第16話 チュートリアルでいきなり死にかけた件について。〜四元魔力。
だんだん本格化してきたチュートリアルからのハードモード。
今日も宜しくお願い申し上げますm(_ _)m
僕は、不治の病に冒されていた。
病の名は、『魔炉狂い』。
その発症原因や症状は様々だ。
とにかく体内に宿る『魔炉』が暴走してしまった状態を言うらしい。
僕の場合は先天的な魔炉の欠陥。
知らぬ間に進行して少しずつの衰弱。
誰も気付かずの4年間。
ただ身体が弱いだけと思われていたのが
急な激痛を訴え、その肉体が崩壊を始め
崩壊が始まればもう打つ手なし。
あとは死を待つだけ。
それが僕の場合の『魔炉狂い』。
つまり、僕は死にかけてた……っていうか、死亡確定状態だったわけなんだけど…その後、僕はどうなったのか。
…まあ今もチュートリアルを体験中なのを見れば、お察しだよね。無事…とは言えないけど…とにかく僕は、まだ生きてる。
師匠の的確なアドバイスによって、そしてそのアドバイスを受けた母さんの大活躍によって、僕はあの絶対絶命のピンチから生還できた。そしたら称号を付与された。
【不屈の生還者】
条件…絶体絶命の窮地から生還した。
効果…死ににくくなるが、その代わり、不運に付き纏われる。
………………
…これだよ…。
『不運に付き纏われ』シリーズ…どうやら僕はこのゲームの運営に随分と嫌われているらしいな……いや、うん。これ以上追求すると悲しくなる。
少し話を変えてようかっ
この世界には太陽とか月がない。
この、リアルを徹底追求して作り込まれたゲーム世界に、なぜ太陽と月がないのか?考えてみればおかしくない?おかしいよね?
太陽と月がないとなると、色んな不具合がある。まずは方向が分からなくなる。星はあるようだが、あれはどうやら遥か遠くにある恒星の輝きではないらしいし、毎日不規則にその位置を変えるので、方向を知る材料にはなりえない。
それに太陽や月というものは照らしたり、温めたりする以外でも、生命に大きく影響を及ぼす要因だったはずだ。
例えば、太陽で言えば気候への影響や光合成。月でいうなら引力とか、潮の満ち引きだとか。
何故こんな話をするのかというと、『開発者達は何らかの理由から、意図的に太陽と月を撤廃した』んだと僕は睨んでる。
冒険する上でさり気なくも重要過ぎる太陽と月が、この世界に無い理由はそれ以外に考えられないから。
じゃあなぜ開発者達はそんな重要な物をわざわざ撤廃したのか?リアル同然の生理現象をプログラムされたNPC達や僕達プレイヤーの肉体への影響を考えれば、それはかなり苦しい決断だったはずなのに。
(これは僕の勝手な推測だけど…)
答えは『魔素』と、『魔力』にある。
この世界を構成する成分の一つとして『魔素』というものがある。コレはこのゲームの開発者達が設定したものらしいけど、地球をモデルにプログラムされた生態にとってこの魔素は毒にも等しいものだったらしい。当たり前だ。地球には無いものなんだから。
この世界の学者の中には『魔素』を『魔詛』と呼び『魔の呪いである』と定義する人もいるくらいだ。
魔素は、NPC始祖達(開発者が創造したNPC版の原始人?)が人としての知恵を身に付ける前にまず立ち塞がった試練の一つだった。
電脳世界の住人である彼らとしては、生理現象に適応するだけでも大変なことなのに…
この魔素にも適応しなければならず、それはもちろん茨の道な訳で、実際何度も絶滅しかけたらしい。
彼らNPC始祖達はそれでも諦めず、この難題を克服すべく永い時をかけて肉体と精神の進化を待った。
そして遂に『魔炉』という見えない臓器を体内に宿す事に成功した。そして、その魔炉の中へ取り込んだ魔素を『魔力』に変換することも覚えた。
つまりその『魔力』を生命維持に必要な要素として肉体に取り込む過程で『魔素』という激物と折り合いをつけ、生き永らえることが出来るようになったんだそうだ。
彼らNPC達はその魔力を使いこなすとその可能性にも気づき始めた。それから『スキル』やそれに属する『魔法』という概念が生まれるまでは永くはかからなかった。
つまり、この世界の人々にとって今や、『魔素』とは『第二の酸素』みたいなもので、『魔力』とは『第二の血液』みたいなもの。
そしてその魔力を使って行使される『魔法』や『武具術』を始めとした【スキル】というものは、新たな生命活動の一つだと考えたらいい。
僕らにとってゲーム要素でしかなかったこの、魔素と魔力とスキルだけど、今は『自然の一部』だと考えるべきだ。それほどこの世界に根差してる。それこそ……太陽と月の恩恵を押しのけてしまう程に。
そう。太陽と月が及ぼす様々な影響はこの世界の生態にとって邪魔な物となってしまったのではないだろうか?だから、撤廃された。運営によって。
まあこれは僕の勝手な想像だけどね。でも、当たらずも遠からずってやつだと思う。
つまり、『現実世界の僕』と『この世界のジンくん』は、同じ人間であるように見えて、もはや全くの別生物になってしまってる。…という訳で、この世界の生命にとって、魔詛とは、魔力とは、スキルとは?生きる上でいかに必要ものであるかはわかってもらえたかな。
解ってもらえたなら、病気の話に戻すね。
さっき僕は『魔力は第二の血液だ』って言ったけど……想像してみて欲しい。
もし、その血圧が上がり過ぎたら?ボコボコと大量の血瘤が出来てしまうほどに。
その血瘤が、大出血を引き起こすほど度を越したものだったら?
それが、実際に起こった。僕の身体の中で。
魔力の暴走現象だ……つまり、『魔力バランス』が崩壊した。
それで僕は死にかけたんだけど、この経験は魔力をより深く知るためのきっかけにもなった。
これを機に僕は、師匠の助けを借りつつ、魔法を行使することよりも『体内の魔力をいかにコントロールするか』に特化して研究を重ねるようになっていった。
そしてその研究により、
魔力には大まかに分けて四段階の形態があり…
つまり四種類の魔力があるということが解った。
僕はこの四種の魔力を総称して、『四元魔力』と名付けることにした──
一段階《源魔》
魔詛を魔力に変換したばかりで、まだ役割が決まっていない純粋な魔力だ。この源魔が変換されて、次段階以降の三種魔力は生成される。
二段階《体魔》
まず最初に源魔から変換され、生成される魔力がこれだ。
肉体を強化したり、その強化された肉体を維持するためにある魔力。
三段階《精魔》
体魔へと変換された後、残った源魔で次に変換、生成される魔力だ。
これは肉体だけでは補えない部分…精神力などを強化する魔力であり、強化された肉体を活かすためにある魔力。もしくは肉体の強化が足りない場合はそれをサポートするためにある魔力。
このいずれかをすることでバランスをとり、自我を保つためにある魔力だ。
魔法や武具術の武技を始めとする【放出系のスキル】。これらを発動する際に使われる『MP』も、この精魔から捻出される。
四段階《空魔》
これは体魔や精魔に変換され、心身に分配された後、『余った』源魔が変換された魔力。
でも余剰魔力…ではないようだ。
大事な魔力であるらしく、個人差はあるけど必ず一定比率で確保されてる。
これは予備魔力…とでも呼べるものであるらしい。
そして何色にも染まることが出来そうな、不思議な魔力。
『無色透明の魔力』といったところか。
頭に『空』と付けたのは『空白』という言葉から来てる。
これは『空白の余地がある』という意味だ。
つまりまだよく解ってないんだよね。この魔力。
いくつかの役割は解ったんだけど……他にもまだ色々と隠された能力がありそうだ。
別名、『空白の謎魔力。』
解った性質の一つとして、宿す人間の『体魔と精魔の比率によってその特性が変わる』というものがある。
例えば、
体魔の比率が多いなら、『体魔に似た空魔』になり、
精魔力の比率が多いなら、『精魔に似た空魔』となる。
そのようにして『特性を得た空魔』は、その特性に合わせてスキルの覚醒や成長や進化を手助け出来るようになってるみたいだ。
例えば
『体魔に似た空魔』を持つ人は『肉体強化系』や『感覚強化系』のスキルなどを身につけやすくなり、
『精魔に似た空魔』を持つ人は『魔法系』や『精神強化系』のスキルなどを身につけやすくなる。
以上が『四元魔力』という僕独自の理論なんだけど。
この仮説に辿り着けたことは、本当に幸運なことだった。
ここにたどり着くまでの過程を思えば、周囲から見た僕は奇人以外の何者でもなかったはずだ。
それでも辿り着けたのは、もちろん家族の理解や村人達の許容に随分と助けられたと理解してる。
でもきっと、師匠の助けなしにはこの理論には達することは出来なかった。
だから僕も師匠に対して決して軽くない敬意がある。だから少々のオイタには目を瞑るというもの。悔しいけど、エロ師匠に感謝。
でも運営には物申したいっ!一体何なのこの称号?
↓
【皮肉なる魔力学師】
条件…魔力の具現化をすることもなしに、魔力の深淵を知るという稀有な体験をしたことがある。
効果…魔力の本質に通じやすくなる。その過程では魔力運用に精通することになるだろう。その代わり、『人外化』しやすくなる危険も。
確かに魔力事情に精通しつつありますよありがとうっ。
でもさ…
『人外化』って……これは勘弁して欲しかった。こっちは『嫌われ不幸体質』だけでもうすでに一杯一杯なんですが?これ以上変な属性、追加しないでほしい…。マジノーサンキューだ。
……とにかく、
今後僕がこのゲーム世界を生き抜く上でこの『四元魔力』は一番重要な指針になっていくだろう…
……………って何だコレ。
コレ、ゲームでしょうが。
なんでこんな苦労して魔力について勉強してんだろ僕。
ってのが正直なトコなんだが運営さん?
多分他のプレイヤーはみんな魔法ライフをエンジョイしてる筈だよね。まあ知らないんだけど。知らないけどさっ!
なのに僕は何?
こんな命削るような猛勉強してんだぜ?
なのにまだ何の魔法も使えておりませーん!あはは!ウケるっ!アハハハハハハハハハハハハ!
ちくっっしょうっ!!!!
そして…あ。 …ゴメン!文量が…後半に続くっ!
新要素、4つの魔力。
次はこの四元魔力という観点から種族について紐解いていこうかと思います。
次回!「チュートリアルで死にかけたらなんだか色々わかってきた。」
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