やはり俺を殺すには色々と足りなかった。

 そんな事をアルテミアが分かっていなかったとはとても思えず、ヤツを自分のサポートとして同時に襲い掛かってこなかった事を考えれば目的は……時間稼ぎ!?

 そう思い立って慌てて俺はカチーナの方に視線を向けるが……飛び込んで来た光景は意外なモノであった。


「カア……!?」

「……え?」


 それは恐怖と戸惑いを隠せない表情のままカトラスを突き出すカチーナと、そのカトラスを真正面から、完全に心臓を貫かれているアルテミアの姿だった。


パキイイイイイイイイ……


 そしてアルテミアの全身に陶器のようにヒビが入ったかと思うと、そのまま始め飛ぶように砕け散り纏っていた黒い大聖女の法衣だけがその場に残される。

 こんなの人間の、生物の死に方じゃない……目の前の光景が俺には倒したとはとても思えずどういう状況なのか戸惑ってしまうが、答えは刃のない『エレメンタルブレード』がくれた。


『解説、限界を超えて邪気を操った生者が死する時、邪気に己の全てを食い尽くされ肉体は空になり砕け散る。喩え千年邪気を操って来た古代亜人種とて例外ではない』

「……え? ってことは……んだの? アルテミアは?」

『肯定、古代亜人種アルテミアと名乗る個体は消滅しました』

「うそ……だろ?」


 呆気ない……一言で言えばそれに尽きる。

 ハッキリいてアルテミアの実力はホロウ団長や大聖女ジャンダルムに匹敵、もしくはそれ以上と換算していたのだから最低でも二人がかりでも怪しいかと思っていたのに、まさか俺が前哨戦っぽい『予言書』の自分と対決していた間に相棒がたった一人で倒してしまうとは。

 しかし俺以上に信じられないのはカチーナ本人の様で、アルテミアが砕け散った後になったもカトラスを突き出したまま茫然としていた。


「すげえな……まさか一人であの化け物を倒しちまうとは思いもしなかったけど、さすがはカチーナ、元王国軍にしてグールデッドの二つ名は伊達じゃね~ってか?」

「いや、何と言うかあまりに呆気なさすぎないか? 私はこれがアルテミアの策略の一端なのではないかと疑っているが……」


 俺は多少おどけてそう言うと、ようやくカチーナは納得のいかない表情のままカトラスを鞘に納めた。

 自分が倒したという確信が無いらしいが、正直気持ちは分かる。

『エレメンタルブレード』がアルテミアの肉体の消滅を明言しているとは言え、どうしても“倒した、ヤッター!”と喜べない居心地の悪さがあるというか……。


「なあ、周囲の邪気がどこかに集まっているとか、それか寄り集まって俺達に襲い掛かろうとしているとか、そう言うのは無いの?」

『否定、周囲にはアルテミアが集め、放出した邪気が大量に漂っているが、それも『死霊使い』の支配下にあるワケでなくただこの場にあるのみ。時間はかかるがその内自然に消滅して行くであろう』


 この中で邪気を感知できるのは『エレメンタルブレード』のみ、俺は柄だけの剣に聞いてみると、剣はやはり否定して来る。

 邪気など元々はどこに手もある負の感情の力、悪用する誰かがいなければ空気と変わらないし、そもそも邪気を扱えず見えもしない俺達には何も出来ない。


「という事は……終わったと見なしてよろしいのでしょうか?」

「……そう、なのかな?」


 王都全土を巻き込んだ大事件であるものの、簡単に終わるのであればそれに越した事はない。


「……何やら納得の行かない感じはありますが、ギラル……一度地上に戻りませんか? みんなの安否も気がかりですし」

「ん……まあ確かにな。このままこんなところにいても……」


 地上に戻るカチーナの提案に同意し、俺はそのままここに来た時使った通路先の魔法陣に戻ろうと思って……カチーナに一つ違和感を感じる。

 それは何の事はない、いつも彼女が付けている猫の髪飾りが見当たらない事だった。

 それは無くしたという事では無く、さっきの戦闘中に落ちたのだろうか、彼女の足元に転がっていた。

 落ちている事を伝えようと思ったのだが、足にコツンと当たったのか彼女は気が付き視線を下に向ける。

 しかし彼女は猫の髪飾りを見たハズなのに、拾おうともせずに視線を再び前に戻した。

 ……あれ? 気が付かなかったのか?

 俺はその彼女の反応が地味にショックだった。

 あの髪飾りは俺が初めて彼女にあげた贈り物であり、元々可愛いモノが大好きなのに家庭環境の影響で手にする事が出来なかった彼女が初めて手にした、毎日付けるほど彼女のお気に入りだったハズなのに。

 興味が無くなったのか?

 そう思いつつも、こんな場所に放置して行くのも気分が良くないと、俺は髪飾りを拾おうとして視線を下げる。


『危険! 背後から!!』

「……え!?」


ガキン……突然の『エレメンタルブレード』の警告に、俺は反射的にダガーを反射的に、逆手に引き抜くと、そのまま後方からの斬撃を受けていた。

 躊躇いなく振り下ろされた“カトラス”の一撃を……。


「え?」

「…………残念。内側なら『エレメンタルブレード』の感知も誤魔化せると思っていたのですが、単純な戦闘技術も高いようですね」


 その声は間違いなくよく知っている声だ。

 一番頼りになり、一番よく知っていて、そして一番好きな人の声。

 だと言うのに、そんな人の声だというのに全く違うモノに聞こえてしまう。

 背中に冷たいモノが流れる……。

 どうしてもその事実を認めるのが怖くて、俺は恐る恐る視線を向けて……その現実に絶望しそうになる。

 厳しくもいつも凛とした表情の彼女の顔が、仲間には砕けた表情を見せてくれる彼女の顔が、時に頬を染めて恥ずかしがる愛しい顔が……歪んだ顔になっていたのだ。

 それはまるで『予言書』で虐殺と非道を繰り返して来た、世の全てを恨み憎悪し壊す事を生きがいと言っていた、最も極悪人であった頃の『聖騎士カチーナ』に匹敵するほど禍々しい笑顔で……。


「私の、私たちの千年に及ぶ計画を盗み取ったのです。相応に私も貴方が最も大事な宝物を盗ませていただきました」

「て、てめえ……まさか、アルテミア!?」


 慌てて距離を取り俺がその名を言い当てた途端にカチーナの全身から黒い邪気があふれ出て、彼女の全身を包み込んでいく。

 そして現れたのは『予言書』での返り血で赤黒く染まった物ではないものの、アレと形状は同じである真っ黒い邪気を感じさせる聖騎士のフルプレートアーマー。

 その姿を彼女にさせるというのは、カチーナだけでなく自ら消えて行った『聖騎士カチーナ・ファークス』に対しても冒涜であるというのに。


「こ……このクズが!!」

「私の全てを否定し破壊したお前等だけが幸せになろうなど……認めるものか。私にならなかった者と私を盗まなかった者……互いに最も傷付けたくない者を傷つける絶望を共に味わうが良い!!」


 そう言って虚空から黒い大鎌を生み出したアルテミアは、実に嫌な顔で笑う。

 俺の最も大切な人の顔を使って、一番嫌な笑い方をさせて……それは間違いなく野盗ギラルなど比較にならない程、俺にとって最高に嫌な事であり……正直初めてアルテミアという個人に対して殺意を持った瞬間だった。





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― 新着の感想 ―
依存系ヤンデレみたいになっちゃってるなあ、アルテミア
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