第18話 チュートリアルを無事生き抜けるか不安ですけど頑張ります。〜内蔵結界マジ呪い
良い休日を♪(^o^)/
ここまでで述べたとおり、
ドワーフの魔力バランスは体魔に偏っている。
対して、
エルフの魔力バランスは精魔に偏っている。
そして、
ハードエルフの魔力バランスは……先天的に失調状態。
…これはドワーフとエルフ、これら両極端なニ種族の間に生まれ落ちてしまったのが原因…なんだろう。
ハードエルフは筋力や耐久はドワーフ並でしかもエルフ並の素早さまで併せ持つから、体魔が多く生産される。その量はアニマに匹敵するほどだ。
で、あるのに、狂った魔炉が精魔までをも多く生産しようとする。大量に体魔を生産したあとに残った少しの源魔を使って生成された精魔の量だけでは『少なすぎる』と魔炉が満足してくれないのだ。
エルフの血が流れるゆえの性なのか。
つまり、僕の魔炉は体魔と精魔、その両方でドワーフの特性とエルフの特性を満足させようとしている……もしそれが成功するなら理想だけど、そんな美味い話はない。
身体能力に体魔を多く注いだ分、精魔は少なくて然るべき。…実際、僕の精魔の限界値はそれ相応に少なかった。
…それでも魔炉がエルフ並の精魔を得ようとする。
本来の精魔の限界量を満たしても、必要以上に魔素を吸収して源魔を生産し、無意味に『精魔を生産補填しようとする誤作動』を繰り返す。何度も。
でもどんだけ源魔を生成しても、その源魔は精魔に変換されることはない。
僕が保有出来る精魔の限界量は既に超えている訳だから。それでも僕の魔炉は『このままでは精魔が足りない!』っていう勘違いを止めないんだ。…ホントやめてくれと言いたい。
そして僕の制御から離れた魔炉くんは勘違いしたまんま、精魔の原料とすべく源魔を生成し続ける……ああなんて意固地な僕の魔炉。
そう。悪循環。
それは『魔力バランス』の崩壊。
つまりは死の危険を意味する。
つまりつまり、
僕の魔炉は生まれた時には既に暴走していたんだね。
そしてそれが当たり前になってたらしい。
そんな水面下の進行は、遂に表面化する。
『魔炉狂い』という難病に形を変えて。
何このゲーム。どんだけ判りにくいトラップ仕掛けてんだって話だろ。
もちろん、生産され過ぎた源魔は精魔に変換出来ないままなのだから、強制的に次のステージへ移行しまーす。
しょうがないので空魔にも変換されていたらしいけど……それにもやはり、限界はあったようでーす。
はあ…(溜息)
空魔の限界値もそりゃ突破してましたよ勿論。
そうなるとどうなる?
僕という器に収まり切らなくなったんだ。
行き場を失った源魔はいずこへ………?
そりゃ勿論、満タンになっても注がれるなら溢れ出すだけだ……そうです。身体の外へと溢れ出てしまったのです。
だが、何度も言うけどこの世界の生物にとって魔力は無くてはならないものなんだ。
『血液と同じ位に』ね。
という訳で、僕の魔炉がこの『魔力流出』を『大量出血』と同じくらいの非常事態だと錯覚してしまっても無理もないこと。
では、血が溢れ出ないようにする時、人体はどうする?
そう、かさぶたを作って止血しようとするよね。
この場合、僕の魔炉は魔力が体外に溢れ出ないように、身体の内側に『魔力を通さないための膜…のようなもの』を張ってしまった。
つまり肉体の内側に向けて結界を張ってしまうという、不具合に不具合を重ねる事態が発生。
僕はこれを『内蔵結界』と呼んでる。
つまり、無尽蔵に生み出されて溢れ出る魔力を、その『内蔵結界』で体内に無理矢理封じ込めてしまったんだ。
まとめまーす。
常に、魔力は飽和状態。
なのに、魔力は生産され続ける。
ついには、魔力が肉体から溢れ出す。
溢れないようにと、内蔵結界で蓋までされる。
どうなる?
そんなの、
《パアァン!!》
そう。パンクするに決まってる。
結果…ハードエルフという種族には、死の影が付き纏う。
…じゃあどうするのかって?
…大変だったよ。勿論。もの凄くね。
母さんに助けられて一時は命を取りとめたけど、
依然、命の危機は去ってない状態。
まず、この不具合の大元である、
『暴走生産により有り余った源魔』
これを何とかしなきゃならなかった。
だから僕はまず、肉体を常に活性化させることに努めた。
体魔を無駄に消費しようとしたわけだ。
ランニングとか父さんとの無茶な稽古とか他にも様々にこの肉体を虐めてきたのは、このためでもあった。
勿論、スキルを取得することを目論んでのことでもあったけどね。
こうすることでひっきりなしに生産され続ける源魔のある程度は体魔に変換される。
つまり、体魔の消費は源魔の消費にも繋がるわけだね。
…でもどんなに頑張ってもその成果は『ある程度』止まり。
僕の『源魔の生産量』はその無茶な消費量の限界をすら超えたものだったんだ。
じゃあ、次は?
瞑想でもして精心を活性化させる?
源魔を精魔に変換させ、消費するために?
もちろんそうすべきだし、実際にそうしてる。
生産過多で死にかけてる以上、
消費量は多い程良い訳なんだから。
そう。…出来ないわけでは無い。
でも、僕の場合その効果は薄い。
精魔は『MPを捻出する魔力』なだけあって、その活動のメインは『魔法』や武具術の『武技』…つまり『放出系スキルの行使』にある。
でも僕の場合、内蔵結界が邪魔をして魔力を体外に放出出来ないんだから、それは無理な話。よって精魔はあまり消費出来ず。残念。
…ということで微々たる精魔の消費では、源魔の消費も微々たるもの。ホント残念。
なので余った源魔は、最終的に空魔に変換されることになる。つまり、ここが最後の砦だ。
この段階で源魔を何とか消費しなきゃ。
また溢れ出す。そして其れは内蔵結界に阻まれる。
そうなるとまた、あの激痛だ。
あの、『魔炉狂い』という名の地獄。
ブルル…っ!
ホント…思い出しただけで身の毛もよだつ…。
魔力なんて感じでみないと解らないから伝えようがないけど…
あれ。本っっ当に、地獄だよ?
なら、そうならないためには?
まあ、やっぱりこの場合も、『空魔の消費に努めるべき』なんだけど。
というか、それしかないんだけど…。
(……ああ〜長かったっ!)
ここでやっと、話が繋がってくんだよね!
『スキルを大量ゲットしなきゃ死ぬ』って僕が言ってたアレ。
そう、僕がスキルの習得に必死になってたのは、この空魔を消費するためだったんだよね。
空魔はスキル管理に使われる魔力でもあるから。
スキルを覚えれば覚えるほど、成長させればさせるほど、進化させればさせるほど、消費される空魔は多くなる。
しかも、スキルというのは管理維持するだけでも空魔を消費する。
スキルさえたくさん蔵していれば、無尽蔵に供給される源魔はスキル維持の為の空魔に変換され続ける。
そして変換されるそばからその空魔は大量のスキル群を管理維持するために消費続け…という感じのサイクルが遂に完成っ!
まあでも、解決というより、『相殺』だなこれは。
かなり危うい対処法になってしまったのは自覚してる。
でもこれ以上の最善がなかったのだからしょうがない。
でも、まあ、悪いことばかりでもなかったと思う。
このおかげで僕はスキルを大量にゲットできた訳だし。
だって、これって通常、ありえないことなんだ。
普通、スキルの取得個数には限界があるんだから。
スキル管理に必要な空魔に限界値がある以上、それは当然のことでしょ?
確かレベル5の場合、取得出来るスキルの数は平均で3〜4個くらい…じゃなかったかなー…。
通常、スキルを増やすために空魔の量を増やしたいなら
『レベルを上げる。』
↓
『総魔力量を増やす』
↓
『ついでに空魔の限界値も上げる。』
という形でしか空魔の量は増えない。
つまり、空魔を増やしたいならレベルを上げるしかないんだ。
でも前述した通り、レベルを上げてしまうとスキルの伸びは極端に悪くなるんだよ。それこそジレンマというやつなんだけど…。
きっと『この世界の理』としても、そのジレンマこそが正しい在り方。
ゲームバランス的見地で見てみれば、そう簡単に強力なスキルを大量にゲットされる訳にはいかないだろうからね。
その点、僕は世界の理から外れた存在。
ゲーム的に言えば『ネタ枠種族』。
ハードエルフだ。
というわけで、不遇不遇と騒いできたけども、その不遇を逆に利用する事で、低レベルな内にスキルを大量ゲット出来てしまったのだ。この結果だけを見れば、この種族を選択して良かったのかも知れないなー。
え?いや、僕だって空魔の限界量は他の人と同じくらいしかないよ?しかも現在の僕のレベルは2。
通常通りならレベルが2しかないなら、取得出来るスキルはせいぜいが2、3個だったはずだ。この程度のスキルを維持する分量しか通常、空魔を保有できないんだ。…通常はね。
でもね。減らないんだ。僕の場合は。空魔が。
減ったそばから源魔が空魔に変換されて補完されちゃうから。
そんでまた空魔消費されても、すぐさま源魔がまた空魔に変換される。そしてすぐ回復しちゃうというスパイラル。
だから空魔は欠乏しないし、異世界モノでお約束な『魔力欠乏症を引き起こして気絶』なんてことも起こらない。
毎日毎日休まず無茶な日課に励んで、スキルアップに励んでるのは、この無理な魔力生産を逆に利用して『スキル維持に使われる魔力のランニングコスト』を、少しでも上げるため。
そうやって僕は、無駄に生産され続ける源魔を、空魔に変換させ続けることで消費して…なんとかんとか…生き延びてきた。
結果、魔力によるパンク(散華)を回避しつつ、通常ではあり得ない量のスキルをゲットするに至った。
これが『裏ワザ』の正体だ。
解ってくれた?
うーん。説明回って難しい。
なんて言えば解りやすくなるのか…
えーと…そうだな……
舞台は安定した資金繰りから程遠いとあるブラック企業。
返す宛のない借金をしまくる馬鹿社長が『僕の魔炉』。
会社立て直すために駆けずり回ってかき集めた売上金の全てを借金返済に投入されてしまう……そんな社畜さんが『僕とスキル達』。 ……って感じはどう?
(そうそうwwこれって言ってしまえば『自転車操業』ってやつだ。僕はそれを言いたかった………ってオイ!)
あ。……そういや、この時か。あの、不名誉な【称号】を付与されたのは…
↓
【禁忌に触れた者】
条件…世界の理の裏を突く卑劣漢である。
効果…Fスキル覚醒時、“業シリーズ”の取得確率増大。
……ってオイイ!卑劣漢とか……
じゃあどうすりゃ良かったんですか?
コラ答えろや運営コラ運営いいいい!
………いやもういいや。このくだり。
もう疲れたし、飽きたし、諦めた。あはー。
それに他の称号で助けられた部分も確かにあった訳だし。
↓
【スキルコレクター】
条件…レベル4以下でスキルを6以上取得。
効果…敵を倒し、魔素を取り込む際、レベル経験値への変換率が下降する。その代わり、スキル経験値への変換率が増大。つまりは『レベルが上がりにくくなる代わりにスキルを取得しやすく、成長させやすくなる。』
レベルアップしないように
ひたすらスキルアップしてたらゲットしたんだけど。
今の状況には合ってるよねこの称号は。
スキルアップのしやすさが更にブーストされたし。
まあ、レベルに関してはのちのちに響いてきそうだけど…。
…あ〜…でもスッキリしたー。
やっと言えたー。
前振りから随分話数稼いじゃったなー
……え?ああ気にしないでコッチの話
…ってドッチの話?
いや、最近にしてやっとなんだよー…。
狂った魔炉の生産速度に、死に物狂いな消費速度が追いついてきたのは。
つまり、最近にしてやっと、我が社の資金繰り…もとい僕の魔力バランスは安定したというわけ。
利子の返済だけに留めなきゃいけないってのが難儀なんだけど。
まあね、
でもね。
「結局、魔法は使えないんだよね…。」
体外に魔力を放出出来ないんだから当然だよね。
勿論、斬撃だって飛ばせないんだよねー。あはー。
何を隠そうこの種族!ハードエルフ、とは!
エルフなのに!
アニマ以上に肉弾特化なエルフなのだった!
以上!ちくしょうめっ!
「む。何か言ったか?ジン。」
「いえ。何も………でもないかっ。いい加減セクハラやめて下さいよ師匠っ」
「むぅぅっ!良いではないかっ!!」
「 ……………!(え。なんで逆ギレ?怖っ)」
……はあ(溜息)
(……内蔵結界かぁ……この魔法社会で独り鎖国状態な感じな僕………ってどこまで引きこもり体質?こんなゲーム世界にまでついて回るのかこの負のステータス!……うん。もはや呪いだなコレは。)
いやいやそんな軽く考えてたらダメだぞ僕?
コレマジで厄介だぞ?ちょっと考えてみりゃ分かる。
魔物ってさ。
ある一定のラインを超えるともはや別物。
ホント正真正銘の化け物になってくんだよ。
3m超えとか当たり前。
10m超え…は珍しいけど、いなくもないし、下手すりゃもっとデカイのもいる。
そんなデカブツにだよ?
剣振って特攻とか…普通あり得る?
(…いや、まあ有りえるか。今までプレイしたVRゲーでもそんなん当たり前だったしな…)
……ってないないない!やっぱないって!
例えゲームでもさ!
『痛覚規制なし、復活仕様なし』
こんな環境設定でそんな自虐プレイはマジで無い!
マジで、無い! マジで、怖い!
誰か下さい遠距離攻撃…(切·実)
(ホント怖ぃ………あ。あー…効いてきた。【精神耐性】。)
うーん。マジ便利だよなスキルって…。
リアルでも欲しいなコレ…(切·実)
(…あ)
あはは。自分のことばっか言って…ゴメンねー
……随分長々とした説明回だったけど(苦笑)
みんな大丈夫だった?退屈だったならゴメンね(汗)
……それと師匠。
「 む!(なんだ!)」
「……いい加減にしなさいッ!」
「 むー!(ヤだ!)」
…はいっ。
僕の特異体質も大概ですがねっ。
周りの人もマトモなのはいませんでしたねっ。
…というお話。いやどんなお話?
ああ待って…グタグタ回とか言わないでっ!
●これはゲームである。
●特殊なAIを使っててアホ程リアルである。
●NPCには原始人から進化させるという暴挙。
●NPCにリアル生理現象をプログラムする上で必要な措置だった。
●四苦八苦しながらNPCさん生理現象に慣れていく。
●開発者さん「あら?魔法いんべ?→なら魔素もいんべな?→あらNPCさ魔炉さこさえたべ→あいや魔力も使っでる→魔法やスキルもだぁ。めでたすめでたす」
●結果電脳世界に超絶リアル異世界出来上がり。
●めでたく異世界の歴史が動きだす。
●開発者A「やべ。やりすぎた。流石にこんなリアル世界でプレイヤー遊ばすの不味くない?」
●開発者B「じゃあプレイヤー全員赤ん坊からのスタートで異世界教育するか…というわけで転生システムなんかどうよ?」
●開発者A「あーそれ頂き。チュートリアルってことにしとけばいいか。んで、スキップ機能つけといて…っと。あと死に戻り禁止。痛覚フルオン。こんだけやっとけばプレイヤーも悪さ出来まい。『あとは自己責任で。』いいねこの言葉。よし。あとは知らん。」
●そしてジンくん「おいおいどうなってんのこのゲーム?いきなり死にかけるし、かなりの差別を受けるし、魔法使えないし……まあゲーム好きだから頑張るけどね。──黙々──その結果村人とも仲良くなったし、魔力も熟知しつつあるし、スキルとかアホほどゲット出来たけど、そのおかげで今度は称号が酷いことになって、相変わらず魔法使えない、つか遠距離攻撃全滅(笑)…あれ?僕って運営さんに嫌われてる?」
●開発者ーズ「…コイツ…すげーな…。」
●ジンくん「ちょ…!待てえ!そんだけ?そんだけなの?」
ジンくんの頭の中ではこんな感じでしょうか笑
では次回!「チュートリアルで必殺技編み出すとか…天才かもしれない。」
乞うご期待!
 




