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回想③ ゴールした時の気持ち

また別のある日の夕方、食堂での2人の会話。


唯「ゴールした時に感じた気持ちを大切にしろって和也さん言ってましたよね?」


勝「ああ、言ってた。オレはこの前話した通り、ミジメさとか、すまなさが心を独占してたから。それを大切にするってどういう事か考えてみたけど。

ミジメな思いとかすまないという思いをしたくなかったら、これからそういう思いをしないように生きろって事かな?と。」


唯「ミジメじゃないのに自分ではミジメに思っちゃったり。すまなくないのに自分ではすまないと思っちゃったり。今、色んな人達に世話になりながら、迷惑かけながら生きてると、そう思っちゃいますよね。でも、それもミジメじゃないし、すまなくないのかもしれないのに、そう思ってしまうのは何でだろう。成長すれば思わなくなるのかな?

解らないけど、何か教えがありそうですよね。」


勝「唯は何を感じていたのか知りたいな。」


唯「ゴールした時は真っ白でした。何も考えられなかった。意識を繋いでおくのに必死だったけど、誰かの腕に支えられて安心したのかそのまま落ちちゃいました。

目が覚めて「オレ、生きてる!」って思いました。「突き抜けた!」って。で、すぐに感謝の気持ちが湧いてきました。和也さんと勝さんに力を貰って突き抜けられたって思いました。初めてでした。これまでロードやってきて自分の力以外の物を感じたのは。だからまずそれを伝えたかった。上手く言えなくて伝わらなかったと思うけど。現にあの時勝さんには伝わらなかったし。

それと、これは和也さんにも言ってないけど「もう一度本場ヨーロッパでやってみたい」って思いましたね。

今となっては、医者になる事もロードに乗る事も叶わぬ夢になっちゃいましたけどね。」


勝「もう一度本場でやって欲しかった・・・」


唯「でもいいんです。あの事故がインカレの後だったのは本当に良かった。オレ、突き抜けられたし、自分が本当にやりたい事が何だったか解ったし。ロードレースが好きだっていう気持ちを持って辞める事が出来るのは幸せだと思います。もし、事故に合わないで本場行ってたら、また打ちのめされてロードが嫌いになって辞めなきゃいけない運命だったかもしれないし。

時速60kmで生身の身体で地面に叩きつけられても骨一つ折れなかったのに、四方をしっかり囲まれた安全なはずの車に乗ってるだけで命を落としてしまったり不自由な身体になってしまう事もある。

何があるのか解らないのが人生。

だから面白いのかもしれませんね。」


唯が笑ったので勝も笑った。

勝「お前、どれだけプラス思考の人間なんだよ。」


唯「だってせっかく繋いでもらった命だから、前向きに生きなきゃ勿体無いし。

あと、和也さんが最後に言った言葉『笑顔の力』。

その意味を突き詰めてみたいなって思ってるんです。」

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