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神様の予言書  作者: 語部マサユキ
聖騎士に引き裂かれた賢者と恋人

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閑話 影響されやすいお年頃

『な、なぜこいつ等がここに!?』


 飛翔の魔法を使って港町から戻って来たグレゴリール子爵家ジャイロは、お忍びで敵対関係にあるロコモティ伯爵領に出向いていた事を知り合いに見つからないように、地元でも由緒あると言われつつも、子供たちにはハッキリと忌み地と認識されている遺跡『英雄の石碑』に降り立ったのだが……そこにいたのは昨日自分を完膚なきまでに叩きのめした冒険者、盗賊の男とその仲間たち。

 しかしまだ見つかってはいないとは言え、コレから身を隠すのはかえって不自然と判断した彼は意を決してこちらから声をかけた。

「どうもご丁寧に……地元の方ですか?」

「も、申し遅れました。私はこの遺跡を含むここら一帯を領地にするグレゴリール家の嫡男、ジャイロ・グレゴリールと申します。以後お見知りおきを……」


 そして彼らの受け答えは自分と完全に初対面であるという反応で……それすらも擬態であると疑わない彼は自分の正体が『シャイナス』である事が知られていないと安堵する。

 無論、そんな都合の良い話は無いのだが……。


「あ、貴族様っスか? コイツは失礼を……俺、いや私は王都を中心に冒険者稼業やってる盗賊のギラルってもんです」

「……剣士のカチーナです」

「ちょっと特殊な杖を使いますが、正真正銘魔導師のリリーと申します」


 その三人は初対面でありながら受け答えは不快感を抱かせない程の至極真っ当。

 礼儀正しいとするなら剣士の女性が一番様になっているが、それでも昨日ギラルから手荒い洗礼を受けたジャイロにとって、彼らのそんな対応は意外だった。


『……冒険者は野蛮な輩しかいない。特に魔力も持たない奴らは……そう“言われて”来たのに』


 ジャイロはそもそも冒険者を、特に魔力を持たない戦闘職の全てを見下していた。

 精々が魔導師が魔法を放つまでの引き付け役、前座程度の存在。

 魔力が高く攻撃魔法も防御魔法もこなすジャイロは学園では剣技でも魔術でも負ける事無く、それ故に増長してその傲慢な考えを加速させていたのだ。

 しかし目の前の盗賊ギラルは魔法を扱えるだけの魔力すら無く、しかも感知すらしていないというのに、経験則だけで自分の魔力運用を見切り、体術のみで完膚なきまでに圧倒したのだ。

 それは魔力こそ最高の力と思っていた彼にとって世界が崩れるほどの出来事であり、それを実行して見せたギラルという理解不能なモノに対して恐怖を覚えるのは必然だった。

 

「この石碑が英雄を称えたモノっていうのは……どういう事なんです? 随分と昔からあるみたいだけど」

「……聞いてどうするのですか? さっきも言いましたが金になるような言い伝えも何もありませんよ?」


 問い掛けるギラルに、ジャイロは睨む事は何とか耐えたのだが、初対面ではあり得ないような棘のある声色になってしまう。

 だけどギラルは、本当に何でもない事のように石碑を眺めつつ言った。


「ま、確かに金になる情報だったら嬉しいけどな。しいて言うなら興味本位だな」

「興味? 金にもならない昔の遺跡がそんなに面白いのですか?」

「はは……俺もむかし、学問教えてくれた人に似たような事を言った事があったな。こんな昔の事を聞いて何になるんだ? って。そしたらその人はある言葉を教えてくれたのさ。『故きを温めて新しきを知る』ってよ」

「?」


 それはジャイロにとって聞いた事のない言葉。

 しかしどうしても無視するべきではないと心から感じる不思議な言葉だった。

 何故なのかは分からない、しかしジャイロはその言葉の意味を知らなくてはならないと本能的に感じて、思わず聞き返した。


「どういう、意味なんですか?」

「……その人が言うには、昔の出来事、昔の人の言葉、教訓、体験なんかを知る事で新しい発想、考え方を知り、引いては新たな未来を作り出そう、みたいな事らしいぜ? まあ、その人自身、その言葉は昔の人の言葉だから定かじゃねーけどって言ってたけどな」

「昔を知る事で……新たな未来?」

「平たく言えば先人、先に経験した人から学べって事か? 例えりゃ飢饉で戦争が起こった過去があるなら、飢饉の予兆を残しておくから見逃すな~的な? ……この解釈があってるか分からんけど」

「!?」


 何がおかしいのか自分で言った言葉に自分で笑うギラルだったが、その言葉を聞いたジャイロの心中は穏やかでは無かった。

 チラリと、しっかりと見据えたのは実に数年ぶりになる地元の遺跡は実家の伝承でも『太古の英雄を称えた遺跡』とされていたのに、今は地元でも忌み地とされ、苔むしている。

 その原因はグレゴリール家、ロコモティ家の間で起こった埋めようのない過去が原因なのだが……ジャイロはその事を無意識に避けていた事に気が付かされる。


『自分の目的のためには絶対に避けて通れない事なのは分かっていたハズなのに!』


 そう思った瞬間、ジャイロの中で何かが吹っ切れた気がした。

 何故か今まで自分が目を逸らして来た何か、自分達の先祖が、そしてあの娘の先祖が……一体何をして、どのようにこのような敵対関係に至ってしまったのか?


「……この石碑は千年前にこの地を支配していた魔族と精霊神を開放せんと戦いを挑んだ人間たちの戦いの中、正しき心に目覚めた勇気ある魔族を称えた物なのです。『彼の者魔族にして魔族に非ず。精霊神の御心に触れ、万の軍勢率いて魔族を強襲、人の軍との挟撃に成功。邪悪な種の悉くに裁きの鉄槌を下した』って記されていたらしいです。


 今までそれを“知ろうとすらしていなかった事”を不思議に思いつつ……ジャイロは昨日ぶちのめされた恨みも恐怖も忘れ、礼のつもりで話し始めた。






ここまでお読みいただき誠にありがとうございます。

お手数をおかけしますが面白いと思って頂けたら感想評価何卒宜しくお願い致します。

イイネの方もぜひ!


勢いだけで書いてしまいました(;^ω^)

『パーティーで王子が絶対に言ってはいけない一言』

https://ncode.syosetu.com/n0993ht/

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― 新着の感想 ―
[一言]  ギラルは『フラグ立て』を使った! 『ジャイロフラグ』が立った!  ジャイロのSAN値が上がった!  ジャイロは少し素直になった!  効果は抜群だ!!!\(^o^)/
[一言] うん、よくある話だよね 精霊神の正体を知ってなければな
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