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転生ライフオンライン〜ネタ枠種族の『ハードエルフ』はチュートリアルからハードモード。  作者: 末廣刈 冨士一
第四章 急転直下なチュートリアル
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第30話 連鎖するチュートリアル(4)率直な感想





 コヒュッ





 突発的反射で息を吸い込む。


 人は緊張する時、息を吸う。


 その証拠にびっくりした時とか緊急時は『ヒィッ』とか『ハッ』とか言って息を吸うよね。

 その反対に温泉に浸かったり弛緩する時はどう?そう。『ぶへぁあ〜〜』とか言って大きく息を吐く。


 そんな肉体反射に則って、

 ジメジメとした地下室ならではのカビ臭さとか鉄錆臭さとか…混ざり合いながら鼻孔と口腔を通じて顔の裏側、深くまで流れ込んでくる…これは血の匂い?

 …いや、無理矢理堪能させられたこの不快も気になるとこだけど。今はそれどこじゃない。


 『辛い。』


 全ての情報はただその一言だけに集約されて処理される。

 やっとの思いで吐き出せる率直な感想も


「痛あぁぁいッッ!」


 こんな感じ。 


「ああもう!ホント痛いっ!!」


 そう、なんとかだけど言葉は吐ける。

 だけど一緒に吐く息の方が、中途半端に終わってしまう。肺に溜まりゆく余分な空気。

 これは腹部を中心として生まれた力みによって起こる現象だ。こうも力んで踏ん張ってると息が吐きにくくなる。こうも呼気を中途半端にせき止められると、身体を動かしたわけでもないのにゼーゼー息も荒くなる。慢性的呼吸困難だ。これについてはさすがの僕も結構なストレスだ。


 そんなこんなで腹部を発信源にした緊張は全身に伝播。この顎も例外ではない。自然と食いしばった状態になる。食いしばったまま、


「ウギギッ……ッ」


 とまた中途半端に息を吐き絞るようにして声を出す。

 終わりなく連鎖する呼吸困難。

 もはや痛みなんかよりこっちのが辛い。


「だがら…ッッ!」


 食いしばりつつ、やっとの思いで吐き捨てられる言葉。

 更に余裕をなくして、より率直さを増した感想。


「…いだいっでぇッッ!」

 

 試しに心から必死に懇願するニュアンスを込めてみた。

 ……んだけど…


「…ええっ!あ痛ッタああい!それも痛あいっ!」


 はぁ…まただ。無慈悲に追加される新たな責め苦。

 さっきの試みをどうやらお相手はお気に召さなかった御様子。僕渾身の『感想』は無視された。虚しく空振りに終わった。


「あ〜……くっそ痛ったいわ〜…」


 かと言って、引込み思案なコミュニケーションでは伝わるものも伝わらない。ほら。伝わってない証拠に、今にも新たな責め苦が追加されようとしてる。ホントやめて欲しい。

 ということでここは『数打ちゃ当たる作戦』にシフトしてみよう。


「いやいやいやマジで痛い痛い痛いからっ!痛いマジで痛いホント死ぬからこんなん普通ならもう死んじゃってるヤツだから……ッ!」


 どうだろうこの必死な感じ。ちゃんと伝わってるかな。


「ってオイオイオイオイ…ったくも〜…ホントいい加減にしないと僕にだって考えが…あいっ!…………テテテごめんなさいすんませ今の嘘ですぅ…っだぁ!から痛いってマジでっ!あーーーー!」


 …ってうっっわ。また上乗せだよっ……鬼ですか?


 【苦痛耐性】とか【精神耐性】とか【自己再生】とか…こういった場合の()()なら既に備えてた僕だけどさ…ホントもういい加減にしとけよ?いくら温厚な僕でもそろそろ我慢の限界なんだからな…って


「やめてやめれホント、ホントに痛いそれっマジでも〜ホンットっ…ううわっ!うわぁ〜………ッカー〜〜……っ痛ったいなぁホントソレ…それ痛ったいなぁ…それは反則だよなぁ〜マジで痛いもんなぁ〜マジで非道いよなぁ〜血も涙もないとはこの事だよなぁ〜…親の顔が見てみたいよホントになぁ〜〜〜…」


 本当にやめ……あ。『親』といえば…


(…父さんと母さん…今頃どうしてんのかな…元気にしてんのかな…)


 なんて感じで上の空だったりすると


「………ええいっこの下郎っ!」


 今度は相手が怒り出す……なんでだよ。


「もっと真剣に痛がらぬか貴様ぁっ!」


 ええ〜……?


「不敬なるぞっ!真摯さを見せろっ!痛がれっ!もっと!ちゃんと痛がれぇ!」


 いやさっきから痛い言うとるがな…。


(ソレなんて逆ギレ?……ってだから!)


「いいい痛い痛い痛いってさっきからさっきからもうずっと言ってますよね僕ああもう!だからソレ痛いってぇ〜もぉーー!ホントに……………ボソ(コイツ、バカなのかな…?)」


【……ジン。そういう態度のこと言ってんじゃないかと僕は思うんだ。】


 バッドはうるさいよっ!


「ココ『コイツ』ぅぅ〜?『コイツ』だとぅ〜〜!?」


 あ。いけね。


【ほら〜〜。】また…バッドうるさいっ!


「それに、『バカ』だとぅっ!?」

(ヒィ地獄耳!?)

「あ。すんませ…つい」

()()、『バカ』だとうぅ〜!?」


(……うわぁ。顔真っ赤にして…それに『ワナワナとする』人初めて見たな…へー…こんな感じなんだ…)


【いや暢気だなっ。】だからうるさいよっ。


(……うん…でもそうだよな。ちゃんと真面目にしないとだよな……でもダメだよ。コイツ話通じない系だもの。ホントどうしようホントの馬鹿だよコイツマジでどうしよう。)


【…………いやいやジンくん?拷問されるのってもっとドキハラとしてシリアスに進行するもんなんじゃないの?】


 ぇーそんなん知るかよー。はあ〜、 もう、 いいや…

 もー勝手にしてくれよもうー…………っと!いうわけで、ハイ!僕は今拷問されております!


 やっぱりです。ありましたねー。拷問。

 想定内過ぎますね。

 いやそこはいい意味で裏切って欲しかったですね。

 と言う訳で恒例の


(クソッタレ運営いいっっっ!!)


 うん。やっぱやっぱのクソゲーでした。運営の怠慢ここに極まれりです。ホント怖くてクソいです『テンセイライフオンライン』。


 ああ、あとこの拷問の詳細な内容についてはですね… 

 描写、控えます。ええ?だって面白くないじゃんそんな描写。


「この私を馬鹿と申すかキサマあぁっ⁉」


 おっと忘れてた。


「いや旦那チョット落ち着いて…」

「下等種族の分際で貴様ァァァあああ!」


 出たコレ。

 さっきからずっとそれ言ってるけど。

 人種差別とかサイテーだからな?

 それにあんたが提唱するヒューマ上位種説が真実ならさ。

 僕だってハードエルフなんて種族選んでなかったわけですよ。


 「(そうだよ…。それが本当ならキャラメイクの時真っ先にヒューマ選んでるっつーの…)ブツブツ…つかマジ最悪だよハードエルフ…ブツブツブツブツ…」


「何をブツブツと……んん!?なんだぁ?その目わあぁッ!?」


(…しっかしコイツ…凄い言いがかりだよなさっきから〜。見てるわけないだろ眼中ないんだからそもそもの話。…それにしても…一体何時間こんなことを…いや、『何日』か?うーん。もう訳わかんなくなってきたなぁ…)


 徹底的に、しかも長時間痛めつけられてると、普段気にしてるアレコレがトコトンどうでも良くなっていくとゆー不思議…初めて知ったよ。いや知りたくなかったけども。


「貴様ぁ!聞いておるのか!?コッチを見ろっ!」


(いや見るな言ったり見ろ言ったり…………え?なになに?……フムフム………って、えぇ?まだ4時間しかたってないのこの拷問タイム?なんだよそんなもんかよ〜…はぁ〜そうですか…まぁでも情報サンキューね【魔脳】さん…っていやいやお礼なんて言っちゃ駄目だろ僕っ)


「おい!…ぬぅううううう聞いておるのかこの…っ!」


(そもそもこんな目にあってんのも【魔脳(コイツ)】が暴走したせいなんだから……は〜。なんかもうホント。イロイロと麻痺し過ぎてるよな最近の僕は。)


「聞いいているのかと!言っているのだぁ!!この!下衆めがああぁぁ!」


 …あ。


「すみません。聞いてませんでした』

「だからその余裕ううぅぅぅゥゥゥゥッ!」

「ええ〜?」

【いや今のはジンが悪い】

 うるさいよ!


(そうだよホントうるさいよどいつもこいつもっ!つかいい加減飽きろよこの変態…っつかなんでお前の方が泣きそうな顔してんだよ…っ!?)


 こんな感じの拷問初体験により、僕の貴族への第一印象は最悪なものになったのでした……って、ええ?こんな悲惨なまま次話に続くの?今回の僕『痛い』しか言ってないんだけどっ!?



 …まあいいか。


 本当にもう、イロイロとどうでもいいや。疲れた。


 今の『率直な感想』は……そう…こんな感じ。


(はあ…そういやゴブちゃんは森にちゃんと辿り着けたのかなぁ…)






この小説はブクマ、感想、評価ポイント、なろう勝手にランキングなどなど…読者の皆様の暖かいご支援により投稿維持出来ております。


有難う御座いますm(_ _)m



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