6、元勇者、商業都市デルドラッドを占領する
「ダルセン将軍、魔法騎士である将軍は民を蹂躙し、婦女子に暴行を加えるとは感心しないな。死をもって償うか。副将軍のように」
俺は副将軍の首に目をやる。将軍は震えて、膝をつく。
「何をしているのですか、将軍!あなたも魔法騎士の一人であるならば、戦いなさい!」
ペリーヌが叫ぶ。ペリーヌは剣を抜き放ち、俺に向けてくる。
「ペリーヌ、模擬戦で俺に勝ったことないだろ?」
俺も迎え撃つ構えを見せた。
「今日は勝ちますわよっ」
ペリーヌはにやりと微笑む。俺はペリーヌのパーティメンバーを見た。いずれも名うての騎士だ。
「いくらあなたとて、多勢に無勢のはず。消し飛びなさいな」
騎士たちの頭上に火球が浮かぶ。俺を焼き尽くす計画だろう。将軍や領主は驚いて、逃げ出している。
「ウフフ、ユウキ先輩、あなたみたいな高貴の血筋を殺すことは本当は嫌なんですけど、下民の肩を持つのであれば、死んでいただくまでですわ」
ペリーヌは邪悪な笑みを浮かべる。
「死ねッ、ユウキッ」
ペリーヌが右手を振り上げる。騎士たちの顔色が変わった。
「ペリーヌ、甘いな。魔王に敗れた俺は一つの事を学んだ。それは汚い手段でも勝ってしまえば、正義ということだ。こっちもティルヌーンという悪魔の力を借りる」
ティルヌーン、悪魔の美女が天井に浮遊している。ティルヌーンの攻撃が的確にペリーヌの背後の若者たちに直撃していた。五人の男が昏倒する。
「魔王の配下、ティルヌーンです。十五魔将といえば、わかっていただけますか」
「へ・・・・・・魔王の大幹部クラスがぁっ、な、何で前線にぃ」
ペリーヌは目を見開いて驚いている。馬鹿な女だ。弱い魔族を殲滅する楽な仕事と思っていたのだろうが、ラスボス登場で泡を食っている。
ペリーヌはぺたんと尻もちをつく。
「さて、審判の時だな。ペリーヌ、どうする?」
「命だけはお助けを。ティルヌーン様、この者たちの命は差し出します。将軍も領主も好きなように切り刻んで下さい。わ、私は死にたくない」
「こう言ってるけど、ユウキ。どうする?」
「そうですね。部下を見捨てる人間のクズにはお仕置きが必要でしょう」
ペリーヌの顔が絶望に染まる。察しがいいな、ペリーヌ。今日からは地獄を味あわせてやる。プリシラ一味の手始めにお前にとっておきの復讐をしてやるよ。
*****
商業都市・デルドラッドは瞬く間に俺の手に落ちた。領主・キ―リエは俺に頭を垂れる。他にも有力な商人、あと兵たちが俺の元に集う。俺は城の門の上から、彼らの顔を見る。
「デルドラッドは魔王陛下のものとなった!俺は元勇者ユウキ。今は魔王陛下の部下だ!愚かなるプリシラ女帝を討ち、王国を魔族のモノとする!みな、心せよ!」
有力者たちから賛同の声が上がる。利権に目のくらんだ卑しい奴らだ。せいぜい、俺の復讐にこき使ってやろう。俺は内心の暗い喜びを抑えると、新しい部下たちの顔を一つ一つじっくりと吟味していった。