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05 ミッション2

 ――残り時間5:19


 イーヴァの後について城内を歩くだけの簡単なお仕事だったので、最初のミッションは特になんの苦労もなく無事クリア。

 強いていえば、薄暗い明かりの中、腕に抱きつくリスティアというオプションを抱えながら、らせん階段の不揃いな段差を踏み外さないように気をつけなければならなかったくらいだ。


 しかし、魔王を封印したら、この隣にぶら下がっているカワイイ女の子がオレのお嫁さんなのか。

 まだ性格はよく知らないけど、そんなの気にさせないくらいのハイレベルな美少女だ。

 しかも、オレへの好感度も高く、彼女もオレと結ばれることは望んでいる雰囲気。

 結婚相手として、もちろん、文句なんかない。

 イージーモードだからなのか、こんなの話が良すぎていいものなのか、ちょっと疑問になるくらいだ。

 でも、エヘヘと笑うリスティアの横顔を見ていると、そんなの気にならなくなっちゃう。

 オレは間違いなく、リスティアに惚れ始めていた。


 石扉を通り抜けて『転移の間』に入ると、いきなり視界前方に半透過ウィンドウが浮かび上がった。


「うおっ!?」


 そういえば、ミッションクリアしたら自動的に『攻略ガイド』の次のミッションが書かれてるページを表示する機能をオンにしてたな。

 これ、いきなりだとビックリするな。

 やっぱ、オフにしておこう。


 ともかく、次のミッション内容はこんな感じ。


【ミッション2】 四竜を撃破せよ(所要時間20分)。


 『攻略ガイド』には四匹の竜のイラストが描かれ、その下にデカデカと「倒せ!!」と書かれていた。

 イラストは絵師にお金をかけましたって感じのハイクオリティーな仕上がりで、ムダに凝っている。


 でも、情報量が少なすぎる。

 弱点は何だとか、そういうお役立ち情報はまったくナシ。

 これでどうしろっつーんだって話。

 『攻略ガイド』とうたっている割には、大雑把すぎる。


 つーか、なんか早速すげーのキタ!

 1つ目のミッションとのギャップがあり過ぎる。

 お散歩の次がドラゴン退治とか、意味分からん。


 RPGだったら終盤で出てきそうな対ドラゴン戦✕4。

 しかも、レベル1で所要時間20分とか、どんな無理ゲーだよ。

 ほんとにイージーモードなのか?


「なあ、大丈夫なのか? オレまだレベル1だぞ? しかも、この紙装甲だぞ? それに時間も足りるのか?」

「へ〜きへ〜き〜」

「問題ありません。姉上と私で攻略いたしますので、シズク様はこちらの指示に従って頂ければ、それで十分です」


 心配するオレに対し、二人とも事もなげな反応だ。


 まあ、言われた通りにするか。

 今のオレになにができるわけじゃないし。

 大丈夫。長いものに巻かれて、流されるままにラクに生きていくのとか、チョー得意だから、オレ。

 ということで、自分の役割に関してさっさと折り合いをつけたオレは、あらためて室内を見回した。


 石壁に囲まれた狭い室内――出入り口はオレたちが入ってきたヤツだけだ。

 調度品などは置かれておらず、白い線で描かれた直径1メートルくらいの魔法陣らしきものが床に2✕2のかたちで4つ配置されている。

 さらによく観察すれば、石壁にも似たようなものが1つ。ただし、こちらは手のひらサイズの小さなものだった。


 まあ、『転移の間』っていうくらいだし、ミッション内容から推測するに、床の4つの魔法陣からそれぞれのドラゴンのとこに飛んで行けるんだろな。


「姉上、時間がありませんので」


 イーヴァがこちらにジト目を向けてくる。

 もちろん、その対象はオレではなく、隣に引っ付いているリスティアだ。

 リスティアはこれまで、進行を妹に丸投げし、オレの腕に抱きつき、時折セクハラ気味なちょっかいを出してくるだけだった。

 本来なら嬉しいシチュエーションなはずだけど、ゴツゴツした全身鎧のせいで痛いだけだったのが残念だ。まあ、ちょっといい香りが漂ってくるからオレとしては拒むほどではなかったけどね。


「えー」


 そう言いながらも、リスティアは不承不承オレの腕から離れ、壁の魔法陣に手をかざし、「起動アクティベート」とひと言唱える。


 途端、床の4つの魔法陣が光輝き始める。それぞれ赤、青、緑、黄と異なった色を放っている。


「時間がありませんので、早々に参りましょう」


 言い終わる前に、イーヴァはさっさと青い魔法陣の上に移動してしまった。


「さあ、勇者さま、行こ〜」


 オレもリスティアに手を取られ、二人で移動する。

 柔らかい手が女の子を実感させる。

 肌寒いはずなのに、オレの手は少し汗ばむ。


 直径1メートルほどの狭い魔法陣だ。

 その上に3人で立つと、リスティアだけでなくイーヴァとも触れ合いそうな近さ。

 こちらを見上げるイーヴァと目が合った。

 幼いながらも、端正に整った美しい顔立ち。

 透き通る白い肌によく似合う緑がかった銀髪。


 静かに見つめる無垢な視線に思わずドキリとしてしまう。

 さっきの話を思い出す。

 オレが望めばイーヴァとも……。

 さすがにこの年齢はともかく、数年後のイーヴァを想像すると…………。


「も〜、勇者さま〜、ロリコンはメッだよ〜」


 リスティアによる謂れなき弾劾が始まりかけたが、例の「時間がありませんので」の言葉で、彼女は素直に矛先を収めた。

 本気で怒っているんじゃないんだろう。

 怒るフリをしたじゃれ合いみたいなものだろう。

 実際、すでになにもなかったかのような笑顔に戻っている。


「じゃあ、行くよ〜」


 リスティアが「転移トランスポーズ」と唱え、オレたちは燐光のような青い光に包まれながら転移を果たした


 その時見えたイーヴァの横顔が少し赤くなっていたように見えたのは、オレの気のせいだったのだろうか……。


   ◇◆◇◆◇◆◇


「うわっ、さぶっ」


 転移したそこは、氷の洞窟だった。

 床も壁も天井も全て、デコボコした厚い氷に覆われていて、痛いくらいの寒さが肌に突き刺さる。


 ――と、大きく身震いした拍子に、足を滑らせたオレは盛大にコケてしまった。


「いててて」

「勇者さま〜、大丈夫〜?」


 尻餅をついてしまったオレは、リスティアが差し伸べてくれた手に掴まって立ち上がる。

 立ち上がるときにもう一度滑ってコケそうになったが、リスティアに掴まって、なんとか事なきを得た。

 リスティアが鎧姿をしていて良かったような、残念なような……。


「時間がありませんので、イチャイチャ禁止です」

「いや、これは別にイチャついてるわけじゃなくて――」

「きゃ〜、勇者さまもっと〜」

「禁止です」

「だから違うって。つーか、コレ寒すぎだろ。足元も滑るし。なんとかならないの?」


 オレはブルブルと震えながらアピールしてみる。


「ウォーム。アンチスリップ。もう大丈夫です」


 イーヴァが呪文を唱えると、オレの身体を光が一瞬包み込む。

 言った通り、寒さは急激に薄れ、肌のサブイボも消えていった。

 その場で足踏みしても、もう滑ったりしない。


「おお、こりゃ便利だ。というか、だったら、最初から魔法かけておいてよ」

「転移の際に魔法の効果はキャンセルされますので」

「へー、そういうもんなのか」


 納得納得。


「そういえば、二人は平気なの?」


 さっきイーヴァが魔法を使ったとき、光りに包まれたのはオレの身体だけだった。


「この鎧着てるから平気だよ〜」


 リスティアが自慢気に見せつけてくる。


「私もこのローブがあるので」


 なんでも二人の装備ともに、暑さ寒さや滑ったり諸々を無効化するぶっ壊れ装備らしい――うっ、羨ましくなんかないもん。


「では時間もありませんし、さっそく移動いたしましょう」


 イーヴァを先頭に洞窟の狭い通路を進み始める。

 ちなみに、今回はリスティアはオレの隣にはいない。

 とはいっても、オレがセクハラして嫌われたとかじゃないから、ご安心。

 てゆうか、今の姫様の好感度MAX状態なら、多少のセクハラは無問題。むしろ、逆に好感度上昇で限界突破まである。喜ぶべきか、恐れるべきか……。

 リスティアが隣りにいない理由は、単に通路が狭く横に二人並ぶことが不可能だっただけだ。

 だから、リスティアはオレの後ろを歩いているのだ――と油断しきっていた。


「勇者さま〜〜〜」


 後ろから首元に思いっきり抱きつかれ、思わずバランスを崩し――かけたけど、あからさまに不自然な体勢で踏み堪えることができた。すげーなアンチスリップ。


「勇者さま〜あったかい〜〜」


 引き剥がそうとしてもビクともしなかったので、オレはリスティアを引きずったままで歩き続けることにした。


   ◇◆◇◆◇◆◇


 百歩も行かないうちに通路は終わり、開けた場所に出た。

 体育館くらいの広さだろうか。天井はなく、周囲は切り立った崖になっている。


 ――ギャャャャャャ。


 遠くから大音量が響いてきた。ドラゴンのき声だろう。


「来ます。準備を」


 「おっけー」とリスティアは返すが、オレはどうすれば……と「勝手も分からないで現場に放り出された派遣社員な気持ち」でいたオレに、正社員からのアドバイスが飛んできた。


「シズク様はそこから動かないでいて下さい」

「あっ、はい」


 よしっ!

 「後ろをついて行くだけのお仕事」から「立っているだけのお仕事」にジョブチェンジだっ!!!

 喜んでいいのか??


 ともあれ、今のオレはレベル1勇者featuring布の服だ。することも、できることも、なにもない。

 ジャマだけはしないように、言われた通り二人を見守っているとしよう。


換装チェンジヴァグニール完全武装パーフェクトスタイルモードフレイム


 リスティアが高らかに唱え上げる。

 かっちょえー。中二全開で魂にビンビンくる。


 リスティアが身にまとっている装魔槍ヴァグニールは一瞬光りに包まれる。

 それが収まったとき、彼女の頭部は鎧と同色の黒い兜に完全におおいつくされていた。

 そして、右手には3メートル以上もある長槍が握られ、その穂先は激しく燃え盛るオレンジ色の炎に包まれていた。つよそう。


極大属性付与スープリーム・エンチャントモードフレイム


 続いてイーヴァが唱えると、リスティアの槍を包む炎がひときわ大きくなり、その色は青白く染め上げられた。


無制限アンリミテッド物理フィジカル能力上昇ブースト

「うおおおおぉぉぉーーー。みなぎってきたよーーーー」


 イーヴァのさらなる魔法がリスティアの全身を光らせる。

 副作用なのか、リスティアのテンションもアゲアゲだ。


絶対障壁アブソリュート・バリア聖域サンクチュアリ


 そして、イーヴァが短く唱えると、オレと彼女を包み込むように白い光の半球ドームが出現した。


「さあ、これで準備は整いました。この中は安全ですので、ここから出ないようにお願いいたします」

「おうっ!」


 さーて、勇者としての初戦闘のスタートだ!

 いっちょ、やり遂げてみせますか――立っているだけの簡単なお仕事を!!!

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