07 ミッション3
――残り時間4:53
「ドラゴンは大物」というイーヴァの話通り、そのクリアボーナスは中々のものだった。
まずは、経験値についてだけど、姫様ふたりがレベルカンストしてたおかげで、経験値は丸々オレが入手できた。
今のステータスはこんな感じ。
◇◆◇◆◇◆◇
シズク・サクマ
勇者 LV273
HP 4743
MP 4521
STR 421
DEF 489(+1)
AGI 457(+1)
DEX 410
INT 499
EQUIP
・布の服(DEF+1)
・布の靴(AGI+1)
・勇者の指輪
◇◆◇◆◇◆◇
おかげ様で、立っているだけだったオレの現在レベルは273!
チートパワーレベリングだ。やったね!!!
それでも、魔王の推奨レベルは500らしいから、まだまだだな。
そして、クリアアイテムとして、赤青緑黄の四色の宝玉をゲット。
更には、剣・盾・鎧・兜の勇者装備も一式揃った。
ちなみに、宝玉と勇者装備シリーズは、勇者がパーティーメンバーにいる状態でドラゴンを倒さないとドロップしないそうだ。
オレを連れてドラゴン退治に行ったのは、経験値稼ぎ以外にも、そういう理由があったのだ。
入手した勇者装備だけど、これがまたムチャクチャかっけーうえに、姫様二人の装備を超える破格のぶっ壊れ装備だった。
ただでさえ高い基本性能なのに、コンプするとセットボーナスで性能値2倍という驚異のバランスブレイカーぶりだ。
これなら素人のオレでも十分に戦えそう。レベルアップもしたし。
まあ、いまだまともに戦ってないんだけどね……。
なんか、このままオレの出番ナシで終わっちゃいそうな気もするんだけどね…………。
そうそう、レベルアップしたおかげで、勇者シリーズはちゃんと装備できるようになったよ。
今やもう、無様な醜態を晒したりはしない。
以前のオレとは違うのだよ!
そういうわけで、今のオレはカッコいい勇者装備で全身を包んでいる――わけではなく、元の布の服に戻っていた。
いや、確かに一回は装備してみたよ。
リスティアにすげーねだられたし、オレ自身も装備してみたかったからね。
それでイーヴァに出してもらった魔法の鏡で全身を確認しつつ、いろんなポーズを決めてみたり、リスティアに「かっこいいです〜〜〜」って褒められたり、イーヴァに「時間がありません」ってツッコまれたりと、ひと通り遊んだら、それで満足しちゃった。
なんか知らん不思議効果のおかげで、見た目ほど重たくはないんだけど、動く度にカチャカチャとうるさいし、動きは制限されるし、なにより、肩凝りそうだからね。
ほら、オレ、家に帰るとすぐジャージに着替える派だしー。
どうせしばらく戦闘もないし、いざとなれば、『勇者の指輪』の換装スキルつかって、一瞬で早着替えできるから、ノープロだよ。
実際、姫様たちも今はラフな格好しているしね。
そういえば、次のミッションはこんな感じだ。
【ミッション3】 王城屋上のフェニックスを完全覚醒させよ(所要時間20分)。
というわけでオレたちは今、屋上を目指している最中だ。
今回は『攻略ガイド』に地図は載っていない。「道順:らせん階段を上る」とシンプルに書かれているだけだ。
その代わりにデカデカとしたイラストが描かれているんだけど……。
そこにあるのはニワトリだかハトだかよくわかんない、幼稚園児が描いたようなヘッタクソな赤い鳥の絵と異なる色で塗りつぶされた6つの円――こちらも輪郭は歪だし、所々はみ出している園児クオリティだ。
さっきのハイクオリティーなドラゴンのイラストとのギャップの激しさに脱力していると、エッヘンと胸を反らしたリスティアがドヤ顔で話しかけてきた。
「それ、わたしが描いたんだよ〜。上手でしょ〜〜」
「お、おう。上手だな」
反らしたおかげで強調されたその大きなふたつの塊に視線が釘づけになってしまい、オレとしたことが不覚にもツッコミを忘れてしまった。
「……ちなみに、さっきのドラゴンの絵は?」
「それはわたしが描きました」
今度はイーヴァが控え目に主張してきた。
…………うん。
なんか、イロイロと納得した。
まあ、人それぞれ得手不得手はあるし、本人が満足しているなら、他人がとやかく言うことでもないだろう。
この落書きからでもなんとなく次のミッション内容は想像できるし、少なくとも、「情報を伝える」という攻略本としての最低限の役割は果たしていることだしな。
「この絵のヤツがフェニックスで、コイツを覚醒させるんだろ?」
「そうです」「そだよ〜」
「そんで、この下にあるカラフルな丸いヤツは宝玉だろ? 4つしか持ってないけど大丈夫か?」
『攻略ガイド』に描かれているのは6個だけど、手持ちはドラゴンから入手した4つだけだ。
「問題ありません。残りの2つはこちらで確保済みです」「だよ〜」
「覚醒の儀もこちらで執り行いますので、ご安心下さい」
うん。やっぱり「歩いてついて行くだけのお仕事」だった。
異世界に来てからこれまで、これしかしとらんな。
これじゃあ、ガイドさんに引き連れられてのパック旅行と変わらん。
もしくはネットでゲーム実況を観てる感じ。
いや、きっとオレが活躍するときが、そのうち来るはず!!
期待しているぜ!!!
◇◆◇◆◇◆◇
只今、らせん階段を上っている真っ最中。
下りのときと同様に、イーヴァが先頭でリスティアはオレに腕組みだ。
さっきと違ってリスティアは鎧を脱いでラフな薄着姿だから、いろいろとヤバい。
たゆんたゆんが、ぽわんぽわんで、ふにゃんふにゃんだ。
こんな経験は異世界で勇者でもやってないとできなそうなので、しばし堪能させてもらってるけど、このまま黙って歩いていると、理性が限界突破してしちゃいそうだ。
紛らわすためにも、気になっていることを尋ねてみることにしよう。
訊きたいことはいっぱいあるけど、再優先すべきなのは2つ。
1つ目は、「リスティアはどうしてオレに対して好感度MAXなのか?」だ。
でも、これを訊いて、「勇者さまは勇者さまだからだよ〜〜」とか返されたら、オレはこの先を続けていく自身がない。
そんなん、キャバ嬢に「お金をおとしてくれるから好きだよ」って言われるようなもんだ。
だから、これは保留。
2つ目は、このイージーモードっぷりについてだ。
今回の魔王討伐、オレの立場から見たメタ視点では、「オレがイージーモードを選んだ結果の、短時間・攻略ガイド付き」という楽チンなご都合主義な仕様になっている、と言えるだろう。
これがゲームだったら、なんの問題もない。
いや、一本道ヌルゲーだって批判は殺到するだろうが……。
だけど、ここは異世界で、リスティアもイーヴァも実在する人間にしか思えない。
後数時間で世界が滅びかねないという状況なのに、二人とも特に慌てたりも、悲壮になったりもせず、楽観的な様子だ。
そんな二人の態度に、オレは強い違和感を覚える……。
「なあ、そもそも、なんでこんなにタイムリミットがギリギリなんだ? もっと早く召喚できなかったのか?」
「勇者召喚の儀には日月星辰――星の巡りが重要なのです。儀式を行うには6つの星が正しい位置にあるときでなければなりません。そして、その機は年に一度訪れます。本来ならば、勇者召喚は一年前に行われるはずでした。しかし、そのとき儀式を執り行える唯一の存在である姉上が――――すっぽかしたのです」
「つい、うっかりしちゃっててね〜〜〜」
悪びれずにリスティアがそう言う。
「そんな大事なことフツー忘れるか?」
「姉上ですので」
なにを今さら、とイーヴァは諦観の表情だった。
「エヘヘヘ」
エヘヘヘじゃねえ!
さっきちょっと見直したけど、やっぱポンコツだ。
でも、ポンコツかわいい。かわいいから許す。
カワイイは正義だ。
よし、許すからおっぱい揉ませろ!
「でも、そのぶん頑張ったんだよ〜」
「自業自得です」
「あう〜〜」
冷たくイーヴァが突き放す。
うん、オレも同感だ。
レベル上げとか、ドラゴン攻略とか、やけに頑張ったんだな、と評価してたけど、単なる自分のミスの尻拭いじゃねえか!
しかも、ありえないレベルの致命的なミスだし。
王族じゃなかったら、確実にクビが飛ぶ案件だろ。
やっぱ、揉んどくか?
そう思いつつも、実行に移すだけの度胸なんてないから、妄想の中で目一杯揉みしだいておいた。
なるほど、タイムリミットがギリギリな理由は把握した。
でも、他にも気になる点がいくつかある。
だが、それを問いかけようとしたところで――。
「到着いたしました」




