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第7話 教師も人間なので、利用できるものは利用する。

「はっしゅたぐ死にたい……」


5限目の休み時間、神城は机に伏せながらそんなことを呟く。


「口で言うな口で…」


こんな感じのやり取りをしていると、クラス担任の四月一日先生が廊下を歩いているのを見かける、その顔を見て俺は思い出す。


「あ……」


そう言えば、昼食後に来いと言われていたのを忘れてしまっていた。俺はあわてて先生のところへと向かう。


「先生!」


俺の声に気づき、先生は歩みを止めて振り返った。


「やぁ七五三田、あの一件を利用しての放置プレイとはなかなか攻めてくるじゃないか…でも、先生はそう言うのもキライではないぞ」


「……え?は?放置…?」


「いや、こっちの話だ」


と言って、先生は眼鏡をクイッと人差し指であげた。四月一日先生はたまに訳のわからない事を言ったりする。しかし、188cmと言う高身長に、甘いマスク、更には黒髪メガネのイケメンと言う事もあり、それをどうのこうの言うヤツは少ない、俺から見たら、ピリオドの向こう側にいるようなお人である。この人みてると、リア充じゃなくて、イケメンが滅びれば、俺にもワンチャンあんじゃねぇかな?とか思ってしまう。こんな私はひねくれていると思うだろうか?、俺は思う。しかし、放置プレイとはなんの話だろうか?まぁ、そこはいい。こちらとしても早めに呼ばれた理由を聞いておきたい。


「先生、俺に用事あったんですよね?昼休み忘れてて、すみませんでした」


「ああ、まぁ思い出してくれたのなら、それでいい。話しは別に大したことじゃないんだよ、昼前に伝えた体験授業のプリントを、職員室から持っていってほしかったんだ。ほら、君は日直だし、相方の本仮屋(もとかりや)さんはなんだか忙しいらしくて、すぐにいなくなってしまうんだ」


「あー、そうなんですか」


「ああ、すまないが、後で頼んで良いだろうか?」


「そう言う事ならわかりました。やっときます」


「手間をかけて申し訳ないが、頼むよ」


***


午後の授業が終わり、俺は言われた通りプリントを受け取るために職員室へと向かった。扉の前につくと、コーヒーの香りが鼻先をかすめた。そして扉を開くと、四月一日先生が俺に気づき、手を上げる。


「悪いな七五三田、ありがとう」


「いや、別に良いですよ、こんくらい」


俺がそう言ってプリントを受け取ろうとすると先生が


「……時に七五三田、君に相談があるんだ」


と言う。


「…え…なんですかね?」


俺は内心、何を言われるのかと思いながらそう返した。


「ははは、嫌そうな顔をするなよ、それで…その相談なんだが、君は仁井園さんについてどう思う?」


そんな嫌そうな顔してましたかね?表情に出さないように気を付けよう。しかし、急になんだろうか?ふむ…仁井園……見た目は清楚そうなくせに、中身はゴリゴリのギャルですよね?マジで睨み半端ないし、本当、睨まれたらどっかのポケットのモンスターばりに防御力下がっちゃう。あ、でもあれ 1 しかさがらないんだっけか?じゃあダメだな、仁井園の睨みは防御力1000くらいさげるから。って、もうそれマイナスなんじゃね?……んー、ギャル、睨み、恐怖、鬼…



「仁井園は…"般若的なソレ…"、ですかね…?」


「……え?」


先生は、きょとんとしてから


「……あぁ、すまない七五三田、俺はそう言うことが聞きたいわけではないんだ…」


と言って、くすくすと笑う。


「いや、だって先生が仁井園について聞くから…」


「ははは、すまない、でも君が彼女を恐れているのはよくわかったよ」


それから、詳しく話を聞くと、どうやら四月一日(わたぬき)先生は最近、仁井園が学校内を1人で行動しているのをよく見かけるらしい。つい最近までは、木村や原田、神城が一緒だったのに、気づいたら神城は俺と、木村や原田は他の子と一緒にいるのを多く見かけるようになったと、それでまぁ、喧嘩かな?くらいに思っていたら、思いの外誰とも話さない仁井園が目につくようになったらしい。


「それで、なんでそれを俺に言うんですか?」


「ああ、まぁそれは…俺にもちょっと考えがあってな、それに…七五三田は個人的に相談しやすいからな」


と言って先生は白い歯を見せる。なんだこのイケメン。


「……なんすかそれ…それに、いち生徒にそんな話して…俺がもし、仁井園ハブられてるらしいよ、とか他のヤツに言ったらどうするんですかね…?」


俺がそう言うと、先生は


「ははは、先生も人間だからな、相談くらいするさ、まぁちゃんと相手は選んで、だけどな」


と言ったあとに、


「それに、もし七五三田がそんな事をするような子なら、俺はちゃんと責任をとるつもりだよ。あとはそうだな…そうなる前に大人の魔法を使う…とかね」


と先生はまたニコりと笑い、眼鏡を人差し指であげ、その瞬間に先生の眼鏡がキラリと光る。俺はそれを見て、左頬に汗がつたった。なにそれこわっ!…っつーか、大人の魔法ってなんだよ、まさか内申書とか個人評価とかその辺の事言ってんのか?だとしたら職権乱用じゃねぇか!なんなの?!大人の魔法怖すぎるよっ!


「えっと…まぁ、言いませんけどね、そもそも言うような相手もいませんしね」


俺が先生から目をそらし、そう言うと、先生は「ははは」と軽く笑って


「七五三田、友人と言うのは作ろうとして作っても仕方ないんだよ、もちろん、そう言った努力は無駄ではないし大切だが、長く続くとはかぎらない、実際、俺も学校の友人で、今でも連絡を取っているのなんて一人か二人くらいだ。なんならそのあとに出来た友人の方が今でも連絡を取り合うことが多い…だから、焦らなくてもいいんだよ、世界は広い、今目の前にあるだけの世界にこだわる必要なんてないと俺は思っている。それに、俺はまだ短い間しか君達をみていないが、その中でも七五三田、君は優しい子だと思う。だからきっと、君の魅力に気づく人間がいつかは現れると俺は確信をもってるよ」



「……はぁ…」



「ははは、ちょっとまだ難しかったかもしれないな…あと、もしも君に学校で話す相手がいないようなら、その時は俺と友達になってくれ、自慢じゃないが、俺も友達は少ないんだ」


と言って微笑んだ。……本当、仁井園の件もそうだが、忙しい業務の中いろんな事をよく見ている人だなぁ…と、素直に感心する。きっと、他の先生だったら「そのうち出来るよ」とか言って終わったり、「○○がいるじゃないか」とか、未来に期待を持たせる無責任な発言や、ちょっと喋ってる相手の名前を出したりすることで、今現在問われている問題を先送りにし、良いこと言った。みたいな顔をするのだろう。(偏見)


別にそれが間違いだと言うことではないが、人によってはその言葉に疑問を抱いちゃう生徒もいるので、世の先生方は気を付けてくださいね、ソースは俺です。なんて事を考えていると、先生は話を続ける。


「まぁ、でも最近は神城さんと一緒にいるのをよく見るけどな……」


そう言って、先生は俺の顔を見て何かを考えているような表情をする。


「な、なんですか…?」


「いや、まぁいい。なんにせよ、今は沢山悩んだり怖がったりしなさい。きっと、それがこれから君達の大切なモノになっていくからな…あ、あとプリントはコレだから、悪いけど頼むよ…」


「え?あ、はい」


……あれ?仁井園の件は?もういいんだろうか?俺はプリントを受け取り、先生から何処に置けばいいのかを聞くと、職員室から退室した。


(なんだったんだろうか? 先生は俺に仁井園の話を聞かせてどうしたかったんだ?……にしても、"友達"…か。)


そう言われれば、神城はそうなるのだろうか?いや…どうだろう…?よく分からない…



―――『悠莉、一緒に遊ぼう!』



「友達…ね…」


まぁ、考えても仕方ないので、俺はとりあえずプリントを抱えて教室に戻った。



次回『第8話 個と個が集まれば、そこにどんな感情があろうと群れとなる。』


5月22日(火)更新予定です❗(。・ω・。)きゅぴーん✨

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