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 プロ野球オールスター戦まで二週間を切った頃、横浜ドルフィンズ営業部は怒濤の嵐に巻き込まれていた。


「課長! 77番のユニホームがどの店舗からも無くなって追加の催促が止まりません」


入社二年目の花川悦子が悲鳴を上げる。


「業者に連絡すればいいだけのことだろ!」


花井課長が語気を荒げる


「何言ってんですか……そのラインはピンクのユニホームで埋まってます!」


 真っ青になる課長。今、横浜ドルフィンズは誠グッズバブルに沸いていた。彼女のグッズを出せば何でも売れる状態……営業部としてはこの降って湧いたようなブームに乗ればいい話だった。しかし、球場内でグッズを売るだけでも在庫が足らないという異常事態に陥ってしまった。


 営業部は小さな工場に頭を下げながら誠ちゃんグッズを量産させている。部長の机の上にはさらに、新商品と追加生産の許可を待っている書類が山積みされていた。彼はその書類に判子を押すかためらっている。


 彼が入社して直ぐの事――助っ人外国人クロマニオンという選手が、CMを切っ掛けに小学生の間で一大ブームを巻き起こした。グッズは飛ぶように売れ、彼の成績も右肩上がりであった。彼の商品の大量生産をとった途端その悲劇は起こった。そう、彼は怪我をして球場に出られなくなった。小学生の気分は乙女の心より移ろいやすい。彼がテレビ画面から消えた途端、行き場を失った在庫の山が倉庫に残った。さらに悲劇は続く、問屋に残った返品分も倉庫に帰ってきてその金額は3億円にも上った。


 彼は当時のことを思い出しながら震える手で判子を押す。


「何かあったときは彼女と心中だ……」


 そう呟きながら、忙しそうに働いている部下を見た。

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