第38話 人外達のチュートリアル。
胸くそが最近続いてますがスミマセンm(_ _)m
「───何よ!泣いてる顔が珍しいの!?見ないでよこの……臭いのよあなた!ホントイライラするわねこの村は…もうウンザリよ……あんな甲斐性無しなんかと一緒にならなきゃ…今頃私だって────」
村一番の美人で有名なメルさん。最初はこんな感じだった。開拓村の生活は素朴で質素で貧しいものだ。
だからこそみんな、のし上がろうと頑張ってもいた。でも中にはそんな生活の中で人生を諦める人もいて…メルさんはその一人だった。俺は、あの頃のメルさんを美人だと思ったことは一度も無い…でもいつの間にか……
「───あらジンくん坊や今日も精が出るわね──ええ?それ言ってるとまたウチの旦那にゲンコ食わされるわよ?──フフ…じゃあまたね♡──ふふ…ホント元気ね〜──。」
こんな風に笑いかけてくれるようになってたんだ…その笑顔には華やかささと柔らかさが同居していて…幸せそうで…俺はそんなメルさんの笑顔を見るのが好きだった……それを、それを────
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───くそおおおおおおおオオ!!」
ガキイイイイインン!!
「ははっ凄いっスレベル2とは思えないっスこの斬撃!ヒュー〜〜♪」「て…ッめぇ…てめええええええ────────
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「───ああ?気安く話しかけてんじゃねえぞ?シミったれた忌み子がよ!…酒ってのはなあ、デリッケートなんだよ!そんな臭え匂い漂わせて近寄れるもんじゃぁねえんだっ!あっちいってろ…おい!もう近寄って来んなよ?クソガキが…ったくどいつもこいつも酒の有難みを知りもしねえで…ブツブツ───」
村唯一の酒場の主人であるデーブさん。最初はこんな感じだった。開拓村の仕事は厳しい。重労働に馴れた村人が次の日の事を考えれば酒が喉に通らなくなるほど疲れ果ててしまう…そんなシーズンだってある。そうなると酒場なんて閑古鳥が鳴いてて…こんな時のデーブさんはいつもイライラしてた。…それでも酒の味を落とさないようにと妥協しないその姿に興味を持ってしまう俺だったんだけど、それがかえって煙たがれることになってた…でもいつの間にか……
「お?ジン坊。また背え伸びたんじゃねえか?──はあ?『産まれるの?』だと?うるっセぇッ!俺あ男だぞ!そして人間だ!──だから孕んでねーっつの!あとその変な掛け声やめろ!【暗斬鬼岩】??そんな武技ねーだろがっ!くっそー行きやがった…………酒、控えるか〜──」
こんな風に、馬鹿話が出来る仲にまでなってたんだ……俺はあの人の中にある職人気質に触れていたくて、あの豪快に出っ張った下腹に妙な暖かみと親近感を持つようになって…好きだった……それを、それを───
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────笑うんじゃねえええ!!お前があ!お前みたいなやつがああああ!!」
ギン!ギカ!ゴッ!ギイイイイン!!
「おお!?凄え!凄え今の凄え危なかったっス!マジヤバかったス!あは、アハハハハハハハ!」「殺す!殺す殺す殺す殺すっ!お前は!お前らだけは─────
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「───オイおめえ、ウチの畑荒らさなかったか?ん…お前…なんで笑ってんだ…って逃げるな待てや!臭えな…怪しいぞお前…オイ、正直に言えよ?俺は子供に優しいんだ。畑と同じで育てることに意義があっからな。でもだからこそ躾ってもんに容赦しねえ…今なんで逃げた?あ?言ってみろ今なんで逃げ──」
農家のラタンさん。最初はこんな感じだった。開拓村では皆村の発展に全てを捧げよとしていてとても意識が高い。高過ぎて変に凝り固まった正義を振りかざす時もある。そうなると容赦が無くなる。温厚に見えるこのラタンさんもその例に漏れずだった。農業一直線。だから日頃可愛がってる作物に何かあると容赦なくその正義を振りかざして、忌み子だった俺はそのトバッチリをよく受けたもんだった。…でも最近は……
「───ようジン!芋余ってんだよお前んとこ要るかあ?──そうかじゃあ後で…──バカ野郎テメーで取りに来いっ!──
っとにあのヤローは……へっ…おもしれーガキだよ全く…───」
こんな風に、俺が仲間外れにされてないかいつも気にかけてくれるようになってたんだ。歳は離れてたけど俺はそんなラタンさんを近所の気のいい兄ちゃんとして慕ってて…いつも甘えて頼ってはその素直なリアクションを引き出すのが、好きだった……それを、それを───
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────チクショウッちくしょうっチクショウッ!!!」ガキガキカキギギギギギギギン!!「あれえ?泣いてんスか?ジンさん戦闘中に泣くんスか?それは頂けないっスねえ…少しガッカリっス。萎えるっス。」「ウ…あ…ぅワアアああああああ─────
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「───オイ…オイそこのガキオイ!お前だお前…オイ毎日毎日飽きもせずこれ見よがしに無意味な剣振り回しやがってオイ…。…オイお前冒険者になりてえらしいなオイ…。オイこの脚…見てみろオイ。…俺でさえ、こうだ。魔物にかかりゃあお前なんて一瞬だ一瞬。なあ?だから…ああ!?口応えしてんじゃ…、甘い夢見てんじゃあねええおらっ!……ったくガキ殴るとか…恥かかせんなよクソガキ──」
村のガーディアンを務めていたマグナさん。最初はこんな感じだった。冒険者が村に定住するパターンは二つある。定年よろしく余生を安泰に暮らす人、怪我などを原因に夢途中で破れ、引退を余儀なくされ、その腕が錆びついていくことに悶々としながら暮らす人…。マグナさんは後者の方だった。…でもいつの間にか……
「ジンよオイ!ちったぁ腕ぇ上げたかオイっ!──なんだとぉ?おう!その喧嘩買ったぞオイ!──待っ……ちくしょうっ速えなオイぃ!……フンっまたいつでも来いやオイっ…──」
こんな風に、自分が果たせなかった夢を俺の中に見て、愛娘のアビーですらパーティメンバーとして俺に託してもいいと言ってくれた。今では俺にとって村一番の理解者になってくれていて、俺の夢を猛反対する父さんを何度か宥めてもくれていて…それが時々喧嘩になったりして(まあ父さんが圧勝してたけど)、でも、そのお陰もあったはずだ。父さんが文句を言いながらも、俺との稽古に毎日付き合ってくれていたのは…それを、それを───!
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───返せ!お前え!返せよ!返せよおおおお!」ガン!ガアン!ガアアン!ガアアアアアアン!「いやいや、なんスかこの雑い剣は〜?ジンさんらしくないっスよ?ホント…ガッカリさせないでほしっスね…。真面目にやりましょうよ折角の機会なん─」「返せよおおおおおお────
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腑に落ちない事なら、沢山、あった…
だから…『何かをされた』って気付くことも出来た。
でもそれが何なのかが分からない。
だからいつもイライラしていた。
そして今、ボンズが俺の呪縛を解いてくれたおかげで全ての不自然が修整された。されてしまった…
『覚えていたくない』
そんな呪縛に甘えて、殻の中に閉じ籠もって
自分で勝手に修整していた部分。
それらが全て明るみになった。なってしまった。
その内容は──
まず、なんで母さんは突然に姿を消した?
なんでそれを探しに行った父さんまでが帰ってこない?
何故探しに行く前に何の説明もしなかったんだ?
…それはきっと、二人の過去に関係のある事だったからだ。
二人とも自分達の過去を話したがらなかった。
父さんは冒険者時代の事は『あまりにもイケイケだったので話すのが恥ずかしい。』そう言っていた。
母さんなんかは全く話そうとすらしなかった。あの天真爛漫さで、あからさまに話を逸らされたりしたら流石の俺もそれ以上は聞けなかった。
【魔剣使いの息子】だとか【魔剣鍛冶師の息子】だとか【狂戦士の息子】だとか…俺が生まれつき持っていたこの【称号】を見て、薄々勘付いてはいたんだけれど…
二人の過去の本当のヤバさを…ほんの少しだけど理解出来たのは、二人がいなくなってからだった。
マグナさんがある日、家を訪ねて来て教えてくれたんだ。
マグナさんが言うには、ことの発端は母さんが『過去の因縁浅からぬ…良くない相手に見つかってしまった』ことにあるのかもしれない…という事だった。
あくまで想像であるがと付け足していた。なんせその『相手』が誰であるのか、いつ母さんと接触したのかも分からない。分からないけど、母さんが忌み嫌う、とある技能を狙って接触してきたのかもしれない…そうマグナさんは言っていた。
マグナさんはその技能について詳細までは話さないでいたけど、多分、称号で見た【魔剣鍛冶師】ってヤツだろうなと、俺はすぐにピンときた。
俺達に類が及ぶのを恐れた母さんは独りこの家を後にしたのではないかという推測を述べてマグナさんは結びとした。
他にも色々と可能性ならあるのだろうけど、今はこれしか考えられないとも。
なるほど…マグナさんが勘付いてしまうほどなんだ。父さんがその事に気付かないはずがない。母さんの書き置きを見るやいなやその無謀を止めようとすぐ家を飛び出してしまったのだろう。
そして父さんも、自分達の過去が俺にまで影響を及ぼさないようにと、何も言わず行ってしまった。そうだ。これが真相であるなら…シックリとくる……。
また違う日に今度は村長がこう言った。
『いよいよ事態が危ういものになって来た』と。
どうやら父さんが何か問題を起こしたらしい。
その情報が村長の耳まで届いた。
そして早速俺を訪ねて来てくれたのだとか。
集会所まで付いていくと『みんなで集めたこの金でジンだけでも他所の土地に移り住むように。これは村長命令だ』そう言われた。
出て行きたくなかった俺は駄々をこねた。
『そんな大事な金は受け取れない』
そういうことにして居座ろうとした。
……だけど…
メルさんは言ったんだ。
『みんなあなたが嫌いだったわ』
でも、こうも言ってくれた。
『でもね。みんな気付いたの。私達が本当に嫌いだったのは、あなたを通して見えてしまう情けない自分だったんだって。それに気付いた時はね…ね?どうだったと思う?ホント馬鹿みたいね。私達はね…嬉しかったのよ?変われたんだもの。情けない自分を変えられずに悩んでた自分を、それでも変えられたの。だから、ジン…』
デーブさんは言ったんだ。
『ああ、鬱陶しいったらなかったぜ。こんな情けねえ俺なのに付き纏ってよお、そんな俺のイイトコをいちいち探しては見つけてくれて…鬱陶しいったら、本当に鬱陶しいったら…くそう。まあ受け取っておけよ。返さねえでいい。お前からはもう、もらってるから…チクショウだから行くなよ…ってああもう!今のは忘れてくれ…』
ラタンさんは言ったんだ。
『俺は正しい事をしていると思ってて。正しいことなんだから押し付けることだって正しいことなんだ…とか……そんな馬鹿な事を、本気で思ってて。お前見てるとそんな俺はホント……お前な。俺のこと兄貴扱いしてくれてたけどな。俺にしてみりゃお前は…ほんとに…ああもう…いいから!受け取ってくれよっ!そんな金…っなんっも惜しくねえっ!ほらっだから…達者でな』
マグナさんは言ったんだ。
『俺はなんも心配なんてしてねえぞオイ?俺なんかとは違う。お前なら何にだってなれる。だからお前も俺らのことなんか心配するなよオイ…『凄え冒険者がいるらしい、そいつはなんでもスピリとかいう、ドが付く田舎の出身で…』とかなんとかよぉオイ。言われるように!オイ!頑張れっ!なあ?そうなりゃこの村にとっても、い〜い宣伝になるぞオイい!そしたらなあ…そんなもんはもう…はした金だあ…なあオイ?…オイ…だから…だからよ…もういけよオイ…行けったら。』
そしてやむなく俺は…村を去った。
そしてその旅路の途中、盗賊に襲われた。
そしたらゴブちゃんが助けに来てくれて…
ここまでの流れに不自然さはない。
この後だ。
突如として現れた100人を超える騎士団。
俺は最初、こう思ってた。
ゴブちゃんが率いるあのゴブリンの軍団を討伐しに来たんだと。
でも、よく考えてみればそれはおかしい。
なぜなら、この俺の感知網すらくぐり抜けた精鋭部隊だったんだあいつらは…。自惚れかも知れないが俺以上に感知能力に長けたヤツがあの中に居たとは考えにくい。別動していたゴブリン本隊の方が見つかったというなら話は解る。でもそうであるなら騎士団はそっちの方に向かう筈だ。
なのに騎士団はあの場に現れた。
最初から俺を狙ってたんだ。俺を狙って追ってきたら、ゴブリンがわんさかいてあんな混戦になってしまって…
じゃあ、なんで俺を?
決まってる。父さんと母さんだ。
拷問室で聞いたあの、『斬り好みのネース』だとか『魔鎚魅子のピノエラ』だとかいうのはきっと、父さんと母さんのことで、その手がかりとして俺を探しに来ていた。
そしてもう一つ。どうしようもなく気になることを俺は…あの拷問室で聞いていた。
『──それに情報によると“件の手がかり君”はネース達と一緒に暮らしてたらしいっすからね。村の連中は見たことがないとか言ってたっスけど……まぁそれが嘘だったとして…』
今思えば、あの日、あの100人の騎士団はスピリの村を訪ねた後だったのかもしれない。
なんでだ?なんで100人も必要だった?ただの村だ。使者の一人や二人、いや捜索隊にしろ、10人でも送っておけばそれで足りる話だった筈だ。何故100人もの部隊を……。
ある日その不自然にようやく気付いた俺はどうしようもなく気になって騎士団のヤツらに酒を差し入れ話を聞いた。
あの頃の俺は既に、『覚えていたくない』という術中にハマっていて…彼らが得意気に話した内容…それを思い出したのは今で…それは、今更だった。
あ んな…
あんまりだ … なんで今頃…
思い出したく …無かった。
『あああの村の酒は旨かったな。』
『ああ旨かった。あれは管理の仕方がいいんだろうな』
『ああ、あのデブかぁ、ああ見えて良心的な店主だったんだなアレ。』
『よりにもよってあんな田舎で酒場やるとか…勿体ねえ』
『でもよ。総合的に見りゃあの開拓村は大したもんだったんじゃねえか?』
『ああ作物も良く実ってたよな。野菜も旨かった』
『ああ、家々の造りは頑丈だったし、仕掛けられてた罠もえげつなかった。』
『やたら強えヤツらもいたな。村長とか、ガーディアンとか、狩人とか…多分アレ全員元冒険者だったんだぜ?』
『やたらと言やあ、あの人妻とか、たまんなかったよな』
『ああ、あんなド田舎には勿体ねえ美人だった。』
『ああ勿体ねえな』
俺の中で、あの村の人達は…NPCなんかではもう、なくなっていた。
あれはもう、確かな『命』だった。
人間だった。
あんなの、人間以外であるはずがない。
そうだ。人間だったから、間違うこともあった。
俺なんか現実世界で間違えてばかりだった。
彼らは俺を差別したりもしたけど、あれは間違ってのことで…だって、最後にはあんなすげー言葉を、あんなすげー沢山もらって
…あんなすげーいい人達と…どう接すれば良かった?
…人間以外として…それ以外に…俺は、どう接すれば良かった?
無理だ。人間として接する以外、どんだけ考えても無理だ。
もうあの人達を心底好きになった俺には。
もう、あの村を心底好きになってしまってた俺には。
もう、これはゲームじゃねえんだよ。
だから、父さんと母さんは、もう俺にとって、本当の父さんであり、母さんなんだ。
だから、バッドはバッドステータスだけど、もう俺にとって相棒にしか思えない。
だから、こんな仕打ちを受けても、生まれに苦しんで、それでもなお抗おうとして今に至ってしまったボンズを、俺は今更、憎めない。
だからこそ、ゆるせない。
だからこそ、コイツらをゆるせない。
コイツらは人間なんかじゃない。
NPCですらもうない。
コイツらは 人外だ。
じゃあもう、俺ももう、人外で、いいじゃないか。
人外には人外として相対して…
それでもう、上等じゃないか。
コイツらは、言ったんだ。
『ああ、あれは勿体無いことしたな。』
次回、奥の手出します
『人外どもへのチュートリアル』
乞うご期待♪




