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「 スリーフィンガーファストボールって知ってる?」
猛が首を振る。
僕はカバンからボールを取り出し握りを見せる。人指し指、中指、薬指の三本の指を縫い目にかけて残り二本の指でボールを支える魔球。
「それってどんな変化するボールになるんだ」
彼は魔球に少し食いついた。十代前半には魔とか暗黒とかのキーワードに滅法弱いのだ。
「簡単に言うとストレートが不規則に動く球。ムービングファストボールの上位魔法ということね」
「そんな変化球を俺が投げられるのか?」
ペテン師にだまされないぞと半信半疑で質問してきた。
「猛の球って捕りにくいってよく言われてこなかった?」
「うん、しょっちゅう言われるからもうスルーしてきた」
「普通に投げても指がボールにかかって変化してしまうの。とくに猛の指は一本多くて長いので軽くストレートを投げても ボールに引っかかって変化するの」
「これを意図的にのばせば凄い武器になると思わない?」彼は武器という単語にかなり食いつく。
「でも、二人でプロを目指すというのがよく分からないよ」
僕は正直に話す。
「生まれたときからプロ野球選手を目指しているの……でも年を重ねるごとに女という壁が高く厚くなり夢を押しつぶす」
たぶん僕はこのとき泣いていた。
「抱き合わせ商法。売れないゲームをつけて人気ゲーム機を売るの」
「誠ちゃんが売れないゲームで俺が人気ゲーム機……正直自分が人気ゲームになるとは思えないけど、もしそれが可能で売れないゲームに存在意義なんてあるのかい?」
「僕は野球が大好き。ただの野球好なら誰でも経験できる。でもプロ野球は一握りの人しか足を踏み入れることが出来ない聖地。一流のプレイを見せるためだけに作られた野球の聖地。」
彼の聞きたいことは分かる
「あなたの魔球をとれるのは私だけ!今まで見たこともないボールを三流のキャッチャーが捕れると思う、リード出来ると思う!!」
僕は声を荒げる。
「もし俺がその魔球を習得できなかったら誠ちゃんはどうするの?」
彼は異常者を見るように僕を見る。
「初めてあったその日にプロ野球を目指そうなんてコクられるのは都市伝説です」
彼は笑った。死ぬほど笑った。店員に騒がないでくださいと出禁を言い渡されそうになった。
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