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出来なかった告白

ある日、病院の食堂に唯と凛が向かい合って座っていた。

唯が話し始めた。

「今日は時間を作って貰っちゃってありがとうございます。ちょっと聞いてみたい事が色々あって、いいですか?」

と、何だかモゴモゴした感じだった。

「今日は時間があるから大丈夫ですよ。私が答えられる事は答えますよ。」

と凛。

「柳瀬さんは、僕達みたいな年頃の男性の世話ってやりにくくないんですか?」

と唯。

「私達看護師は仕事としてやっている事だから、やりにくいとかそういう事はありませんよ。」

と普通に答えた。

「じゃあ仕事じゃなくて、例えば彼氏が突然事故に遭って僕みたいになっちゃったとしたり、僕みたいに身体が不自由な人と付き合う事になったりしたとしたら、世話をするのは苦痛に感じますか?」

と唯。

「仕事抜きに全くのプライベートなら。

世話をするのが苦痛だと感じるのなら、初めから付き合わないよ。その人の事を大好きで付き合いたいって思ったら、身体が不自由だとか自由だとかはあんまり関係無いし、世話が苦痛だなんて思わない。だいいち、世話っていう感じは嫌い。

お互い出来ない事は助け合いたいなって感じ。

好きな人とは色んな事を一緒にやりたいな。出来る事は制限されても一緒にやる事を優先したいな。

もし彼がそうなったら・・・」

と言いながら、史也と唯の姿が重なった。


「そんな事考えたくはないけど、彼を大好きな事が変わるはずがないし、私はいっぱい彼を助けてあげたいし、彼も今迄通りいっぱい助けてくれると思ってる。」

と凛は務めて冷静に話した。


あ、やっぱり凛さんには素敵な彼氏がいるんだ、と唯はちょっとがっかりした。

当たり前だよな、こんな素敵な人に彼氏がいないはずないもんな、と自分を慰めた。

こんなに早く聞きたかった事の答えが返ってきてしまったので、唯は言葉に詰まってしまった。

次、何を聞けばいいんだろう?と唯が気まずそうな気配を漂わせていたので、凛の方が口を開いた。


「風谷君は彼女いないの?こんなカッコいいのにいないはずないよね?でもそんな感じの娘はお見舞いに来てる気配無いし、ちょっと不思議な感じがしてた。」

唯の方に質問がきたのでアタフタした。

「あ、オレ彼女いません。いた事ないです。自転車しかやってこなかったから・・・」


「自転車」という単語が出てきたので凛は焦った。唯の事は知っている。史也の事を言ったらさぞビックリするだろう。でも、その事は何も言えなかった。

「ふ〜ん、自転車ね〜。」

と何も知らないようにごまかした。


「大丈夫。焦らなくても風谷君には素敵な彼女が出来るよ。不自由な身体は君の中のほんの一部分。

不自由な身体も含めて君の事を愛してくれる人がきっと現れるよ。」


告白したいと思っていたからか、考えもせずに唯の口からポンとある言葉が出た。

「凛さんみたいな素敵な彼女が出来るといいな。」

下の名前が出てしまったので唯はちょっと焦ったけど、冗談っぽく言った振りをしてごまかした。

凛も名前を呼ばれたので少し焦ったけど、実はとても嬉しかった。


ここまできたら聞いちゃえと、唯は「結婚しないんですか?」と聞いた。

「約束はしてるんだけどね。今はまだ。彼も大切な時だし、私もこの仕事もう少し頑張りたいし。少なくても、風谷君が退院するまでは辞められませんよ。」

と凛。


「結婚式、呼んで下さいね。」

さっき凛さんって下の名前言っちゃったから凛さんで貫くか、やっぱり柳瀬さんにしようか迷った唯はやっぱり柳瀬さんに戻した。

「柳瀬さんの彼氏、どんな人なのかな〜。あー羨まし・・・」

といつもの感じを装った。

そして「今日はありがとうございました。また明日から頑張って、出来る事を増やしていきます。これからも宜しくお願いします。」と頭を下げた。

不思議と晴れ晴れとした気持ちだった。


凛も「こちらこそ。何かあったらいつでも相談のるからね。じゃあね。」と明るい表情で立ち去った。

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