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第79話 目的の為の行動は、どこかれはじめたらいいのかわからない。

神城との会話で、自分が勝手に壁を作っていたことに気づき、次の日の昼休み、なんとなく中庭のベンチへと足を運ぶ。


いや、マジで頑張る。頑張らなければならない。世の中は可笑しい。頑張らないためにも、しっかりと頑張らなければ、頑張りたくないが成立しないように、やはり何を成すためにもまずは行動が必要なのである。


袋に入れたパンをガサガサと鳴らしながら、ベンチへ向かうと、そこにはあの3人の姿があった。


だがまて、どうやって声をかけようか?


「よぉ、調子はどうだマイメン。うぇーい」とハイタッチ…いや違うな…。


「このパンうまいんだけど食べる…?」なんかキモいな…むしろ怖い。キモ怖い。キモ怖いってもうそれゾンビとかじゃん。化け物じゃん。


ベンチの近く、俺は少し離れたところで右往左往しながら思考する。すると、ベンチから立ち上がりこちらへ向かってくるヤツが一人。


「…アンタさっきから何やってんの…? 超キモいけど…」


おぉふ…仁井園さん、今のワタクシめにその言葉は3倍増しで突き刺さるので、少し言葉の剣を収めてもらえませんかね?


「…まじで?」


「いや、普通にキモいでしょ…てか周りから超見られてるし…」


呆れ気味に言って、時計台の方に視線を向ける仁井園、その視線を追うようにして俺もそちらを見ると、あのカップルがひそひそと俺の方を見ながら時折笑ったりなんかして会話していた。砕け散れ!


「…あれだよな、なんで人ってヒソヒソ話とかしてるの見ると、自分のことなんじゃないか?って疑心暗鬼に陥るんだろうな…」


「いや、アレは明らかにアンタのこと話してるでしょ」


「バッカおまえ、人は自分で思うよりあんま他人なんか気にしてねぇんだよ。つまりはそんな被害妄想はするだけ無駄だ、むしろ自意識過剰とまで言っていい」


「アンタは自意識なさすぎだけどね」


仁井園さん、やっぱ冷たくないですかね?あれですか?心の距離ですか?


「とにかく、こっち来な」


そう言って仁井園は俺の手をつかむと引っ張ってベンチへと連れていく。


「待て待て待て待て、まだ心の準備が…っ」


「は?心の準備? 何の話?アンタに目の前チラチラされてる方の身にもなってよ」


「いや、だから」


仁井園は立ち止まり、振り向いて俺のネクタイを掴むとグッと自分の方に引き寄せる


「うおっ?!」


「マジでめんどくさい、アンタなんなの?女子なわけ?女々しすぎん!? あたし達の事避けてるかと思えば遠目にチラチラ見てみたり、話したそうな顔して話しかけなかったり」


「いや、だってそれは…」


「だってもクソもヘチマもあるか! 情けないのも無駄に石橋を叩くのも、偏屈なのも、理屈建てなきゃ動けないのもアタシと美羽は知ってる!! そりゃ、ちょっといろいろめんどくさい感じになってるのも自覚あるけど、それでもよ!」


「な、なんだよ…」


「その…なに…?アタシも美羽も、別にトモカが来たからってアンタのこと嫌いとか言わないから」


なんだよ。それ…。


「だから、なに?その、普通に…っていうか、ああもう!めんどくさい!アタシは前回の美羽の件で反省もしたし、後悔もしたの。だから、もう、アタシは逃げない!」


カッコいいじゃねぇか仁井園 真理子…。


「それに、そのために髪も切ったんだし」


「へ…?」


「うるさい、早くきなさい!!」


そう言うとネクタイをそのまま引っ張り連れて行かれる。


「グエッ…ちょっ…くるしっ、死ぬっ」


「うるさいしね!」


言ってることやってることが可笑しいだろ!!ちょっとホント、良い子は真似しないでネ!


そんなこんなでベンチの前へ。


「七五三田…」


神城が俺を見て呟く。


「不審者いたから捕まえた。美羽、110番」


「ちょっと?!」


「あはは、真理子それウケる」


神城さんめっちゃ笑うじゃん。酷くない?そんなことを思いながら、原田の方へ視線を向ける。


「…人からは取り上げたのに、取り上げられるのは嫌なんだ?」


「…ぐっ」


「ちょっとトモカ…」


仁井園が原田を呼んで、その先を言わせないようにする。が、原田的には面白くない…そんなのは分かっている。だから俺は、コイツの言い分しっかりと聞き、受け止めなければならない。


先程まで笑っていた神代が、罰が悪そうに顔を伏せる。


「真理子も、美羽もだけど、腹立たないの?こいつがウチ等のグループ壊したんだよ?」


「でもそれは…」


仁井園が言いたいことは分かる。俺も思うところはあるし、だが原田…コイツには自覚はないのだ。


「あの日からめっちゃ苦労させられたんだけど?ウチ」


「言いたいことは分かる」


ハッピーエンドの裏側ってやつは存在する。異世界で世界を救えば、救われなかったモノたちが出てくる。好きだ嫌いだでラブコメすれば、負けたやつが出てくる。勝者はそんな裏側を見ようともしないし、先へ進もうとする。


エンドロールの後にも、続きは存在するのにだ。



これは、俺が作り出した物語の裏側だ。ならば、俺はその裏側を気にしないで進んでいいのか?


ずっと喉につかえたような感覚があった。


側面だけのハッピーエンドなんていらない。


俺は俺が作ってしまった物語と向き合うべきなのだ。現実逃避はもう十分にやってきた。


だから俺はぼっちなのだ。


さぁ、向き合おう…苦しもうじゃないか、この青春セカイをしっかりと創り上げるために。










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