表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
26/34

一緒にパラを目指す?

全日本選手権で唯のチームは前年の6位から3位に躍進。唯は1回戦の後試合に出る事は無く「オレはすごいチームに入っているんだな」と感じながらも、何か他人事のようであまり嬉しさを感じる事が出来ないでいた。


一週間程経って勝からLINEが入った。

「大会お疲れ!一度、センターに行って唯のラグビーの練習観たいと思ってるんだけど、見学出来るかな?練習後とかにオレもちょっと唯とやらせて貰ったり出来るかな?」

返信

「え?まあ大丈夫ですけど。どうしたんですか?都合のいい時連絡下さい」


都合を合わせて勝は直ぐにやってきた。練習を観終えた勝はその後ラグ車を借りて、唯に教えて貰いながらラグビーの動きを色々とやってみた。

「オレの障害でも選手にはなれるのかな?」と勝は唯に聞いた。

「勝さん指2本無いし、いけるでしょ。」


勝はラグ車を進ませながら言った。

「オレ、陸上じゃなくて、ラグビーでお前と一緒にパラ目指す事にした。」

唯は驚いた。

「何言ってんですか?勝さん。冗談キツイな。」

勝は唯の隣に来て真剣に話を始めた。

「なあ、唯。オレ本気なんだ。一緒にやらないか?」

「だって勝さん、そんな事許されないでしょ?企業の所属どうするんですか。それにオレ、パラ目指してるわけじゃないし。」

「何とかする。唯さえその気になってくれたら。自分は一生の後悔したくないからここに掛けたい。

一時的な感情じゃないんだ。ずっとずっと考えてきた事なんだ。唯、考えてみてくれないか?」

「はぁ〜、ま〜」

と唯は流したが、何だかワクワクする気持ちを押し殺していた。


その日のうちに勝は家に帰り、一人になってから唯は色々考えた。


「和也さんもそうだったけど、勝さんもおかしな人だな。

オレの為?それとも自分自身の為?

他人の為にそんな大きな決断が出来るのだろうか?

他人の為じゃなくて、一緒に、か?

オレを救いたい?それがあの人達のやりたい事?


インカレの時、オレが抱いていた感情と同じようなものかな?

あの時は自分自身に対する欲が全く無かったけれど、和也さんと勝さんの為に勝さんを勝たせたいと思って走っていた。

それが自分のやりたい事だった。

そんな感じなのかな。


勝さんの本気。はっきり言って羨ましい。オレももう一度何か本気でやってみたいな。ワクワクするのはきっとその本気への憧れなのかな。

けど、この言う事を聞いてくれない身体で本気になるのは辛いんだよな。本気になろうとすればする程、出来ない事が辛くなってしまう。オレはそこを乗り越えていけるのかな?


けどなー。

出来る出来ないじゃなくて、何をやりたいかを大切にしなきゃだな。

オレは一度死んでるんだ。

行かされた人生を悔いなく生きなきゃ、バチが当たるよな。

勝さんだって一緒だ。

自分がやりたい事を素直にやろうとしている。

悪い事じゃない。

オレは、これから生きて行く中で、勿論人の助けは必要だけど、ほぼほぼ介助無しで自分の生活は出来るようになってきた。

やってみてもいいのかな。

4年に1度のパラリンピックだぜ。

しかも東京だぜ。

どう頑張っても、東京オリンピック、ロードでは出場出来なくなっちゃったけど、本気でパラ目指してみるか!


何だかワクワクする。

きっとそれが今のオレの本当にやりたい事。

和也さんもきっと喜んでくれるだろう。

父ちゃんも母ちゃんも。」


唯のこういう決断はいつも早い。

これ!と思ったらアレコレ悩まずに実行だ。

その日のうちに唯の気持ちは固まったが、一応一晩悩んだフリをして、翌朝勝にLINEで自分の気持ちを告げた。


二人の気持ちだけでこれまでの環境をそう簡単に変える事は出来なかったが、二人の何としてでもという気持ちで次から次へと行動に移していった。


年が明けて少し経った頃には、勝はセンターの近くに引っ越してきて、センターで出来る仕事を少し貰いながら、トレーニングに励める環境を作った。

唯はセンター内の職業リハビリで受講しながら、同じくトレーニングに励める環境を作った。


東京パラは、あと1年半に迫っていたが、半年後に日本代表入りという高い目標を掲げて2人はトレーニングを開始した。


障害の程度が異なる選手達が入り混じって行われるこの競技では、障害が重いローポインターがハイポインターの為に地味に道を作り、ゴールの為のアシストするのが一般的だ。

しかし、勝は唯が持ち味を発揮出来るように、唯をアシストする事を常に考えていた。

あのインカレの時、動けない勝を動ける唯が常にアシストしてくれたように。

常識に囚われず、2人が組んで出来る事を編み出しながら2人で力を付けていった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ