第76話 信頼度と好感度は=ではなく、≒でもなく、別物。
二人のイメチェンに、少々…と言うか、かなり度肝を抜かれる。正直、今までならば、(へぇ…髪切ったんだなぁ)くらいだったのが、関わりが深くなった事で、なんだったらちょっと動揺するレベルで心を揺さぶられている…。
そんな俺を知り目に、仁井園は神城と俺に「おはよ」とだけ言って着席した。
「……な、なぁ…神城…仁井園だけど…」
声をかけながら神城を見る。
「あばばばば」
(((;ꏿ_ꏿ;)))
いや、どんな表情。てか、俺以上に動揺してらっしゃる!
まぁそりゃそうか…つか、なんであんな髪切ったんだアイツ…。
***
―――休み時間、俺は神城に聞く。
「なぁ、仁井園なんであんなバッサリと髪切ったんだと思う?」
「う〜ん…なんだろう…?」
「おぅけぃ。ならば質問の仕方を変えよう…おまえなら、どんな時にあんな思い切った事をする?」
「私、あんまり髪型変えたことないからわかんないけど…なんか…こう、思い切りたい時…とか?」
「……なんだそれ…」
「え…わかんない」
「わかんねぇのかよ」
しばし沈黙のあと、二人で最近仁井園がまた仲良くなった原田と談笑している姿を眺める。
「…最近、二人仲いいよね…」
神城がそんなことをポツリと呟いた。
「ん? まぁ…そうな」
「……」
神城は、無言でまた二人を見ている。まぁでも、あれからしばらくたつが、やはり元のグループのメンバーと仲良く話されたら、神城的には不安なのかもしれない…。だが、なんだろう…?
今の仁井園なら、たぶん、きっと…神城にもちゃんと配慮をしてくれるような気がしなくもない。
だから俺はあえて言う。
「大丈夫だろ」
俺の一言で、神城は察したように
「うん、そだね…」
と、一言返した。
***
昼休み、いつものメンツで中庭の時計台近くのベンチへ。
すると、久しく見ていかなかった成功者(笑)の二人が時計台のところで久しぶりに「あ〜ん」とかしている。ヤバいマジ超久しぶりに見た。だが何度見ても思ってしまう。
滅びろ…ッ!
そんなことを考えながら着席し、ビニール袋を漁っていると、
「ちょっ、もーウチも入れてよー、真理子も美羽も酷くなーい?」
そう言って、原田がやって来る。
てか、コイツなんで当たり前のように現れてんだ…?ふむ。ぼちぼち仁井園に髪を切った理由とか聞いていいんだろうか?いや、てかマジなんで来たのこの人。
そして仁井園は普通に、神城は少しだけ困った様にと、さまざまな対応をする。
それから、俺は立ち上がり、「流石に4人は狭いだろ…」と言って場所を譲る。
すると、原田は当たり前のようにそこに腰掛け、俺の方をチラリと見る。
「…?」
しかし、別に何でもないのか「七五三田サンキュー」と言って弁当を広げ始めた。
にしても、どうしたもんか…。原田に席を譲った為、俺はいる場所がない…。そんなことを考えていると、神城が自分の膝をパンパンと叩いて、「座る?」とか聞いてくる。
「いや…それは流石に駄目だろ」
正直この神城の冗談に救われた。なんとい言うか、どうしたらいいかわからなかったし、なんとなく…自分は遠慮したほうが良いような気もしたが、言い出すきっかけがなかった。しかし、神城が冗談を言ってくれた事で、切り出しやすくなる。
「ま…たまには3人で食べるのもいいんじゃないか…?」
「え…?」
神城が何か言おうとしたが、原田がそれをさえぎるように
「だよねー! 七五三田だいぶ空気読めるようになったじゃん」
「…まぁな、じゃ…」
俺はそう言って教室へ戻る。別に、なんてことはない。ただ、昼食を別のとこで一人で食べるだけ……。
なのに、何故だ…?気にしすぎだとも思うが…
"疎外感"が心をざわつかせる…。
***
【仁井園 真理子】
数日前…買い物に出ていたあたしは、どこかで財布を落としてしまい、歩いた道をたどり探していた。
そこに、たまたまともかが通りかかったらしく、声をかけてきた。避ける理由もないし、普通に話をする。
そして財布を落としたことを伝えると、一緒に探してくれ、最終的にはデパートのサービスカウンターで受け取ることができた。ただ、その探してるときに、ともかがとある話をしてきた。
それは…美羽と七五三田が"あたしの悪口を言っていた"と言った内容で…正直、心当たりはなくはないし、あの二人は仲がいいし…でも、俄に信じ難く、あの二人が…?と言うのもあった。
ただ、ともかもあたしは別に嫌いではない。正直、グループはほぼほぼ自然消滅みたいになっていたし、あたしの方が荒れていて、ともかや結子が離れた形だ…。だから逆に話しかけてくれるのが嬉しくもあった。
そして、その財布の一件以来、ともかとも結構話しをするようにってきた。ただ…ともかはあまり美羽と七五三田の事は好きではないらしく…二人の嫌なところ等をよく話す。
正直、後ろめたさから話を聞いていたが、二人の事を悪く言われるのは、少し…いや、だいぶ気に入らない。
そんなある日…二人で買い物をしていると七五三田に会った。相変わらず、分かりやすい容姿だ。
その時、七五三田とあって話をするだけなのに、なんか…七五三田に申し訳ないような…複雑な気持ちになった。
ともかはさっきまで二人の事を言っていたのに、普通に絡むし…。
正直、そういうところは素直にすごいと思う。あたしにはきっと真似できない。
それから話を終えたあと、ともかはあたしにこう話した。
『七五三田ってさ、絶対ウチ等のグループ壊した自覚ないよね、真理子もそう思うでしょ?』
―――『まじムカつく』
その言葉を聞いたあたしは、うまく返事ができず、柄にもなく愛想笑いで…その場を流した……。




