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2020 東京オリンピック開会式(7月24日)

ついにその日がやってきた。

東京オリンピック開会式。


1964年

日本に初めてオリンピックがやってきた。先人達がどれ程の思いを持ち、どれ程の熱意を注ぎ、どれ程の行動を起こして、東京での開催に漕ぎ着けた事か。


あれから56年が経ち、先人達の思いが今を生きる人達に繋がり、沢山の思いと、沢山の熱意と、沢山の行動を持って、再び東京でオリンピックが開催される。


世界中のトップアスリートが一堂に集結する。

ここの舞台に立つ為に、彼らはどれ程のものをここに注ぎ込んできたのだろう。選手だけではなく、オリンピック・パラリンピックに関わる総ての人達の力が集結する場所。


近代オリンピックは1896年に始まった世界平和を究極の目的としたスポーツの祭典。

オリンピック発祥の地ギリシャのアテネから日本に運ばれて、繋がれ繋がれてきた聖火が聖火台に点火された時、会場は「わーっ!」とも「ごーっ!」とも形容し難い物凄い音と振動に包まれた。

そこにいる多勢の人々が涙を流していた。


その開会式の会場に凛が来ていた。凛は全身で東京2020を感じていた。

このオリンピックを史也が走る。パラリンピックを勝と唯が走る。

彼らのこれまでの道のりひとつひとつの事が鮮明に浮かんできて涙が止まらなかった。


凛が座っていた場所のすぐ横は、たまたま招待席になっていたようだった。

どうやら7月24日生まれの人達が抽選で10名程招待されているらしい。その中にひとり車椅子に乗っている若者がいた。凛はちょっと唯に似ているなと思って気になっていた。


その若者は隣に座っていた男の子とこんな会話をしていたのだった。


若者「君も7月24日生まれなの?今日で何歳?」

男の子「6歳になりました。お兄さんは?」

若者「オレも6歳だよ。」

男の子「うそだー。そんなわけないじゃん。」

若者「オレは6年前の今日、事故にあって生まれ変わったんだよ。

それまでは歩けて走れて、普通に何でも出来たけど、君が産まれたその日、君が泣く事しか出来なかったように、オレも泣く事しか出来なくなっちゃったんだよ。

オレの本当の誕生日は今日じゃないんだけど、7月24日は2度目の誕生日だから、招待してもらえたんだ。」

男の子「そっか。お兄さん、ハッピーバースデー!」

若者「ありがとう。一緒にハッピーバースデー!だね。君、何かスポーツやってるの?」

男の子「少年野球のピッチャーやっています。」

若者「まじか?オレもやってたよ。怪我する前は野球のピッチャーやってたんだ。野球、頑張ってな。」

若者は嬉しそうだった。そして続けた。

「君に伝えたい事があるんだ。

いや、キミだけじゃなくて、世界中の人達に。」


その時、一筋の風が会場を吹き抜け風向きが変わった。

その風に乗って会場に鳴り響いていた音楽が一層大きくなり、青年の声がかき消された。


「えっ?聞こえないよ。」と男の子が言った。


青年の声は風に乗って宙を舞った。


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