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25 決戦!

 ――残り時間0:52


 おどろおどろしい外観をした魔王城の城門をくぐり抜けると、大勢の兵士が待機していた。

 彼らがオレの代わりに魔界攻略をしてくれていた別働隊だろう。

 辺りに、魔物の気配はない。魔王城は彼らによって完全に制圧されたのだろう。


 彼らの声援を浴びながら、オレはリスティアとともに城内を進んでいく。

 オレなんかより彼らの方が賞賛に値するだろう。

 なにせ、オレは後をついて歩いてきただけだ。


 だけど、この先はそうはいかない。

 魔王の封印だけは、代わりがきかないのだ。

 勇者であるオレにしかできない仕事なのだ。


 全身を『勇者シリーズ』装備に包み込んで、オレはビビりながら魔王を目指す。


   ◇◆◇◆◇◆◇

17

 シズク・サクマ

 勇者 LV999


 HP  9999

 MP  9999

 STR  999(+999×2)

 DEF  999(+999×2)

 AGI  999(+999×2)

 DEX  999(+999×2)

 INT  999(+999×2)


 EQUIP

 ・勇者の剣(STR+999)

 ・勇者の鎧(DEF+666、AGI+999)

 ・勇者の盾(DEF+333、DEX+999)

 ・勇者の兜(INT+999)

 ・勇者の指輪


   ◇◆◇◆◇◆◇


 見よ、この綺麗に9が揃ったカンストっぷりを!

 ちなみに補正値が2倍なのは『勇者シリーズ』のセットボーナスだ。

 ただでさえ、スゴい数値なのに、更に倍率2倍というチート装備だ。

 レベル999のステータスとこの装備品があれば、魔王戦も恐れる必要はないだろう……きっと。


 魔王城は思っていた以上に広かった。

 城内を歩くこと20分以上。

 いよいよ、目的地に到着だ。

 見上げるばかりの大きな両開きの石扉。

 表面にはこれまた巨大な魔法陣が刻まれている。


 この先に魔王がいるのか……。

 あと30分で魔王を封印しなければならない。

 オレに出来るのだろうか…………。


「みんな、おまたせー」


 扉の前には3人の女性が待ち構えていた。

 イーヴァとラーヴルさんと、もう一人は知らない女の子だ。


 魔道士みたいな格好の女の子だった。

 蒼い三つ編みとメガネ姿の小柄な女の子だ。

 身長はイーヴァと同じくらい。

 黒いローブをまとい、同じく黒い宝玉をはめ込んだ長い杖を持っている。


「お待ちしておりました、シズク様」


 オレに向けて言葉を発した後、イーヴァちゃんの視線はリスティアに向く。刺々しい視線だ。

 リスティアのわがままで遅くなったことを咎めているんだろう。


 だがしかし、リスティアはどこ吹く風。


「やっほー」


 といつもの軽い調子に戻っている。


「イーヴァちゃん、この子は?」

「サーちゃんだよ」


 イーヴァちゃんと本人が答えるよりも早く、割りこむようにしてリスティアが答える。


「こほん。彼女は宮廷魔道士筆頭のサーラです」

「……サーラです」


 イーヴァの紹介に続き、ペコリと頭を下がるサーラちゃん。

 素朴で口数少ない感じだけど、整った顔をしている。

 ラーヴルさんといい、美人じゃないと強くなれない決まりでもあるのか?

 二人の姫さんを代表に、美女、美少女のオンパレードだ。


 それにしても、ずいぶんと幼く見えるのに、宮廷魔導士の筆頭なのか。

 ずいぶんと優秀なんだな。


「あっ、どうも、シズクです。勇者やってます。さっきなったばかりだけど」

「お初です。勇者様」


 オレの自虐風自己紹介にサーラちゃんがクスリと笑う。

 ほんの少し笑っただけだが、カワイイ笑顔だった。

 うん、この子はイイ子に間違いない。

 対照的に、ピクリとも表情を動かさないのがラーヴルさんだ。

 彼女も真面目で良い人なんだろうけど、ちょっと近寄りがたい雰囲気だ。


「じゃあ、開けちゃうよー」


 ちょっとレンジでチンしてくるくらいの軽い足取りのリスティアが石扉に近づく。

 『収納』から取り出したのは『究極のカギ』だった。


 それを扉中央にある鍵穴に差し込み「解錠アンロック」と唱える。

 すると――魔法陣が白く光始め、ゴゴゴゴゴッという音とともに、石扉がゆっくりと開き始めた。


 やがて、完全に開ききった石扉。

 オレは中を覗き込む。


 魔王城の最奥、広々とした空間。

 その中央に、魔王はいた。


 魔王は人型をしていた。

 そして、巨体だった。

 うずくまっているその姿は体長5メートル以上あるだろうか。

 その全身を青白く光る鎖のようなもので雁字搦がんじがらめにされ、身体の中央に一本の剣が刺さっていた。


「イーちゃん、進行任せたー」


 丸投げされたイーヴァはリスティアをジト目で見る。

 やがて、すべてを諦めたかのように大きくため息をついてから説明を始めた。


「シズク様、魔王の身体を見て下さい」


 言われた通り、オレは横たわる魔王を見る。


「今は封印によって動けない状態ですが、魔王は生きております」


 イーヴァちゃんの言う通り、魔王の心臓らしきものが力強く脈打っているのがわかる。

 封印されているのにも関わらず、肌がピリピリするほどの物凄い威圧感だ。

 できるなら、さっさとこの場から立ち去りたいくらいだ。


「先代勇者が刺した剣が刺さっている場所が魔王の魔核です。この剣が魔王の力を吸い取り、その力を封印している状態なのです」


 切り裂かれ露出した魔王の体内に見える禍々しい塊――それが魔核だ。

 その魔核に深々と刺さっている一本の剣。

 オレが持つ『勇者の剣』と同じようなつくりをしている。


「魔王の封印はもう解ける寸前です。後、30分も保たないでしょう。封印が解けたら、魔王は本来の力を取り戻します。そうしたら、この世界は破滅です」


 その重い言葉に、オレはゴクリと唾を呑む。

 実際、魔王を縛る鎖の光は、切れる寸前の蛍光灯のように弱々しく点滅している。


「今から封印を解除します。そして、残り時間が尽き、魔王が本来の力を取り戻す前に、シズク様には再度、魔王を封印していただきたいのです」

「…………ああ、わかった」


 重責に胃が痛くなる。

 だけど、オレがやるしかないんだ。


「封印を解除した後、まずは我々4人で魔王を弱らせます。魔王が弱ったら合図いたしますので、シズク様がその剣を魔王の魔核に突き刺し、魔力を流し込んで下さい。よろしいですか?」

「…………ああ、オーケーだ」


 やるべきことはシンプル。

 後は、オレがそれをクリアできるかだ。

 身体が震え始める。

 武者震いってやつだろうか。


「皆さんもよろしいですか?」

「おっけー」

「了解であります」

「把握」


 リスティア、ラーヴルさん、サーラちゃん、それぞれも覚悟はできているようだ。


換装チェンジヴァグニール完全武装パーフェクトスタイルモードホーリー


 リスティアは対ドラゴン戦でも使用した『装魔槍ヴァグニール』をフル装備。

 今回は聖属性だからだろうか、その穂先は白い光で包まれている。


 イーヴァちゃんはドラゴン戦のときと同じ、もこもこ白ローブに長い杖だ。


 ラーヴルさんはフルプレートアーマーと長剣、そして身長ほどもある大きな盾で武装している。


 そして、サーラちゃんは大きな黒い魔石を埋め込んだ杖。

 イーヴァちゃんの白い魔石の杖とは対照的だ。


 いよいよ、魔王との戦いが始まる。

 この戦いが全てだ。

 この戦いが最後の戦いだ。

 そして、オレにとっては初めてのまともな戦闘だ。


 デビュー戦が魔王との決戦な勇者ってどうよ?


 魔王との最終決戦は支援魔法バフの連続打ちから始まった。

 イーヴァちゃんとサーラちゃんが、オレたちに次から次へとバフをかけていく。


極大属性付与スープリーム・エンチャントモードホーリー

無制限アンリミテッド物理能力フィジカル上昇ブースト

無制限アンリミテッド魔法能力マジカル上昇ブースト

極大スープリーム加速アクセラレート

神々の加護ゴッズ・ブレス

絶対障壁アブソリュート・バリア聖域サンクチュアリ

 ……………………。



 バフが発動する度にカラフルな光がオレたちの身体を包み込み、パワーアップしたような感覚が全身から感じられる。


「よろしいでしょうか?」


 バフをかけ終わったイーヴァちゃんが最終確認をしてくる。


「姉上が攻撃役アタッカー、ラーヴルが盾役タンク。わたしとサーラが後方から魔法攻撃です。シズク様は合図があるまで下がっていて下さい。封印を解いたら、まずは姉上が一撃ファーストアタックを」


 リスティアとラーヴルさんが一歩前に出て、オレを守るように立つ。

 イーヴァちゃんとサーラちゃんが呪文の詠唱を始めた。


 オレの聞きなれない言葉での詠唱だ。

 長い詠唱だった。

 その詠唱が2分、3分と続いていく。

 二人とも息が合ったようにぴったりと重なっている。

 永遠に続くのではないかと錯覚した頃、ようやく詠唱が完結したようだ。


 二人が黒白二本の杖を合わせ、高く掲げる。

 杖から発せられた白い光と黒い光、二つの光が魔王の巨体を覆い尽くす。

 パリィィィィンとガラスが砕けるような音とともに、魔王を封印していた剣と鎖が消滅した。


「今ですッ!」


 イーヴァちゃんの叫び声とともに、リスティアが駈け出し、その槍を魔王の身体に叩きつけた――。


神々の導きディヴァイン・インターヴェンション――――」

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