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04 ミッション1

 ――残り時間5:30


【ミッション1】 王城地下にある『転移の間』に移動せよ(所要時間10分)。


 『攻略ガイド』に書かれていた最初のミッションはこれだった。


 というわけで、オレたちは今、その『転移の間』に向かって、城内のらせん階段を下っている。

 ちなみに、『攻略ガイド』には精緻な地図が描かれ、道順も記載されていたが、イーヴァが先導して案内してくれているので、オレはその後をついて行くだけだった。

 もう一人のリスティアはと言えば、オレの腕に抱きつくようにして鎧をカチャカチャ鳴らしている。おかげで、歩きにくい事この上ない。

 陽が差さないこの階段は、ザ・初期装備な布の服姿のオレには少し肌寒く、もこもこと暖かそうなローブに全身を包まれたイーヴァがちょっと羨ましい。


 そう。

 二人はさっきの小部屋を出る前にお着替え済みだった。

 お姫様なドレス姿から一転、今はファンタジーRPGライクな戦闘スタイルだ。


 リスティアはやたら鋭角的なとんがりがカッコいい、鈍く黒光りしている全身鎧姿だ。

 なんでも、もともとは『装魔槍ヴァグニール』とかいう名の一本の槍らしいが、キーワードを唱えることによって幾つかの形態に変形可能らしい。なにそれカッコいい。

 今は兜を装着していないバージョンなので可愛い顔を眺められるけれど、戦闘時には今の姿にプラスフルフェイスの兜と槍装備の完全状態になるんだって。

 だから、兜を被ったときに邪魔にならないように、ふわゆるロングなリスティアの桃色髪は、すっきりとまとめ上げられている。むき出しの白いうなじがセクシーだ。


 そんな派手でカッコいいリスティアとは対照的に、イーヴァは地味な格好をしている。

 フード付きの白無地もこもこローブに全身をすっぽりと覆われ、右手には彼女の背丈より大きい無骨な木の杖を持っている。

 一見すると地味な姿だけど、目深にフードを被ったその様は、無口な妹系魔法使いをパーフェクトに体現していて、イーヴァにとてもよく似合っていた。


 とまあ、そういう感じで、二人ともすげーカッケーわけですよ。

 レベル1丸出しな格好のオレと違って、「これから魔王を倒しに行きますよ」って格好をちゃんとしてるのよ。


「つーかさー、この差はちょっとヒドくない? オレだけ完全に浮いてない?」


 「平服でお越しください」って言葉を信じて行ったら、周りがみんなスーツ着てたみたいな疎外感でいっぱいだよ。


「だいじょ〜ぶだよ〜。勇者さまは〜なに着ても似合うから〜」

「さっきもそうやって誤魔化されたけどさ――」

「大丈夫です。すぐにちゃんとした装備も手に入りますから」

「そうは言ってもさー、それまでが心配なんだよ。二人ともこれから戦いに行く気満々な格好してるじゃん。それなのに、オレだけこの格好だよ? ただでさえ、レベル1で激ヨワなんだから、こんな格好だったら、オレ一発で死んじゃうよ?」

「大丈夫です。問題ありません」

「うん。大丈夫。勇者さまには、わたしが傷ひとつ付けさせないから」


 急にリスティアが今までにない真剣な態度をとったから、オレはそれ以上追求できなかった。

 つーか、普段のふわゆるぽわーんなリスティアも可愛くて素敵だけど、真剣なリスティアも今のまとめ髪鎧姿と相まってカッコよくていいな。

 そんな風に彼女に見とれていると、あっという間にいつもの脱力モードに戻ったリスティアはイーヴァと話し出した。


「イーちゃんもー、もっとカワイイの着たら良いのにー」

「これが一番MP消費軽減できるので」

「そんなのーアンフェタをキメちゃえばへっちゃらだよー」

「飲んだあとにダルくなるから、私は嫌いです。服用回数はできる限り減らしたいです」

「えー、ワタシはフワフワして気持ちよくなるから好きだよー」


 なんか物騒な単語が聞こえてきたが、後で聞いた話によると、この世界でのMP回復アイテムの名前だそうだ。


「姉上は普段からフラフラしてるので、もう少し落ちつくべきだと思います」

「えー」


 姉妹の取り留めもない会話を聞きながら、らせん階段を下っていく。

 見た目の印象通り、頼りない姉としっかり者の妹という関係性が会話からも伝わってきた。


 そうそう。そういえば、彼女たちの着替えシーンについても言いたいことがある。


 小部屋を出発する前にリスティアが「じゃあ、わたし達も着替えちゃおー」と言い出した。

 先刻ひん剥かれたばかりの被害者としては、


「はいはい、わかります。今度はオレのターンですね。つーか、これからずっとオレのターンでもノープロっすよ」


 といった感じでニマニマするのは当然至極であろう。


 だが、しかし、現実は無情だった。

 オレの思い虚しく、彼女たちが一言つぶやくと、二人の全身は光が包まれ、あっという間に今の格好にお着替え完了なわけですよ。

 ショトカワンクリで装備チェンジてな感じで、ホントに一瞬で。

 せめてプリティでキュアキュアな方々の変身シーンくらい時間かけてよ。


 というわけで、被害者としては「納得いかん。謝罪を要求する」っつーことで。


「なにそれ!?」

「換装スキルですが?」

「だよ〜」

「なに、その便利スキル!? オレも欲しいっ!」

「勇者さまもできるよ〜」

「はっ!?!?」

「『勇者の指輪』の機能で、シズク様も使えますが」

「へっ!?!?!?」

「うん、そだよ〜」


 衝撃の事実発覚――――。


「…………。じゃあ、なんで、オレはさっきひん剥かれたんだ?」

「……………………」

「……………………」


 うわ、二人とも露骨に目をそらしやがった。


「時間がありませんので、この件につきまして後ほどということで……」


 ホント便利ですね、その言葉!

 つーか、時間ないんだったら、ひん剥いてんじゃねえよ!!


 まあ、羞恥プレイだったことは間違いないけど、不愉快だったかと問われれば、むしろ、すべすべな四本の手がひんやりと気持ちよくて、ちょっとゾクゾクしなかったと言えば嘘になるわけで……。


 よし。

 ここは、寛大な心で矛を収めることにしておこう。


 ついでにいうと、『勇者の指輪』には『換装』機能の他にも『収納』機能もついていた。

 色々と収納出来るらしいから、早速『勇者カード』と『攻略ガイド』を仕舞っておいた。つーことで現在のオレは手ぶら状態。片腕に重い荷物リスティアがまとわりついているだけだ。

 ちなみに、収納状態でも2つのアイテムは使用可能で、『ステータス・オープン』と唱えれば、オレのステータス(日本語表記)の半透過ウィンドウが視界前方に表示される。閉じるときは『ステータス・クローズ』って唱えればいいだけ。

 同じように、『ガイド・オープン』と唱えば『攻略ガイド』が表示されたウィンドウが現れる。

 とっても便利な仕様だった。


 そういえば、現在のオレのステータスは


   ◇◆◇◆◇◆◇


 シズク・サクマ

 勇者 LV1


 HP  18

 MP  12

 STR  5

 DEF  4(+1)

 AGI  4(+1)

 DEX  3

 INT  4


 EQUIP

 ・布の服(DEF+1)

 ・布の靴(AGI+1)

 ・勇者の指輪


   ◇◆◇◆◇◆◇


 とまあ、こんな感じで思いっきりショボショボな初期ステータスだ。

 いくら勇者といえどLV1だと、一般人よりちょいマシな程度だそうだ。

 でも、こっから勇者補正な成長チートで爆上げらしいから、乞うご期待!


 ついでにいうと、姫様たちから着せられた布の服と靴。

 見かけは貧相だけど実は高性能だったり、とかちょっと期待してたけど……。

 うん。まったくもって見た目通りの性能だった。しょぼん。


 自分のショボいステータスに落ち込んでいたけど、そんなことよりも大事なことがあったと思い出した。


「ねえねえ」

「はい、なんでしょうか」

「契約の内容を教えてよ」


 気になっていたことをイーヴァに尋ねてみる。

 さっき尋ねた時は「時間がありませんので」で流されたけど、移動中の今なら時間は問題ないはずだ。


「シズク様には魔王を封印してもらうという契約です。そして、その報酬として、シズク様は姉上を娶ることができます」

「マジ?」


 こんなカワイイ子がオレのお嫁さんに?


「マジです」

「そうだよ〜、勇者さまヨロシクね〜」

「もちろん、姉上ではなく他の相手をご所望ならば、その者でも構いません。できれば既婚者は避けていただければありがたいのですが」

「じゃあ、イーヴァちゃんを選んでもいいの?」

「もちろんです」


 イーヴァは表情を変えずに即答する。


「む〜」


 リスティアがふくれっ面になる。


「もしもの話だよ」


 オレがそう言うとリスティアは機嫌を直した。

 ちょろいな。


 でも、そんな美味しいクリア報酬を突きつけられても現実感が薄い。

 魔王を封印するまでに、本当にリスティアと結ばれるのが最良なのか、ちゃんと考えておかないとな。


「到着いたしました」


 結構長く感じられたらせん階段もようやく終わり、眼前には紋様の刻まれた重たそうな石扉があり、二人の兵がそれを守るように立っていた。

 我々の姿に気づいた兵たちは両脇に下がって道をあける。

 歩み寄ったイーヴァが石扉に手をかざすと、刻まれた紋様が青白く発光し――石扉は音もなく開いた。


「では、参りましょう」


 イーヴァの言葉にうながされ、オレたちは『転移の間』に足を踏み入れた。


 ――ミッション1クリア――

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